私の母方の祖母は霊が視える人だった。
私が小学生だった頃の話。
祖母が入院した。どこが悪かったのかは知らないけれど、原因不明の病気ときいた。
入院中、祖母が私の母や叔父たち(祖母にとっては自分の子供たち)に言った。
「目を閉じると、目の前(眼裏)に山伏の姿をした人がでてきて、殺してやる!って怖い顔して言うんじゃあ」
心配した母たちはお寺の住職に相談した。
しばらく考えた後、住職は自宅の近くに無縁仏があるはずだから、探して供養しなさい。
と言ったらしい。
探すまでもなく、それは藁葺き屋根のお家と竹林に挟まれ、目立たない処にぽつんと在った。
その無縁仏がいつから何故そこに在るのか知る者はなく、だが言われた通り供養をした。
separator
最後に見た山伏の姿を、祖母はこんな風に話した。
「山伏がお花畑で綺麗な女の人たちと楽しそうに笑うて踊っとった」
その後、祖母の病気はよくなり無事退院した。
母からこの話を聞いたのは祖母が退院してしばらくしてからだった。
実はこの無縁仏を私は知っていた。というか、多分 母も祖父母も叔父 叔母も 皆知っていたと思う。ただ、自分たちの身内でもないそれが、何故敷地内にあるのか、どういう経緯でそこにあるのかわからず、放ったらかしにしていたのだろうと推測する。
私は母からこの話を聞いた時、幼かった自分が物凄くびびったのを憶えている。
それは
何度かその無縁仏で遊んだことがあったから…
遊んでいたといっても、別に罰当たりなことをしていたわけではない。
汚れていた仏さまに水をかけ花を摘んで飾り、泥だんごをお供えしただけだ。
でも今まで何事もなくきてたのが急に怒り出すなんて、何かいけない事をしたのではないか…?
そして自分の所にも怒った山伏がきたらどうしようかと考えてしまい、とても恐ろしかった。
それから長い年月が過ぎたけれど、今のところ私のところに山伏が現れる気配はない。
きっと成仏してる。
そう信じてる。
作者國丸
これはブログに載せてる私の祖母の話。実話です。