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短編1
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風呂に関する短い話 八

小さなアパートの管理人、和雄さんの話。

いくつかある部屋のうち、ある一室のみ住人が半年と居着いてくれない。

はっきりとした理由は不明だが、共通点はある。

必ず退去時に《風呂場の鏡が使えない状態》にされているのだという。

ガムテープでびっしりと目張りする者や、ペンキで塗りたくってしまう者、中には勝手に取り外したり、破壊してしまう者もいたそうだ。

何度かそのようなことがあってからは、破壊をまぬがれても、念のために住人が変わるたび新しいものに交換するようにした。

しかしその費用がバカにならず一度だけ、鏡を設置せずに貸したことがある。

十日で退去したその住人は、水道の蛇口やシャワーヘッドの金属部など、あらゆる鏡面をヤスリのようなものでぼろぼろに磨いて破損させていった。

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明らかな瑕疵であれば次の住人へ説明義務が生じるのだが、自己調査では判らない。退去した住人へ理由を聞き出そうとすると十中八九、音信不通になってしまう。 

知り合いに勧められ、何度かいわゆるお祓いも試したが、改善はされない。

しばらくその部屋だけ入居者募集を行っていなかったのだが、とたんに天災や偶然が重なり、アパートの管理費用がかさみ始めた。

春からは、物件の入居希望者が増える。

もう一度貸出しを始めるべきかどうか、悩んでいるという。

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