長編11
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前世

俺がまだ都内のアパレル会社で働いていた頃の話。

その日、俺は同じ課の先輩の大吾さんと同じく後輩の民生くんの三人で渋谷のバーで飲んでいた。

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大吾さんは北川景子の旦那に見た目は似ているのだが、その中身は宮川大輔である。

所謂コミュ力お化けであり、我がデニム課の誇るお祭り男だ。

民生くんは多少頭が弱く暴走気味ではあるが、性根は真面目な可愛い後輩だ。

落ち武者の悪霊(?)を従えているが本人は全くの0感の持ち主である。

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この三人でよく飲みに行った。

当時俺達の間では、

「わざわざ用意したホワイトボードにお題に沿ってフリップ形式で答えを書き、熱く議論を交わす」

といったアホな飲み会がブームであった。

お題の内容も

「乗りたいガンダムのMS」

であるとか、

「人間が素手で倒せる動物の限界」

だとか、およそ社会人とは思えぬようなくだらない内容であった。

が、仕事のストレスやしがらみを忘れ、学生のように笑い合うこの飲み会は俺達の心の拠り所だった。

下ネタは厳禁とし、どんなくだらないお題にも真剣に答え議論を交わす様は周りの目にはどう映っていたのだろうか。

きっと途方も無いアホだと思われていただろう。

実際、紛うことなきアホであったと今でも思う。

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その夜もいつものようにバッグからホワイトボードを出しかけた俺と大吾さんだったが、

「今日はいつもとは違う趣向で行こうと思います。」

と民生くんが言うので、俺達は手を止めた。

「こんなものを用意しました。」

やけに気取った声で民生くんは大きな紙をテーブルに広げた。

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ひらがな五十音とその下に書かれた「はい」「いいえ」。

コックリさん表であった。

アホだとは思っていたがここまで来ると一周して尊敬の念を感じずにはいられない。

「おぉ。」

俺と大吾さんは複雑な心境を訳の解らん感嘆符と共に吐き出した。

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日頃の疑問をコックリさんに教えて貰うのだと民生くんは自信満々に宣った。

彼はコックリさんを何だと思っているのだろうか。

仮に降霊が成功したとしてもGo○gleのような使い方をされるコックリさんに、俺は心底同情した。

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とはいえ、折角用意したのだからしっかり楽しもうと準備を始める三人。

元々くだらない理由で始めた飲み会である。

くだらないければくだらない程良いのだ。

目的の為には手段は選ばぬ。いや、逆か。

十円玉に指を置き、最初の質問をする。

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「コックリさん、コックリさん。とりあえず生でいいですか?」

『はい』

おお、返事をしたぞ。

どよめく一同。

まあ、当然のように指で動かしているのだが、ここは流れに乗るしかない。

そのうちにこの飲み会の方向性も見えてくるだろう。

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コックリさんの分のビールを頼む。

またアホな事をやってるな、と顔見知りの店員が話しかけてくる。

「お、コックリさんですか。その方のチャージ料も取っていいですか?」

乗りが良すぎる店員も考えものである。

が、ここで断っては興が冷める。俺達は黙って頷いた。

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ビールが来たところで改めて乾杯となった。

「片手使えないと不便だな。」

「これ離しちゃ駄目なんだっけ?」

「うーん、いいんじゃないですか。一旦離して。」

「じゃあ、一時休戦で。」

早速タブーを犯す俺達。

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「指が離れない!」

「俺も!」

「どうして!?」

とお約束のやり取りをした後で普通に指を離す。

当然だが何事も起こらない。

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「まだ方向性が見えないな。これ面白くなるか?」 

ビールを干し、ポテトフライを頬張りながら大吾さんが言う。

「まあ、暫くやってみましょうよ。折角準備したんだし。」

ナッツを齧りながら民生くんが答える。

とりあえずもう少し続けることになり、俺達は再び十円玉に指を置いた。

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「コックリさん、コックリさん。三人の中で昇進が一番早いのは誰ですか?」

