自分は外回りの仕事で毎日のように車に乗って客先訪問してるんですが、2年前の夏頃にちょっと仕事でハマって帰るのが遅くなったときがありました。
しかもその現場は千葉の房総半島辺りで、家に帰るには途中山の中をひたすら走らないといけないのと、遅くまで仕事して疲れてたから憂鬱な気分でひたすら運転してました。
途中甘いものでも食べてリフレッシュしようかとナビ見ながらコンビニ探してたんですが、近くに全然コンビニなんてなさそうだったから普段通らない山の方に行っちゃったんです。
しばらく走ってたけどどんどん道が細くなるし、あーこれ完全に選択ミスったわと思いましたが、性格的にUターンってあんまり好きじゃないんでとりあえず走ってれば何かしら大きい道とかに出るだろうと思ってたんです。
でもいよいよ雑草とかすごくなってきたし、流石にこの先は何もないだろうと思ってUターンする事に決めました。
ところが細い一本道なもんだからUターンしようにもそう簡単にいかなくって、比較的道が太くなってるところを見つけてそこでUターンしようとシフトレバーをバックに入れました。
バックに入れるとナビの画面が自動的にバックモニターに切り替わり、しかも赤外線カメラだから白黒の背面映像が映ります。
木とかにぶつからないように画面注視しながゆっくりとギリギリまで下がってはハンドル切り返し、またギリギリまで下がってはハンドル切るってのを3回くらいやって、あと一回切り返せばいけそうかなって状態になってまた画面を注視してゆっくりゆっくり雑草にぶつからないようにギリギリまで下がってたらいきなり知らないおっさんが画面の横からヒョコッと映り込んできたんです。
うおっ！っと思わず声が出て心臓止まるかと思ったけど、おっさんは白黒画面の中でカメラを覗き込むような感じで斜めに映ってて全然動かない。
今でも顔は忘れないけど、50手前くらいの七三分けでちょっと細面のほんとに普通のおっさん。口はへの字口で、目は焦点が合ってないような感じなため顔はカメラの方を向いてるけどどこを見てるのかが分からない。
しばらく緊張し過ぎて体動かせなかったけど、目だけ動かしてルームミラーとサイドミラーを確認したが雑草と木しか見えなかったです。
最初は、たまたま山道にいたおっさんが興味本位だか脅かすつもりで映り込んで来たのかと思ったけど、あまりに動きに変化がないし瞬きもしないからこれはちょっとヤバイんじゃないかと心臓バクバクさせながらただモニター見てるしか出来ませんでした。
そんな膠着状態が1,2分位続いたあと、そのおっさんがゆっくり画面の外にスライドしていって画面から居なくなった。
すぐミラー越しに後ろを見たけど人影は無いし何かが動くような音もしない。あれだけ雑草があればどんなにゆっくり動いてもガサガサと音がしそうなもんだし、そもそも人が入れるようなスペースが車の後ろにあるようには見えなかった。意を決して後ろ振り向いて車内から外を見たけどやはり何もいない。
流石に怖くて車降りてまで探す気にはならなかったからとにかく急いでUターンして帰ろうとハンドル握って進もうとしたら、運転席側ドアの窓の下の方にちょっと頭が見えるんです。多分さっきのおっさんがドアのすぐ前にいるっぽい。ドアがなかったら20センチくらいの距離。
全身鳥肌立ってもうパニック状態になったからハンドルマックスで左に切って急いでアクセル踏んだらギリギリUターンできました。
今考えたらほんとにあんな側に人がいたら外輪差とかで巻き込んじゃったりしそうだから普通アクセル踏めないけど、その時はとにかく逃げたい一心でそれどころじゃなかったです。
道も細くて暗いし、そもそも後ろを見る気にならないからひたすら前だけ見てとにかく無心で走ってなんとか大きな道まで戻って来れました。
その後は特に変わったこととかは無いし、今でもたまにその山道のそばを通るから行こうと思えば確認しに行けるけど、もう一度行こうとは全く思いません。
あのどこにでもいそうなおっさんは一体何者だったのか未だに謎ですが、今でも夜の白黒になったバックモニターを見るとあのおっさんが覗き込むんじゃないかと緊張します。
作者3LDK