中編4
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近所の宗教おばさん

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あれはもう20年近く前の事になります。

当時私は両親とも他県へ仕事に行ってしまい親戚のおばさんの家に居候していました。

おばさんの家はお金持ちで旦那は単身赴任で小学生くらいの息子さん(A君とします)と私の三人で気を使う事なく生活していました。

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当時の私は部活に打ち込み高校推薦も決まっていたので気ままでした。

だからあんな余計な事に首を突っ込んだのでしょう…

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私の近所には古アパートに出入りしている通称宗教おばさんと呼ばれる人がいました。

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髪はボサボサの長髪、服装は薄汚く常にニヤニヤして独り言を呟いてる不審者の見本みたいな中年女性でした。

完全に時代錯誤な昭和スタイルで大柄な体格なため遠くからでも分かりました。

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しかしその宗教おばさんは私が世話になっているおばさんの姉妹だったのです。

確かにいつも笑顔なおばさんと印象はまるで違いますが容姿はよく似ています…

そのため友人達と一緒でない時はすれ違いに会釈くらいはしていました。

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だんだんわかってきたのですが宗教おばさんは正確にはアパートの住人でなく管理人のようでした。

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地方から出てきた後いつのまにか持ち主の老夫婦に取り入り今の立場に収まったと聞きました。

彼女の部屋には何度かA君と一緒にお邪魔しましたが所狭しと御札が貼ってあり大小様々な仏像のようなものが飾ってありました。

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正面から見ると観音像ですが背面から見ると蛸のような禍々しい形をしていたと記憶しています。

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話は変わりますが私は自分の家系のルーツを知りたいと思うようになりました。

そういった年頃のせいだったと思います。

何せ私も当然ながら二人のおばさん達の家系なのですから…

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確かに私は彼女達同様長身ですが痩身でもありショートカットです。眼鏡もかけ見た目のイメージはかなり違うと思います。

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A君は実年齢は私より上でした。

何らかの成長障害だそうです。

更におばさんでなく宗教おばさんの子どもだそうで、だから子を取られて病んでしまったとか…

A君が出来婚の材料に利用されたのを理解したのは随分後になります。

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中学最後の夏休み、私は二人のおばさん達の地元を訪ねる事にしました。

おばさんはやや難色を示し結局A君と私二人で電車に乗り継いで1日がかりで到着しました。

初めてに近い旅行だったので車内では少し興奮気味でしたが寂れた村の風景に少し気分が落ち込みました。

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駅には迎えの人が来てるはずです。

○○ちゃん?の声で振り向いて一瞬固まりました。

あの、宗教おばさんが居たのです!

正しくは親族の方ですが…

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A君はいつも通り玩具片手に無邪気に自分の世界に浸っていました。

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まあ、遠いとこからよくいらっしゃって…中学生なのに偉いわねえ、との声で我に返りました。

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20分くらい涼しくなった田舎道を三人で歩き古い大きな屋敷にたどり着いて何人か親族を紹介されました。

彼女らは驚くほど宗教おばさんに似通っていました。

同じ人が何人も連なって非現実感さえあり軽く目眩がしました。

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その日は疲れていたため簡単な夕食を頂きすぐに二人で床につきました。

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翌朝屋敷付近をA君と散策していると屋敷のおばさん達に本尊を案内されました。

閉村には似つかわしくない豪華絢爛な建物でその付近だけ遊離感があります。

中を通されるとこれまた大勢の宗教おばさんがいました。

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彼女らは親族謙信者だそうでここを拠点に全国に布教のため派遣されるそうです…

物凄く大きな例の観音像も祀られ信者の方々が祝詞を唱えています…

あまりの現実に私は気分が優れないとA君を引っ張りそこからでました。

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そこであるオジサンと出会いました。

オジサンも一族の出身ですが血が薄いとの事で確かにおばさん達よりはるかに普通で愛嬌がありました。

小柄で髭を生やし坊主頭で快活でした。

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また力仕事のためガッチリした体格をしていました。

彼は親族達とは半ば離縁し友人らと農業を営んだり川魚を捕ったりして生計を立てていたみたいです。

結果的には一族の全容はオジサンに教えてもらいました。

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最初にかの国からの祖先がこの地に住み着いたのは戦前で一世紀近く昔の事です。

日本人ではありません。

彼女らの体格は大きく目は細くつり上がっていましたが性質は温厚だったようです。

それが戦後の動乱期に閑村を新興宗教という形で乗っとったようです。

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彼女らは頭はいいのですが創造性を欠くため土着の山神信仰と仏教を混ぜ宗教を立ち上げたみたいです。

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山陰地方なのに海洋生物の蛸がモチーフとして加わっているのがその混迷ぶりを表しています。

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一族は遺伝的な欠陥からか女性がほとんどで男児は生まれても小さいまま成長しなかったそうですが、珍しいため祭事役に祭りあげられたとの事です。

オジサンが家出した要因の一つだそうです。

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布教の仕方ですが女性である事を利に地域の有力者や資産家に取り入ったり入籍などを手段としていました。

今ではそれなりの規模となり検索候補に出るくらいは有名です。

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以上が私が知り得た概要です。

この後屋敷でそれとなく信者の方々にも裏とりをしました。

その後私はこの地を訪れていません。

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結婚を機に引っ越し連絡も取らないためおばさんもA君も現在どこにいるのか分かりません。

地元の本尊に戻ったのかA君は神事役に祀りあげられてるのかも分かりません。

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私にはA君そっくりの子どもが生まれゾッとしましたが今のところ順調に育っていますし、続いて生まれた娘達も健康です。

成長して過去のルーツに興味を持たないといいのですが…

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…地元の友人から聞いたのですが例の宗教おばさん、まだ居るみたいです。

当時と変わらないままで…

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同一人物でしょうか?代替わりしてるのでしょうか?…見間違いである事を祈ってます。

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@さかまる 様、ありがとうございます。
そうですね、4日くらいで書いたものなのでかなり?な部分があると思います。
他のサイトにアップしたり友人に見せる時など修正したりしてますが…完成するのはかなり先になりそうです。
返信が遅れ申し訳ないです。

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