なかなか良い質問だ。

年齢的には大吾さんが優勢ではあるが、メインブランドを担当し実績があるのは俺だ。

可能性が一番低いのは民生くんだが、新ブランドの立ち上げに参加しており今後の展開次第では侮れない存在だ。

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一同が固唾を呑んで見守るなか、十円玉が動く。

『た』

なんとなく指を置いていた俺と違い、二人は質問が終わるが早いか渾身の力を込めて『た』に指を滑らせた。

二人とも『た』が最初の文字なので圧倒的に俺が不利だった。

俺の線は消えた。

あとは二人の男のプライドがぶつかり合うばかりだった。

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『み』に行きたい民生と、『゛』に行きたい大吾さん。

爪が白くなる程に力を込めた指先が震える。

最早趣旨が解らない戦いを蚊帳の外から俺は見つめる。

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「△!俺の方が付き合い長いだろ!手伝え!」

「先輩!悪いようにはしませんから、加勢して下さい!」

『ほ』周辺をさ迷う憐れな十円玉。

どうしてこれ程まで真剣になれるのだろうか。

実に愛すべきアホ二人である。

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「ちょっとトイレ行ってきます。戻るまでに決着つけといて下さいね。」

「あ、馬鹿!指離すな!」

「ちょっと!なにやってんすか!」

ほぼ同時に二人から罵声を浴びながら俺は席を立った。

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トイレで俺は考えた。

これからどうするべきか。

この調子で進行しても醜い争いが続くことは明らかだ。

抜本的な方針の変更が必要だった。

なりより指先が保たない。

なにか打開策はあるだろうか。

企画会議よりもよほど真剣に頭を回転させながら俺はトイレを出て席に戻ろうとした。

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「あのー…ちょっといいですか…」

後から声がする。

振り返るといかにも量産型女子大生といった容貌の女の子が立っていた。

「コックリさんやってた人ですよね?」

そう言えば少し離れた席でこっち見てた二人組の女の子がいたな。

俺は曖昧に頷いた。

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こういった事はよくあった。

アホな事をしながら飲んでいる俺達は目立つのだろう、

「楽しそうな事してますね。」

「俺も参加していい?」

など度々声を掛けられるのだが、いつもやんわりと躱していた。

あんまりしつこく絡まれるようなら場所を変えたりしてやり過ごしていたのだ。

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なまじ大吾さんは見た目が良いので女の子から声を掛けられる事も多かった。

今回もその類だろう。

いつものように曖昧に返事を濁しながら立ち去ろうとした俺だったが、続く言葉に思わず足を止めた。

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「私の友達なんですけど前世が解るんです。」

前世?

ちょっと興味が湧いたので話を聞くと、一緒に来ている友達がそうだと言う。

なんでもコックリさんの要領で指が勝手に動き、その紡いだ言葉が前世の名前だと言うのだ。

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今日たまたま民生くんが用意したコックリさんと、前世を見る事が出来る女子大生が偶然居合わせた。

これは運命だろうか。

なにかのお導きか。

それじゃあ僕らが居合わせたのも運命。

よし、結婚して下さい。

俺は彼女の前に跪き、こんな事もあろうかと常備していた指輪を見せプロポーズした。

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なんて事があるはずもなく、胡散臭さ全開の量産型女子大生を俺は呆然と見つめた。

が、企画倒れに終わりそうなコックリさん飲み会の打開策になるかもしれない。

どうせこのまま尻すぼみで終わるくらいなら乗っかってみようじゃないか。

俺は彼女とその友達と共にアホ二人が待つテーブルへ戻った。

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俺の説明を聞いた上でドッキリを疑うアホ二人。

まあ仕方がない。

俺も半信半疑である。

ともあれ物は試しと大吾さんから見てもらう事になった。

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量産型女子大生の片割れは同じく量産型のプロトタイプといった風貌だった。

ふんわりとしたワンピースにベストを羽織り小洒落た帽子を被っている。

大学デビューはそこそこ成功したようだ。

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「行きます。」

彼女が目を閉じて多少ささくれだった指を十円玉に置いた途端、周囲の空気が変わった。

先程までの喧騒がすぅっと遠ざかり、耳鳴りのような静寂が耳を襲った。

現実感の薄くなる世界とは対照的に、彼女の存在感が大きくなったように思えた。

とんでもない事が起こるかもしれない…

俺達は呼吸をする事も忘れ彼女を見つめた。

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という事も当然なく、俺達は変わらず胡散臭さ全開の目で彼女の指の動きを追った。

彼女の指がすっと動き、一つの字の上で止まる。

『ほ』

また指が動き、そして止まる。

『ら』

彼女が目を開ける。

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え?終わり?

