とある都市伝説がある。
その内容は、午後11時半にとある学校の近くの公衆電話に向かい特定の電話番号にかけると見知らぬ男が電話に出るというもの。
しかもその男は過去を改変する能力を持っているらしくその男に変えて欲しい過去を伝えると24時間以内にその“過去”が変わり、電話をした本人以外は誰も過去が変わったことには気づかないらしい。ちなみに変えることができないものもあるらしくその場合、男は素直に「それはできない」と言うとか。
仮にその電話の男のことを“改変者”と呼ぶことにしよう……。
separator
とある少年はみんなから虐められていた。
少年は臆病な性格で喧嘩なんてしたことのない子供だった。だから反撃することもやり返そうとする度胸も彼にはなかった。そして彼には一つ後悔していることがあった。
「小1の頃、空手を習っておけばよかった……。」
少年は小学校1年生の時、親から空手教室への入門を勧められたがそれを断った過去があった。おそらく入門していれば少しは強くなっていたのかもしれない。
nextpage
そんな時、少年は奇妙な公衆電話の都市伝説を耳にした。
「胡散臭いけど試してみる価値はあるかも…」
少年はその日の夜自分の通っている学校の近くの公衆電話で改変者に電話をしてみた。
プルルルル プルルルル
nextpage
「あの……もしもし……」
『………』
「あのすいませぇん……」
『………………何を変えたい?……』
「え?(本当に来た……!)」
『どんな過去を変えたいんだ?……』
「えっと……小学1年の頃、空手教室に入門しなかったという過去を入門したことにしてください!!!」
nextpage
『……………わかった。』
ブツ ツ- ツ-
電話は切れた。
separator
少年が虐められていたという事実は消え、代わりに少年は町で一番強い空手少年ということになっていた。実際、少年の力は強くなり、体も筋肉質になっていた。
少年の母親曰く、空手教室には通わず“とある人物”と空手の練習をしていたとのこと……。
そして少年の過去が改変されたという事実は少年と改変者しか知らない。
separator
とあるニートの男は悩んでいた。
数ヶ月前、会社で失態をおかしクビになってしまった。なんとかしてあの時の自分が失態をおかした前日に戻りたい、そう彼は思っていた。
そんな時彼は例の都市伝説を耳にし、早速試してみることにした。
nextpage
プルルルル プルルルル
「おい俺を過去にタイムスリップさせることはできないのか?」
『それは無理だ。』
「じゃ、じゃあ俺の過去を変えてくれ!会社の失態をなかったことにしてくれ!」
『……………わかった……」
ブチ ツ- ツ-
separator
その後
男の失態はなかったこととなり、代わりに別の社員がその失態をおかし、クビになった。改変された世界で彼は今日も真面目に働いている。
separator
とある脱獄犯の死刑囚は思った、“あの時人殺しなんてしなければよかった” と。
逃走中彼は公衆電話の都市伝説を耳にし、その公衆電話の場所にやって来てた。
プルルルル プルルルル
「過去に俺は一家族を皆殺しにした。その事件………無かったことにしてくれ!頼む俺は死にたくないんだぁ……。」
『……………わかった』
「本当か!よっしゃあ!!!」
ブチ ツ- ツ-
separator
刃物を持った男が6人家族の住む家に入ってきた。
「ウヒャヒャヒャヒャ全員殺してやるううう!!」
完全に彼は狂っていた。そこへ一人のスーツ姿の男がやって来た。
「君、やめるんだ!そんなことしても誰も幸せにならない……君も合わせてみんな不幸になるんだ……!!!だから…そのナイフを捨てるんだ!!!」
「黙れ………黙れ黙れ黙れええええええウヒャヒャヒャヒャ」
グサっと鈍い音が聞こえ、スーツ姿の男は腹部を刺されて死んでしまった……。
separator
「なんで………既に24時間経ってるぞ……………どうして過去が変わってないんだよおおおおおおおお」
死刑囚は泣き崩れ、その後警察に見つかり逮捕、数日後に死刑が執行された。
その後、公衆電話の所に行っても改変者は二度と電話に出ることはなかった。
その後、二度と誰かの過去が変わるということもなかった。
nextpage
終
作者夢と現の境界
【解説】
改変者の正体はタイムトラベラー(スーツ姿の男)で過去にタイムスリップしてその世界に干渉し未来を変えていた。
過去に戻り少年に空手を教えたり、会社員のおかした失態を何らかの方法を使って他人に押し付けたり………そうやって過去を変えてきた。
そして最後の死刑囚からの願い。
これは過去に戻り死刑囚が罪を犯さないようにすれば未来は変わり、死刑囚の願いも叶う(恐らく)ので彼が人を殺そうとしているところを改変者は何とかして止めようとした。
しかし最後は死刑囚(過去の方)に殺されてしまう。
改変者が亡くなったため二度とあの公衆電話に電話しても彼が出ることはなかったというオチ。