【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

餌やり

つい先日のこと。

『総武線、現在信号確認のため列車に大幅な遅れが生じており、運転を見合わせております。大変ご迷惑をおかけしております』

チッ あと一駅なのに…

仕方ない。京成線で帰るか

普段は使わない京成線ホームのベンチに重い腰を下ろし、私は電車を待っていた。

10分後。電車が到着し乗り込むと、夜も遅かったからか、人はちらほらしか乗っていない。

ドアから1番近い席に座りスマホに目をやると、残り1%。そして画面はたちまち漆黒に包まれた。

ま、一駅だし。

電車が走り始めて2、3分が過ぎようとした時くらいだったろうか。右前の優先席に座っている老女が、薄気味悪い笑顔でこちらを見ているのに気づいた。

きもちわる…なんて思ってたら、電車がゆっくりと速度を下げ始めた。

ドアが開き、外へ出ると少し肌寒い。パラパラと小雨も降っていた。

改札を出る前にトイレに寄り用を足した後、スタスタと家に向かって歩き始めた。

この駅から家までは歩いて20分ほど。人気のない道だが仕方なく家に向かって歩いていると、

shake

ジャリッ。

何かを踏んでしまった。

ふと足元を見ると、白米らしき物がドサっと落ちていた。

カラスなんかがゴミでも荒らしたんだろう。

そうとしか思わず歩いていると、また道にだいたい同じ量の米が落ちていた。

よく見ると道路の先に、まるで道しるべのように米が点々と続いている。

米は私の家の方まで続いていたが、途中、神社がある道の方に逸れてしまっていた。

このまま家に帰ってすることもないし。

どこまで続いてるのか、ちょっと見てみるか。

この日はなぜか、好奇心が家に帰って休みたいという気持ちに勝っていた。

しばらく米を辿っていると、案の定近所の神社へと続いていた。境内への階段にも、4段ごとに米が落ちており、それは鳥居を超えた先の開けた所で終わっていた。

これでおしまいかよ!つまんねえの!

私は山状に盛られた米を勢いよく蹴っ飛ばした。

shake

カコン!!!!

突然の物音に心臓が止まりそうになり、物音がした方を見ると、電車で見た老女が、境内の側の街頭に照らされていた。

足元には寿司桶?のようなものが転がっていた。

老女の表情は先ほどとは違い、真顔だった。

すぐに米を置いていたのはこの老女だと分かった。

私は怖くなって、来た道を戻ろうとした時、後ろで悲鳴にも近い怒鳴り声が聞こえた。

何を言ってるのかは聞こえなかったが、その声は憎しみと怒りに満ちていた。

真っ暗な夜道を全力で駆け抜け、何とか家に逃げ込んだ。

鍵を閉めしばらく物音を立てないように声を殺していた。

ジッとし始めて3分ほど経った時。

何かが地面を凄いスピードで這いずるようなガサガサという音が聞こえ始めた。

ガサガサ音は家の周りを二、三周回って、ピタッと止んだ。

私は恐る恐るドア穴から外を覗いてみた。

郵便受けと道路の丁度真ん中あたり。

30代くらいの男。

スキンヘッドで服は着ておらず、ゴキブリのように手と足を器用に使ってカサカサと動いている。

ヨダレをダラダラと垂らし、地面に向かってしきりに何かを嗅ぐような仕草をとりながら、気味悪く歩き回っている。

音を立てたらまずいと思い、ドア穴から音を立てずに目を離そうとした時、傘立てに足をぶつけてしまった。

その瞬間、ドアに向かって

shake

ガサガサガサガサガサガサガサ

と奴が這いずり寄る音がした。

『うわあああああああ』

思わず声が溢れ出てしまい、急いでドアから離れベッドにダイブし、布団を頭からかぶり目を閉じた。

脂汗が背中から滲み出ているのがわかる。

そしてそのまま意識が飛んだ。

どのくらい寝ていたのだろう。

目が覚めた時には既に次の日の夕方になっていた。

この時、なぜだか昨晩のことは何一つ覚えていなかった。 

ふと異常にお腹が減っていることに気づいたが、家には食べ物が何もない。ゴミ出しのついでに近くのスーパーにでも行くことにした。

エコバッグを持って、靴を履いて、

玄関のドアノブに手をかけた時、

昨日の記憶が鮮明に蘇る。

しかしもう手はドアノブを回してしまっていた。

shake

ジャララララ

ドアが何かを崩す音と感覚があった。

見ると米が散乱している。

米は道しるべのように道路から私の玄関先まで続いているようだ。

shake

バリバリバリバリバリバリ

そんな音が聞こえ始め、道路から半裸のやせ細った男がハイハイしながら米を食べ進めて来た。

そして私を見るなり、ニヤッと笑った。

Normal
コメント怖い
0
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