『ホラ』

法螺。

担がれたか?

俺と民生くんは目を合わせ、次第に笑いが込み上げてきた。

まさに大吾さんにピッタリの前世ではないか。

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「なんだよ、ホラってw」

「法螺吹きって事じゃないですか?」

「前世が解るって名前とかじゃないんだw」

ゲラゲラ笑う俺と民生くん。

「そんな事言われても…」

と狼狽える量産型プロトタイプと何故か不満そうな量産型の片割れ。

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そんななか、大吾さんだけが少し考えるような表情をしていた。

どうしたんだろう。

ちょっと心配になり大吾さんに声をかける。

「なんですか?法螺吹きって言われてショックでした?」

「いや、思いあたる事っていうか…なんつうか…」

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大吾さんはフィリピンのクォーターで母方の祖母がフィリピン人だ。

聞くとその祖母の出身地が「ホラ」という所であり、確か由来は人名だったと聞いた事がある。

と言うのだ。

これは本物か!?

俄然興味が湧く俺達。

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次に名乗りを上げるのは民生くんだ。

彼はネットで名高い修羅の国の出身であり、生粋の日本人だ。

なにか具体的な名前が出るかもしれない。

期待に胸が踊る。

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「それでは見させて頂きます。」

何故か急に口調を変えてくるプロトタイプ。

こいつなかなかやりおる。

またスッと十円玉に指を置き目を閉じる。

ゆっくりと動く指。

指が止まる。

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『た』

『に』

『し』

タニシ。

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急な人外からの参戦に往年のドリフのように椅子から転げ落ちる俺達。

タニシ。

弁解の余地なし、まさかの巻貝である。

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一体何をすれば巻貝から人類に生まれ変われるのだろうか?

坊さんでも助けたか?

いやタニシの這った跡で地蔵が出来たのではないか?

いやいや、地獄で苦しむ罪人の前につうっとタニシの粘液が降りてきて…

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矢継ぎ早の俺と大吾さんの突っ込みにぶんむくれる民生。

またも申し訳なさそうなプロトタイプと不満顔の量産型。

もう、なんなんだよ。

前世ってこんな面白いの?

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「いや、タニシって言っても色々いますし…」

何故か急にタニシの肩を持つプロトタイプ。

「なんだよ色々って。」

絡む民生。

「ほら、ジャンボタニシとか。」

「外来種じゃねえかよ!フォローになってないから!」

笑いが収まらない俺達。

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助け舟を出そうと大吾さんが発言する。

「北大路魯山人が死んだ原因ってタニシだってよ。」

だからなんだと言うのか。

偉人を殺すと人間になれるとでもいうのか。

妖怪人間ベムに教えてやれよそれ。

早く人間にしてやれ。

なんの意味も無い蘊蓄に憤る民生くん。

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「大体、魯山人が死んだのジストマって寄生虫が原因です。その知識どうせ美味しんぼでしょ!?」

大吾さんの蘊蓄の出処は全て美味しんぼであるという核心を突く民生。

狼狽える大吾さん。

そうだったのかと思い至る俺。

置いてけぼりの量産型二人。

趣旨のブレる飲み会は続く。

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さて満を持して大トリの出番である。

もう何が来ても驚かない自信がある。

地名でも人外でもどんと来い。

俺の発言に頼もしさを覚えたのか、無言で頷きプロトタイプが目を閉じる。

が、指を置く前に目を閉じたので十円玉が見つからず迷う指先。

なんだよ、天然か?

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一度目を開けて仕切り直すプロトタイプ。

「さあ、それでは見てみましょう。」

こんなんだったっけ?

キャラさえもブレ始める。

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先程と同じようにゆっくりと動き出す指先。

その指は迷わずに二つの文字で言葉を紡ぐ。

俺が俺になる前の名を。

遠い昔に俺だった者の名前を。

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『ぬ』

『う』

ヌー。

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牛だった。

俺が俺になる前、俺はアフリカのサバンナに生きる牛だった。

巫山戯んな。

また人外じゃねえか。

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先程までの発言とはうって変わって今日イチの絡みを見せる俺。

人外仲間が増えて喜ぶ民生。

最早息も出来ぬ程笑い転げる大吾さん。

こんなはずでは…と狼狽えるプロトタイプ。

何故か便乗して笑い転げる量産型。

何事かと様子を伺いに来た店員。

奇跡の飲み会は続く。

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「なんだよ、ヌーって!」

「いや、でもヌーって可愛いじゃないですか。」

「いや喋らなくていいから君、フォロー出来ないなら黙ってて。」

「でも、大移動したりとか…」

年に2回大移動するからなんだと言うのか。

またもピントのズレた発言をするプロトタイプに苛つく俺。

乗っかる民生と大吾さん。

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年に3回大移動した偉大なヌーだったのでは?

