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怖い話の古典的なものに、
「ゆうれいの 正体見たり 枯れ尾花」
というものがあります。
怖い怖いと思っていると、何でもない物でも
得体の知れない何かと勘違いしてしまう事があります。
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私は怖がりなのですが、
霊感などは全くありません。
しかして怖い話は大変好きでして
「親指の爪に黒い縦線が入ってれば ”見える人”だ」
と聞いては自分のをしげしげと見つめ、
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「人をあつめて怖い話でもやろうか」
ともなれば、いい話が作れないかと
ウンウン唸っておりました。
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そんな私の想いに応えたのか、
いつからか視界の隅(すみ)に
得体の知れないものがチラつくようになりました。
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彼らはどこにでもおりました。
黒い影
白いワンピースを着た人
顔がよくみえないなにか
目を見開いた女性の頭だけ...。
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一瞬しか目に映りませんが頻度は多く
週に4回は見ていたと思います。
この話をするのは非常にウケがよく
楽しかった。
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でも、すぐに気づきました。
彼らは全部、見間違いでした。
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例えるなら
お風呂で頭を洗う際に感じる視線。
ラップ音だと騒いでた家鳴り(やなり)の音。
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彼らが見えるときは
花壇に捨てられた黒いシャツであったり、
古くなって折れた白い柵であったり、
まるで答え合わせをするように
見間違えた物が置いてありました。
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悔しいじゃありませんか。高校生ですもの、
自分が特別だと思える何かが欲しくてたまりません。
どうしても本物を見たい、
そこに何かいる証拠が欲しい
そう思った私は、
見間違いをすることが無いよう
自分の部屋を空(から)にして、
丸一日過ごしてみることにしました。
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がらんとした白い壁紙の部屋に、
私と椅子ひとつだけ。
両親は帰りが遅く、時間はたっぷりとあります。
カチ....カチ....カチ....カチ....
時計の秒針がいやに存在を主張してましたが、
何が見えるでも起こるでもなく。
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正直飽きていた私は立ち上がり、
座っていた椅子に携帯のカメラを向けました。
写真だけ撮ったら、下らない妄想はこれで
おしまいにしようと思いました。
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shake
ピピッ.....ピロリン♪
画面に写ったのは普通の部屋。
ため息をつきながら後にしようとした
その時でした。
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「ん」
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写真中央、椅子の脚。そこから伸びる黒い影。
夕方も近かったのでそれかな?
とも思いましたが、
部屋の照明と窓から差し込む日光に
黒い影は逆らって伸びています。
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画面を拡大してみると、
影は部屋のあちこちに
うっすらと点在しており、
その線をつないだ形は
まるで、
椅子を取り囲むようになっておりました。
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咄嗟に目の前の部屋を見ましたが、
変わった様子はありません。
より鮮明な写真を撮ろうと思い、
再びカメラを構えました。
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が、電池が切れています。
何もこんな時に!
そう思って電源ボタンをガチガチと
何回か押していて
ふと、気づきました。
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液晶に写った私の顔
その真横から
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黒いもやが同じ画面を覗き込んでいます。
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硬直した私がどうすることも出来ず立ち尽く
していると彼は、いや、彼らは言うのです。
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い
る
よ
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男女すらつかない、
ざわざわと耳障りな声に
寒気が止まらず、
へたへたと座り込んで、
いつしか気を失ってしまいました。
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就職して、
一人暮らしをしている今でも
見間違うことはあります。
しかし、
声のようなものを聞く事はありません。
余談ですが、あの部屋にいわゆる
”いわく” の類いもありません。
仕事で心霊スポットに行くこともありましたが、
やはり霊感は無いようで、
何も感じませんでした。
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一人暮らしは快適です。
積読や、
ハンガーにかけっぱなしの服、
一部屋にひとつのミニテーブル、
書類などが散らかっておりますが、
快適です。
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なぜなら彼らは、
見間違いなのだから。
作者あねご
ご覧くださり、ありがとうございます。
あねごと申します。今作が初投稿となります。
これは普段から感じている事を、
少し盛って作ったお話でございます。
どこを盛っているかは皆様のご想像に
おまかせ致します。
またお目にかかる事がありましたら、
よろしくお願いいたします。