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目覚めると、私の手の平に赤ん坊がいた。
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一人や二人ではない。
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無数の子供達がいた。
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手の平から落ちても、私の身体に寄り添い、小さく、幼い子供達が私を見上げ微笑んでいる。
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愛しさで胸が締め付けられる。
私は寝る間も惜しみ、食事さえ摂る事も忘れ、子供達にせっせと乳を与え続けた。
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夫は私が妊娠をすると、どこかへ消えた。
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元々愛していた訳ではない。
頼りにしていた訳でもない。
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夫も、ただ・・・自分の遺伝子さえ残す事さえ出来れば良かったのだろう。
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子供はスクスクと育って行った。
沢山の子供達を一人で育てるのは大変だが、どの子供も可愛く、私にとって子育ては苦ではなかった。
子供達の身体も、生まれた頃に比べ一回り大きくなって来た様だった。
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私は子供達を見詰め、微笑むとゆっくりと体の力を抜いた。
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子供達が私の身体に喰らい付く。
痛みよりも愛しさが込み上げて来る。
さあ・・・子供達・・・
私の身体を食べ、大きく、強く育ちなさい・・・
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ゆっくりと私の意識は薄れ行く・・・・・・・・
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そうだった・・・・・・・・
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子供達の父親は、私が食べ尽くしたのだった・・・
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私は蜘蛛。
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・・・
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自らの身体を次の世代へと繋いで行く・・・・・・・
作者鏡水花
初投稿は、2014~2015年。
砂漠に住む蜘蛛の一種。
メスは、卵を産むとその卵が孵化するまで片時も離れず、子蜘蛛が孵ると自分の内臓を溶かし、それを子供たちに与え、子蜘蛛が成長する頃には、骨格だけを残し、死んでしまう。
自分の命と引き換えに、正に命懸けの子育て。
究極の母性。
この話しを見聞きした私は、ちょっとした衝撃を受け、この話しを書きました。
遺伝子を遺す為、餌の少ない砂漠だからこそ、効率よく受け継がれた子育てなのかもしれませんが…。
ただ、同じ母親と言う立場から…
母親には、少なからずこの様な想いを抱え、我が子を愛し、育てていると…。
そう信じたいです。
皆さんは、どうお感じになられますか?
この度もお読み下さった全ての方へ…
ありがとうございました(*´∀`*)♬
by.kyosuika