中学生の頃の話。
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ある夏の日、俺は友人M(男)とS(女)の3人で神社で遊んでいた。
手入れもされなくなった古びた神社で、俺達の溜まり場になっていた。
昼過ぎ、暑くなってきて神社の鳥居の前の大木の下で3人で話していた。
そんな時、俺はあることに気が付いた。
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神社の隣は廃墟なのだが、その廃墟がふと目に入った。
2階の窓にスズメがいる。
それも建物の内側に。
黒いボロボロのカーテンと窓の間を1羽のスズメが翼を羽ばたかせて飛んでいる。
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俺「なあ、あそこにスズメいるよ」
S「どこどこ?.....あ!ホントだ!」
M「ホントだ。....あれ?確かあの部屋って......」
俺「あー!そっか、あそこ鳥部屋か」
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鳥部屋というのは、その廃墟の2階の正面にある部屋のことだ。
その廃墟は実は裏口の鍵が壊れており、中に入ることが出来る。
溜まり場になっている神社の隣ということもあって、肝試しと称して何度か入ったことがある。
1番初めに入った時からその部屋を鳥部屋と呼ぶようになった。
何故鳥部屋かというと、その部屋.......
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shake
床一面に大量の鳥の死骸が落ちているのだ。
大量の羽根が床に散っている。
死んだばかりのような死骸や骨だけになったもの、腐りかけのものまである。
ハト、ヒヨドリ、カラス、スズメ、ムクドリと種類も多数。
腐敗臭も酷かった。
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この建物内で鳥の死骸があるのは何故かその部屋だけ。
他には死骸どころか羽根1枚落ちているのを見たことがない。
そんな異常な部屋に今まさにスズメがいるのだ。
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俺「また入ったってこと?ヤバww」
S「え?あの、鳥がいっぱい死んでたって言ってた部屋?あそこなの?」
俺「そうそう。どっかに隙間でもあんのか?」
M「カラスの羽根もあったから結構大きい隙間だろうな」
俺「入ったら出られず死んでいくとか罠だな」
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S「えー、スズメ可哀想じゃん!助けてあげよ?」
俺「は?マジで?あの部屋入りたくないんだけど」
M「まあ、窓開けてあげるだけでもいいんじゃない?」
俺「仕方ない、皆で行くか」
S「え?私は行きたくないから。」
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俺「ふざけんなよww言い出しっぺだろ」
S「だって死骸いっぱいあるんでしょ?臭そうだし......。外で見てるから行ってきて!」
行く行かないの押し問答の末、結局Sは外で待つことなった。
俺とMでスズメの救出に向かう。
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裏口から廃墟へ入る。
神社の隣の為、周りの木が日光を遮り昼間でも薄暗い。
階段を登り終えるとすぐ右側に鳥部屋の入口がある。
鼻をつまみながら扉を開けた。
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相変わらず部屋中に鳥の死骸や羽根が散らばっている。
夏場なのでさぞ臭いだろうと思ったが、以前入った時より匂いは気にならなかった。
問題のスズメを探す。
しかし、
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どこにもいない。
カーテンの裏や物陰を探してもどこにもいない。
俺「いないな。逃げた?」
M「どっから?」
俺「知らんけど、運良く入ってきた所から出れたんじゃね?」
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俺とMはそそくさと廃墟を出てSの所へ戻ってスズメがいなかったことを伝えた。
行く必要なかったな、なんて文句を言っているとSが言った。
S「え?スズメいんじゃん!」
2階の鳥部屋の窓へと目をやる俺とM。
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スズメがいた。
さっきと同じようにカーテンと窓の間で翼をバタつかせている。
俺「なんだし、どこ隠れてやがった」
また文句を言いつつ俺とMは再び鳥部屋へと向かった。
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shake
またいない。
今度はさっきよりも念入りに探したが、スズメどころか出入り出来そうな隙間や隠れられそうな場所すらなかった。
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窓の外を見るとSがこちらを見上げていた。
中から窓を開けようとしたが、鍵がない。
どうやらはめ殺しの窓のようだった。
内側から腕で罰を作り、「い・な・い」とわざとらしく大きく口を開け伝える。
Sはなにやら呆れた顔をこちらに向けた。
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その後もMと2人でスズメの捜索を行ったがみつけられなかった。
外に出てまた窓の下まで戻る。
Sが言うには、俺達2人が建物に入ってしばらくは飛んでいたそうだ。
スズメが出ていった所は見なかったか?などと話しているうちにどんどん脱線していって、しばらくすると全然関係のない話になった。
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話が脱線し数十分たった頃、またSが、
S「あ!ほらスズメ!」
見るとまたさっきまでと同じようにスズメがいる。
同じ轍は踏まない。
俺達は作戦を立てた。
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その作戦とは、Sが外でスズメを見張り、俺とLINE通話を繋げる。
俺とMは階段でスタンバり、Sからスズメがいると連絡を受けてからダッシュで鳥部屋に突入するというものだ。
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とりあえず俺とMは作戦通り階段へ。
すると階段に着いた時点でSから
S「今窓のとこいるよ!」と連絡が。
そのまま鳥部屋へと突入した。
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....
........
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shake
いない
そんなわけない
だって、ほんの数秒前まで、そこに.........
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これ以上探す気にはならなかった。
外に出てSに説明したが信じられないようだった。
そりゃそうだ。
直前までスズメを見ていたのはSだ。
「今窓のところにいるよ!」
この言葉を疑う気もなかった。
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あの部屋は何故あんな惨状なのか。
あのスズメは一体なんだったのか。
もしまだあの部屋に囚われているなら、
それはあまりにも.........
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作者たたまる
中学生の時に体験した少し不思議な話。
因みにこの廃墟では他にも不思議な体験をしているのですが、
それはまた別のお話で。