小学生時分。友人達と放課後に学校でかくれんぼをして遊んでいた時に不思議なことが起こった。
私と一緒に隠れる場所を探していた友人が「おれここに隠れる!」と3階の教室にある掃除用具入れに隠れた。私はこの時、確かに彼がそこに入るのを見届けた。
それからオニは用具入れに隠れた友人以外の全員を見つけたが、一向に彼だけを見つけられずにいた。
「あいつどこやねん」
「3階の教室のホウキとか入れるとこに隠れとるよ」
「は?そこ見たけどおらんかったぞ?」
「いやそんなことないって。3組の隣の無人の教室、あっこやて」
「ちゃんと確認した」
「じゃぁ、もっぺん行こうや」
絶対いなかった、と主張を曲げない友人の手を引いてみんなで教室へ向かう。教室に着いて用具入れを開けるとそこに彼はいなかった。
「な?おらんやろ?」
それからみんなで彼を探していると「おい!おったぞ!」と正門の方から声がした。皆がそこへ向かうと用具入れに隠れた友人が泥だらけになって正門でべそをかいていた。
「どうした!?」
「わからん。いきなり落ちて、気がついたら田んぼにおった」
「田んぼ?落ちたってなによ?」
「知らん。知らんけど落ちたんや」
私達は再度あの用具入れを見に行った。開いて中を確認するがそれは普通の掃除用具入れであった。すると1人が、「あっ」と何かに気がついた。
「どした?」
「これ…」
「…嘘やろ」
用具入れの底の部分には大きくはっきりと赤い字で「穴」と書かれていた。
作者一日一日一ヨ羊羽子
文字ではないですが、とある女性歌手が口の横にホクロを書いてたら本当にその箇所にホクロが出来てしまったと聞いた事があります。
それとまた文字ではないですが、病気で寝たきりの息子の生命線が薄い事に気がついた母親が、刃物で掌を切って無理矢理生命線を書いたところ、それまでが嘘の様に元気になったそうです。
文字に関わらず、「気持ち」を込めるとその通りになってしまう事があるんですかね。
初心にかえって短編です。長編のお話も好きですが、新耳袋的な短いお話も好きです。