短編2
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うさぎりんご

「ハヤト君、又今日も…」

お昼の時間、子供達が楽しそうにお弁当を開けて自慢し合う中、ハヤトはビニールで包まれたコンビニのおにぎりを無言で食べ始める。

最近のお弁当の主流はキャラ弁で、子供達は楽しそうにそれぞれのお弁当を得意げに見せ合っている。

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キャラ弁でなくとも、栄養のバランスの取れたお弁当をとハヤトの母親に話はしているが、忙しいと言いつつ、綺麗に飾られたネイルを親指で弄りながら、眠そうに欠伸をし、一向に改善される気配もない。

幼稚園教諭は、いつもの様に自分のお弁当の中から、兎を象った林檎を一つ楊枝で刺すと、ハヤトにあげた。

無表情であまり感情を表に出す事のないハヤトだったが、この兎林檎はお気に入りで、この時だけは目が輝き、子供らしい表情をする。

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ーネグレクトー

園側も児相に相談をしているが、怪我や痣などがない事から対応も遅い。

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ハヤトは1人遊びが好きで、他の子供達と遊ぶ事がない。

そんな姿を見て、教諭達は他の子と遊ばせ様とお友達の集まる場所へ手を引いて連れて行くが、両足を踏ん張り、泣き出してしまう。

どうしてなのか幾ら問うても俯いたまま何も答えない。

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時々、ハヤトが決して近付かない鉄棒の前に他の園児が行こうとすると、その腕を強く掴み、頭を大きく横に振る。

「穴」とだけ言い。

地面には勿論穴などないし、園庭には危険な場所などないのだが…

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子供達は母親や祖父母のお迎えで帰宅し、その日もハヤトは1番最後まで園に残っていた。

いつもの事だが、母親に電話をしても繋がらない。

「ハヤト君のお母さん、遅いね」

誰に言うでもなく、窓ガラス越しに薄暗くなる園庭を眺めながら呟くと…

「ママは来ないよ」と。

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「えっ?」教諭が聞きかえすとハヤトは積み木を重ねながら

「穴に落ちた」と。

「穴って?」

教諭の問い掛けにハヤトは答える事はなかった。

穴とは…?

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ハヤトには何が視えているのだろう…

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短編であるにも関わらず、
さまざまな解釈が可能な1作ですね。
ハヤト君はとても良い子だけど
一体、何がどう見えていたのだろうか?…

改行含めジャスト800字もお見事です。
まさか、1から数えたのですか!? Σ(||゚Д゚)ヒィィィィ(すみません)

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