朝、目が覚めると決まって鳥の鳴き声がする。
殆どの場合は雀だが、たまにカラスが先に鳴くことがある。
私の実家は田舎の方で、沢山の自然に囲まれていたから、鳩やトンビ、燕にウグイス等も見られた。
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ある日の朝である。
スマートフォンのアラーム音が鳴り、私は目が覚めた。
けたたましく鳴り響くアラームを止め、身体を起こし、背伸びをする。
違和感を覚えた。
だが、よく分からない。
モザイクがかかったように、違和感の正体がハッキリしない。
「まぁ、いいか」
朝は大学の用意で忙しいのである。
ベッドから降りて、出口へ向かおうとした。
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shake
『ァ゛ア゛………ア゛……ア゛…』
背後………窓の外から、聞こえた。
しゃがれた、老人のような声。
ほぼ反射的に振り返る。
居た。
窓の外、カーテン越しに何かが居た。
寸同のように凹凸が少なく、そこそこデカい。
例えるなら、そう___
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___頭の大きいフクロウのようなシルエットだ。
ゾワリと虫が這うような嫌悪感が背筋を撫でた。
と同時に、違和感の正体に行き着く。
鳥の声がしない。
毎朝聞こえる筈の、鳥の声がしない。
季節?否、関係ない。
今は夏だから。
フクロウの様なソレは、微動だにしない。
ただ、ジッとしている。
そして、更なる怪奇な点を見つけてしまった。
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影が、無い。
今、ソレは太陽を背にしている筈だ。なのに、ヤツの正面へ影が伸びていない!!
___ヤバい!
直感した。
コレは、コイツは、俺が関わっていい生き物(?)じゃない!
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再び振り返る。
目の前にドア。
走る。
3歩と無い距離を全力で走る。
永遠に思える3歩。
常に後ろへ警戒心を向けながら、走る。
すがり付くようにドアノブに飛び付く。
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shake
ドンドンドンドンドンドン!!!!
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「うわぁああああああああ!」
ドアが震え、大きな音がなった。
緊張と恐怖が高まった俺の口から悲鳴が上がる。
まさか___ドアの向こうに?
嫌な予感が脳を掠めた。
が___
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「✕✕✕!いつまで寝てんのアンタ!」
___ドアの向こうから聞こえてきたのは母の声だった。
泣きそうだった。
母親という存在をここまで嬉しく感じたのは、人生初だった。
ドアを開けようとノブを回した。
瞬間___俺はドアから離れた。
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おかしい。
声は確かに母だった。
だが、俺の母はここに居ない。
母は俺が四歳の頃に離婚し、今は俺と父の二人暮らしだ。
…………居る。
ドアの向こう、あのよく解らないフクロウのようなバケモノが居る。
慌てて周囲を見渡すと、小学校の頃に使っていたバットが目に入った。
飛び付き、ドアに向けて構える。
声がしてから、何の反応もない。
消えたか?と疑問に思った。
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shake
『ヴン………イイ゛………ナ゛』
運良いな。
確かにそう聞こえた。
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窓の外ではなく、俺の背後から
作者夜咄
朝、鳥の声が聞こえると気持ちよく目が覚めます。
雀の日は吉、カラスの日は中吉、ツバメの日は大吉なんて噂が小学校の頃に流行ったりもしました。
ただ、たまに紛れ込むのです。
鳥が逃げ出し、ソレしかいない。
そんな朝が。
この後の事はご想像にお任せします。
振り返ったときに見えたソレを、私は書きたくありませんので。