主人の仕事の関係で東北にいた頃に知り合った友人の話。
ドライブで紅葉の見事な渓谷に行った帰り道。
行きは海沿いの道を走ったが、帰りは山道を選んだそうだ。私はその渓谷には何度か行った事はあるが、通るのはいつも海沿いの道で、山道は使ったことがなかった。
私たちの住む町は有名な霊山の麓にあったのだが、その山道は霊山へと続いていた。
出発して間もなく、当時 幼稚園年少だった娘さんの様子がおかしくなっていった。
歯を食いしばり硬い表情で、下を向いたまま何を聞いても一言も喋らなかった。
そして家につくなり、お絵かきノートに何か描き始めた。話しかけても応えようとせず、一心不乱に絵を描き続けた。
しばらくして描き終えたのか、ノートを母親である友人に渡した。
「さっき、こんなのがいた」
そう話すと娘はそのまま眠ってしまった。
渡されたノートを見て、友人は絶句した。
そこに描かれていたのは数体の鬼だった。
その霊山には確か総門の両脇に鬼が立っていたと記憶している。他にも亡者の衣を剥ぎ取り生前の罪の重さを推量する鬼(鬼と言っていいのか不明ですが)がいる。
娘さんはその鬼を見たのか…? それとも昔いたと言われる踊り鬼を見たのか…?
或いは魑魅魍魎の類だったのか…
娘さんの描いた鬼は園児が描くようなものではなく、まさに鬼。眼は鋭く眼光を放ち、睨みつけてくるその様は鬼気迫るものだったそうだ。
作者國丸
この鬼を描いた娘さんには霊感があったようで、色々みえてたみたいです。
それにしても車に乗っているとは言え、そんなモノが視えてしまうなんて、さぞや恐ろしかったことでしょう。