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短編2
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◇達磨と小鬼◇

「達磨さんが転んだ」

楽しそうに歌いながら小鬼達が達磨を転がしていた。達磨は大口を開けてがはがはと笑っている。大学構内にそんな妖怪がいた。

ベンチからその妖怪達を眺めていると一匹の小鬼が、ぽんっと達磨を蹴飛ばして勢いよく転がした。すると達磨は女性の足にぶつかって、彼女をすてんと転ばした。

「達磨さんが転んだ」

小鬼達は頭の上で手を叩き、疳高い声で歌いながらはしゃいでいた。

遊び方が違う。と、そう思った。

しばらく小鬼達と達磨はそんな悪戯をして遊んでいたのだった。

私は幼い頃からこんな風に幽霊や妖怪が見えてしまう。それが私以外には見えていないと知ってから、この事は自分だけの秘密にしている。きっと人に話したら頭のおかしい奴だと思われる。それが嫌だったから…。

数日後。その日は遊びに興じる小鬼達と達磨を見かけなかった。飽きたのだろうかと思っていると「達磨落とし」と声がする。

見ると建物の屋上の縁に達磨がいた。ここからだと小鬼達は見えないが、疳高い笑い声はしっかり聞こえる。達磨は相変わらず大口を開けてがはがはと笑っていた。

しかし、あの高さに達磨がいて小鬼達は「達磨落とし」と歌っているこの状況に、些か嫌な予感がしてしまう。

まさかな…、と思っていると達磨が勢いよく飛んで、真下でたむろする男衆目掛け真っ逆さまに落ちていく。

その中の一人の頭に達磨が直撃すると、ごーんと梵鐘を撞いたような重い音が辺りに響く。直後、彼は糸を切られた操り人形のように、だらんと地面に倒れてしまった。

私は何故倒れたか理解できるのだけど、周りの人達から見たらなんの前触れもなく彼が倒れたもんだから、それは大慌てである。声を掛け、体を揺さぶっても反応がないので、周りの人達に担がれながら医務室へ運ばれていった。

あとで聞いたけど、彼はたんこぶができただけで大した怪我はしなかったらしい。

悪戯に成功した達磨はがはがはと笑っている。しばらくすると達磨の元に小鬼達がやってきて「達磨落とし」と手を叩いてはしゃいでいた。

だから遊び方が違う。

そうして小鬼達は「達磨さんが転んだ」と歌いながら達磨を転がしてどこかへ消えていった。それから達磨と小鬼達が姿を現すことはなくなった。

なんとも奇妙な遊び方をする妖怪であった。

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