【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編5
  • 表示切替
  • 使い方

入眠時幻覚

恐怖体験、とまではいかないかもしれませんが、私が実際に体験した不思議な出来事をお話しします。

ある日の休日の朝か昼か、私は目を覚ましました。休みの日は寝られるだけ寝るタイプなので、カーテンを設置していない部屋は眩しいほどに明るかったのですが、良い夢を見ていた気がするし気にせずにもう一眠りしようと目を閉じたその時でした。

nextpage

ハンビラキー…

ハンビラキー…

お経の様なリズム感で、野太い男性の声が自分の寝ているベッドのすぐ左後ろあたりのスペースから聞こえてきたのです。私の知っている単語で当てはめられそうなのが「ハンビラキ」だっただけで、実際にそう言っていたかはわかりません。とにかくそんな様な単語です。

子供の頃から数回こういった不思議な体験をしたことはありましたが、社会に出てからは全くだったので、大人になると見えなくなるっていうし良かったなーと思っていたのに。ただ、何度かこういった経験をしてきた私ですが、幸い怖いだけで危険な目にあうことは一度もなかったんです。所謂首を絞められたり追いかけられたりとかですね。それもあってか、もちろん声が聞こえた瞬間心臓がグッと恐怖で痛みましたが、一呼吸置いて冷静に

(あ、久々だな…まあ、夢かもしれないし、夢じゃなくてもどうしようもないからもう一度寝よう)

と目を閉じたんです。自分でもホラー好きの癖に随分なリアクションだなと思うのですが、現実として受け入れてリアクションしてしまう方が怖かったし、真昼間の明るい部屋だった事もその現象を否定するのを手伝ったのかもしれません。

真昼間やぞ、と。

その間も延々と同じフレーズを男の声で聞かされ続けていますが、前向きに休日の睡眠をとろう、と気を取り直して先ほどまで見ていた夢に戻ろうとしたその時でした。

shake

ドスっ

私は驚きで再び目を開けてしまいました。ベッドの上、私の腰の近くに何かが確実に乗りました。

nextpage

ハンビラキー…

ハンビラキー…

最早夢だ幻だ、と誤魔化せないのは、その何かが乗ったことでマットレスを重ねてふかふかにしている私のベッドが揺れたからです。ここに来て私はようやくパニックですが、触れられる距離に何かがいる恐怖にもう動けませんでした。

shake

ドスっ

shake

ドスっ

その何かは、寝ている私にはふれないギリギリのところを歩いている?様で、腰あたりから始まって、肩、頭の左、頭の上、頭の右、一歩一歩私の周りをかたどるようにドスドスとベッドを揺らし移動していきます。頭の横に来た時に枕が沈み、どうしよう夢じゃない、と体を固くしながらも目は閉じられません。

金縛り状態なのか、恐怖で動けないのかわかりませんが、まぶたが降りないのです。目を開けていても、真昼間の明るい自室が見えるだけでベッドを歩く人など見えないのですが、その何かの振動が右の肩の側をすぎ、次の一歩は腰あたりに来る、というタイミングで

(これ以上は多分見えてしまう)

と何故か直感的に思い、渾身の力を振り絞って叫びました。

shake

「やめろおおおおおおおお!!!」

その瞬間、続いていたお経のような声もピタッと止み、体も動かせるようになりました。お経のような声が聞こえていた方をばっと振り返ってみましたが、もちろんそこには何もおらず。しばらく心臓は早鐘を打っていましたが、20代女性として咄嗟に出る声が「やめろー」だった事が思いの外ツボに入ってしまい、一人でしばらく笑っていました。

nextpage

それからおよそ1年ほどの間、数ヶ月に一度程のペースでこの体験は続きました。お経の様な声は最初の一度以降ありませんでしたが、場所は自室だったり、出張先だったり、恋人の家だったり。シチュエーションを問わず寝ている私の周りを何かがドスっドスっとかたどって、私が大声をだして消える。というのを繰り返していました。

この現象声を出せば消えてしまうので後半はもう恐怖もほとんど感じていませんでしたし、医学的な方向で自分のこの症状を調べてみたところ【入眠時幻覚】というものに辿り着いたんです。

なんでも半分夢の中にいて、幻視や体感幻覚がおきてしまうというもので、たとえば叩かれたり首を絞められたりという感覚が夢なのに現実のように痛い苦しいと感じてしまうみたいです。世の中の殆どの寝起きの霊体験て、これなのかなあと思ってしまいますね。

ただ不思議なのが、出張先で同じ体験をした時の事です。和室に4人で宿泊という修学旅行のような部屋割りでした。一度は眠りについたのですが、急に はっと目が覚めて私の左耳のあたり、枕の上にトス、といつもの調子で ソレ は始まりました。その時は周りで寝ている子たちがいたので流石にいつものように大声が出せなくて。

(さすがに今日は叫べないぞ…まあほっといてみよう。多分おさまるだろう)

と、いつもより控えめに私の頭の周りをトストスと指か何かで押している ソレ を無視したんです。もし何事か起きても、寝息が聞こえるレベルで近くに人がいるのも心強かったんだと思います。無視しているうちに ソレ は、私の頭の周りを型取りトストスし終えました。

(ようやく終わった…)

翌日も早かったので一刻も早く寝たかった私が、そのまま意識を眠りに落とそうとしたその時です。

shake

ズザザっ

「うわっ!!」

突然のことで一瞬何が起きたのかわかりませんでした。急に頭がストンと布団に落ちてしまって、さっきまで頭の下に引いていた枕がありません。結局声を上げてしまい動くようになった体で起き上がり、スマホの明かりで周囲を照らしてみました。枕は少し離れた襖に立てかかるように置いてありました。

nextpage

それからしばらくこの現象は起きていませんが、次にこの現象が起きた時私はどう向き合えば良いのでしょう。私の脳は幻覚を引き起こすことは出来ても、枕を動かすことは出来ないんじゃないかなあ、となんとなく思ってはいるのですが、今は考えないようにしておこうと思います。

Concrete
コメント怖い
4
3
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

@天津堂 様 コメントありがとうございます。他人から見た状態!私の場合その状態を目撃された事がないので、とても興味深いです!実際に自分でも見て見たいものですよね。

返信
表示
ネタバレ注意
返信

@カイト 様
コメントありがとうございます。励みになります。
初めて経験を文字に起こしてみて、文章にして恐怖を伝える難しさを痛感していたので少しでもゾワっとして頂けて良かったです。

返信
表示
ネタバレ注意
返信