中編3
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いわく付きの漫画本

私の好きな90年代頃の花を勤めた有名漫画家さんで、恐怖モノの少女漫画をいくつも描いていた人がいます。

その漫画家さんはとても人気で「オペラ座の怪人」の漫画化を任せられていた程で、少女漫画の様な内容とペンタッチ、エモく描かれるイケメンと美女達とは裏腹に魑魅魍魎の出てくる場面や恐怖表現がしっかりとグロテスクで私と母はそこが大好きでした。

その人は他にもほんとにあったガチホラーの話を描いていました。そのガチホラー本を1冊私は実家から持って行っていたのですが、ある日母から電話があり、少しだけ「ええ〜……」と思った話です。

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母は「あの本(ガチホラー本)ってアンタの所にあるよね?」と聞いてきたので「おん。あるよ?」と返事をすると電話越しにため息が聞こえました。

そして面倒くさがるように話始めたので(あ、これはアレ(霊的)な案件の話だ)と思い、「何かあったの?」と聞くとそんなに重大ではないものの奇妙なものでした。

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母の話はこうです。

アンタの持ってるあの本に焼け焦げた痕があるでしょ?そうそう。あのタバコを押し付けたみたいなちっちゃい痕。アレね、最初からついてなかったの。

ずっと前、久しぶりに本棚から出したら焦げてたのよ。「本と本の間にずっと差し込まれてた」って事は燃える理由が全く無いしウチは皆タバコ吸わないでしょ?猫居るし。

それでこんな「面倒臭い本」は手放さないとって思って友達にバンバン貸しまくったの。アタシの友達変人揃いだからどうせ返すの遅れるだろうし、その流れでどうか借りパクしてくれって感じで…でもね、

おかしな事に友達が全員期日通りに返してきたから尚更手放したくて。

次は知り合いの古書店の無料コーナーとかに片っ端から置かせてもらって買う人やもらう人が居ないか試したんだけどダメだったわ〜〜〜……

そ、焼けてるから買う人が居ないの。

正に「先手を打たれてた」って感じ。諦めかけてまた違う古本屋に置いてもらおうと思ってたらアンタが急に「あの本はあの本は」って騒ぎ出すから仕方なしにアンタにあげたの。

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私はその話を聞いて違和感を感じ、「あの漫画本」の表紙を見て焦げた痕の位置を確認しました。表紙に描かれている悪魔の暗示のタロットカードに綺麗な円形の焦げがポツリと……1つ。

更に開いて内容を見ると数ある怖い話の中で引っかかる話が1つだけ。「ヴードゥー教の本の出版とそれにまつわる話」でした。

漫画家さんの知り合いの出版社の方がヴードゥー教の本を出版してくれと依頼され、出版しようとすればする程関係者が怪我をしたり、「本」の方が元いた場所から逃げて隠れんぼ状態になっちゃったり、昼間から社内で怪奇現象が収まらなかったりで、やっと出版できたと思えば有名霊能者さん達からの「あの本良くないよコール」がひっきりなしの恐ろしい魔術本の話でした。結局出版社の方の友達の霊能者さんに半ば押し付ける形で本を預かってもらったはいいものの、霊能者さんは封じ方を知らなかったらしく海外の霊能者さんに封じ方に関する手紙を書いてもらい、それに基づいて封じたそうです。

この話、おかしな事に出版の依頼者は消えたかの様に行方がわからず、海外の霊能者さんは手紙が来た日にちの8ヶ月前にはもう亡くなられていたというなんとも奇妙な話なんです。

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母に「この話じゃないかな?原因」と話すとそれだと返ってきました。実は母は昔から洋物のモノとはウマが合わないのです。ピアノや建物の洋間、洋物の怪しい本等。

正直洋モノであんなに「ヤバい本」ならいくら人伝に聞いて漫画に出したとしても効果は薄れに薄れるけど影響は現れるわな……と思いました。じゃないと本好きな母が「手放したくて仕方が無い」とか恐る恐る言うわけないじゃないですか。

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という訳でそのいわく付き(?)の漫画本は母とは反りが合わず私について行く事を決めたようで、現に私の住んでる部屋にある訳ですが、手放そうと思わない限りは大丈夫そうです。

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