いや、4回かもしれない。

川にワニを並べて飛び石のように渡ったのでは?

それが実はサメで海を渡って群れを導いて…

そのもの蒼き衣を纏いて金色の野に…

果てしないアホの推測が続く。

もうやだ。

前世なんて信じない。

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散々お互いを罵り合いながら、計らずもコックリさん飲み会は大変な盛り上りをみせお開きとなった。

なんだかすみません…と最後まで恐縮したプロトタイプにお礼を言い、笑い過ぎの涙でメイクが落ち素朴な顔を覗かせた量産型に悪態をついて、俺達は帰路に着いた。

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ホラという名のフィリピン人と、

巻貝であるタニシ、

アフリカを代表する偶蹄目ヌー、

それぞれ国も種族も違う三人がこうして同じ会社で働き、時に反発し時に結託して過ごす毎日が奇跡なのではないか。

悠久の時が流れ、来世でもこうして巡り合うことがあるのなら、またこうやってくだらない事で笑い転げて過ごすのも悪くないな。

俺達は肩を叩き合い二軒目の飲み会の場所を探した。

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なんて事はなく、

二度とコックリさんなんか持ってくるな。

そもそもあんな胡散臭い奴らを連れて来たやつが悪い。

会社でこの話するなよ。

とお互いに言い合いながら俺達は渋谷で別れた。

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タニシは田んぼに帰り、

法螺吹きはフィリピンに帰り、

そしてヌーは草を求めて大移動を始めた。

なんの話だっけか。

まあいいや。

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後日、盆休みで実家に帰省していた民生くんが神妙な面持ちで話しかけてきた。

民生くんは母子家庭で育ち父親は顔も知らず、生きているのかどうかさえ解らなかったらしい。

それが実は父親が生きていて案外と実家の近くに住んでいる事が母親から聞かされた。

という訳で自分なりのけじめというか、区切りと思って父親に会って来たとの事だった。

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まあ、俺はごく普通の家庭で育ったのでそんな民生くんの多少ドラマチックな生い立ちに興味を持ちつつも、なんでこんな話を俺に?

と思っていたのだが、

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「で、俺の父親なんですけど、タニシだったんですよ。」

え?お父さんタニシだったの?

まさかの人外?

タニシと人間のハーフって事?

民生くんの予期せぬ告白に混乱する俺。

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「いや、巻貝じゃなくて。名字が田西だったんです。」

マジか。

じゃあ、あのプロトタイプ本物だったって事?

大吾さんもそれっぽい事言ってたし。

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あれ?

じゃあ俺の前世は、ヌーで確定?

俺だけ人外?

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「いいじゃないですか、ヌーでも。ちょっと格好いいですよ、ヌー。」

明らかに笑いを堪えて言う民生くんに俺は久しぶりの殺意を覚えた。

顔を伏せながらトイレに走っていった大吾さんを視界の端に捉えた俺は、

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「絶対こいつらより先に出世して、冷や飯食わしてやる。」

と心に誓った。

Concrete
コメント怖い
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@arrieciaアリーシャ 様
コメントありがとうございます。
いいかげんそろそろ「怖い話」を書かなくてはいけませんね…
ともあれ楽しんで頂けたのであれば幸いです。
皆様からのコメントは本当に励みになります。
今後とも宜しくお願いします。

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@むぅ 様
久しぶりの投稿にもこうしてコメント頂けたこと、本当に嬉しく思います。
また落ち武者の件も掘り下げていこうと思っていますのでよろしくお願いします。

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@かがり いずみ 様
コメントありがとうございます。
怖い以外のボタンがあってしまっては趣旨がブレますね…
もう少しオカルティックにしたいのですが、どうしてこうなってしまうのか。
ともあれ精進するのみです。

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