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短編1
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とんとんとん

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それは、コロナ禍の冬の、夜20時のことでした。

その日の午後から夜20時までずっと母と私は一日中、家のリビングでテレビドラマを観てくつろいでいました。

妹は22時まで塾で不在でした。

父が書斎でテレワークをしていました。

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夜20時を過ぎた頃、父が迷惑そうに文句を言いながらリビングに入ってきました。

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「おい、誰だよ、さっき会議中に書斎のドアを叩いた人…。とんとんとんっ!って。何か急ぎの用があったのかい?」と父が言いました。

私と母は首をかしげて言いました。

「妹はまだ帰ってこないし、私と母は書斎なんかに行ってないよ。みんなでお昼を食べた後、ずっとリビングでドラマ見てたよね」

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そうなのです。私たちはお手洗いにも行っていない。

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その会話からしばらく経って、元気に妹が帰宅してきました。

妹にこの話をすると

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「きっと、去年亡くなったおじいちゃんが会いに来たんじゃない?みんなに看取られなくて、寂しかったから」

と言ったのでした。

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コロナ禍で、祖父の最期に病院での見取りは出来なかったのです。本当に祖父が来ていたのならば、挨拶したかったですね。

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そこに居たの?…おじいちゃん?

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