結論から言うと厄介な敵というのは人の心にある善意です。善意自体には何も悪い要素は無いのですがその使い方により非常に厄介な敵となります。さて本題に移ります。
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今回は僕と同学年で同じ学科にいる女子学生のYから聞いた話です。Yとはある授業でグループワークをしたときに親しくなり連絡を取り合う仲になりました。
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去年の夏のこと。Yは歩いて買い物に行っていたそうです。交差点で信号待ちをしているときに右手にある信号を確認しました。そのとき向こうからおばあちゃんが歩いてきているのも見えました。道の幅が広かったため、おばあちゃんが道の真ん中に来た頃には点滅が始まっていました。Yは『このままだったら渡り切れない』と思い、急いでおばあちゃんの元へ駆け寄り手を持ち腰を支え渡るのを手伝いました。
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ここで話が終わっていれば良かったのですが、Yにとって怖いことがここから起きます。
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その日は何事もなく平穏無事に終わりましたが、それから何週間か経った頃に異変が起こります。Yが外出したとき誰かの視線を感じたり、跡を尾けられているようなのです。それは何日も続きました。Yが一人暮らしをしているアパートにも磨りガラスに人影が映ったり、無言電話がかかって来ていたそうです。
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Yは警察にストーカー被害を訴えて助けてもらうことにしました。1人でアパートにいるのが怖いということで友達に泊まりに来てもらったり、友達の家に泊めてもらったりして解決するまでの間は過ごしました。ストーカー被害はそれから6ヶ月経った頃に解決したそうです。だいたい今年の2月か3月になります。
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ストーカーをしていたのは30代のおじさんでした。動機は「若いのに立派な行いをしていたから一度話してみたかった」と言っていたそうです。立派な行いというのは夏にYがおばあちゃんを助けたことでした。
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ではおじさんがどこでそれを見たのかと言うとYouTubeにアップされている動画です。Yは警察から事情を聞いたときに問題の動画を見ました。タイトルには「ドラレコ映像!美人女性がおばあちゃんを助けた瞬間!!」とあったそうです。
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Yは怒りが湧いたと言っていました。警察に「この動画主のせいで被害に遭ったようなもんじゃないですか!」と訴えると。警察の人も「まずこの動画主はあなたに許可を得ていないからプライバシーの侵害に該当しますし、肖像権も守っていません。これは犯罪と同じです」と言っていたそう。
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以降、動画は削除されて残っていません。動画主は特定できず慰謝料などは請求できませんでした。これをYから聞いたときに「犯罪のきっかけを作った人が一番の悪かもしれん。おじさんが悪いのは分かるけど、そうさせたのはあの動画を送った人だと思う。しかも厄介なのは動画主は善意っていう衣を付けてるから、もし動画主を批判したらこっちが他の視聴者からバッシングされる」と言いました。
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Yは「再生回数が100万回超えてたからそれだけ多くの人に私の顔とかを見られたってことよね。そりゃあそれだけ多くの人が見たら中にはストーカーをする人だっているし、もっと酷ければレイプされて殺されてたかも知れないわけよ」と動画主に怒っていました。
作者やみぼー
厄介な敵とは何か伝わりましたか?話の中の動画主は人に何が起きるかなんて考えていません。おそらく自分の承認欲求を満たすためです。良いねがたくさん欲しい、良いコメントがたくさん欲しい。だから善行をした人を晒し上げて自分の心を満たそう。
動画についた「良いね」は本当に「良い」ことですか?動画主は何もしてないです。善いことをして良いと言われるべき人はYです。しかもそもそも、良い行いというのは誰かに評価されるためにやっても意味はありません。
動画主の方はYが良い行いをしたと思うのならその時にその場で車の窓から顔を出して「立派だね!」と言えば良かったじゃないですか?動画に頼らずに。動画主は正々堂々と陽の当たる場所を歩けない人なのでしょう。