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私の実家には猫が2匹います。
1匹は黒い猫で、くろ君と言います。6キロと太めでポケっとしてる男の子です。もう1匹は三毛猫で、こはっちゃんと言います。スラッとした美人でとても賢い女の子です。
今回はこはっちゃんの話をします。
こはっちゃん、彼女は賢いというレベルではありませんでした。こはっちゃんが家に来て間も無い頃、家族でチーズケーキを食べていると初見のはずなのに「それ知ってる」とチーズケーキをおねだりしてきました。そして「嗚呼美味い、この味だ」と食べ始めたのです。他にも桜餅、パン、こしあん、クリーム、えびせんべい、紅茶に至るまで「知ってる、この味よね」と言っていました。
更にトイレトレーニングも爪研ぎも既に知っていた様に場所を教える以前にキチンと済ませ、ご飯もカリカリを出すと「缶詰めがあるでしょうが!お馬鹿さん!」と文句を言われました。
こはっちゃんは猫なのに虫が大嫌いでした。
とても綺麗好きで、グルーミングに2分以上費やすし、床に落ちた水滴さえも気になり私を呼びつけ「早く拭いてちょうだい」と言う子猫でした。
友達に話すと「偶然でしょ」と笑われます。が、
…………家に来てまだ数日の1.5ヶ月の子猫がここまで大人な振る舞いが出来るでしょうか?
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ある日、私と母でリビングでゆっくりしていると、こはっちゃんが居なくなったので私が探していましたが一向に見つかりません。数分後ぐらいでしょうか?シャカシャカシャカシャカ!と伸びきった爪で床を走る音が聞こえました。振り返るとどこかの隙間からこはっちゃんが慌てた様子で飛び出してきて、後ろ足が血まみれでした。私たちがこはっちゃんを押さえて足を確認すると、人間でいう親指の場所の爪が1本丸ごと無くなっていました。
青ざめながら動物病院に行き、その時は「まぁ勝手に生えてきます。気を付けてね」と言われ、事なきを得ました。帰ってから母とこはっちゃんが出てきた隙間に爪が落ちてないか隈無く確認しましたが爪は出てきませんでした。「なんでだろう」と2人で話していると見計らった様に母のスマートフォンが鳴ります。
shake
祖母からの電話で、「転んで足の指の爪が剥がれちゃった」というものでした。なんでも風呂場で転んで頭を打って、足の指の爪が剥がれただけだけど母は怪我とかにうるさいから……と。電話越しにケラケラと笑う祖母に私は1つ、質問をしました。
「剥がれたの、どの足の指の爪だった?」と。
すると祖母は答えました。
「親指の爪よ。痛かったんだから」
後ろを見ると、こはっちゃんがこちらをじっと見て
いました。「痛かったんだから。」とでも言いたかったのでしょうか?
ウチの猫は親指の爪と引き換えにあの爪を失くしたであろう隙間からどこかへ行き、誰かに頼んだのでしょうか。とにかく、彼女は頭を打って即死の可能性もあった祖母の命を爪1本の等価交換で救ったようです。
作者松
ウチの賢い猫こはっちゃんは、祖母の家に行きたがる程祖母が大好きでした。
大好きな人の命が猫にとっての命である爪1本で救われるならまあいいや、という判断が下せる程の賢さに驚いた出来事です。
ちなみにこはっちゃんがケーキを知っていた事についてこはっちゃん本人に質問してみた所「教わったのよ。誰かは言わなくてもわかるでしょ?脳みそかっぽじって記憶を辿りなさい」と言われ考えてみると、
祖母の家にこはっちゃんと好物がそっくりな、とても賢い女の子の猫が2匹住んでいた(もう死んでいますが)のを思い出しました。