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「存在を否定したい」から、始まる。

長編9
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「存在を否定したい」から、始まる。

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あ、初めに言っておくけれど、

この話は、創作で、実話ではない。

あひるの事だから、

有り得るな、、実話なんじゃ、、、?

違います。

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私の会社には、Bと言う男がいる。

たぶん、

歳の頃は、30歳前後。

どう取り入ったのか、課長の手下のように、

働いている。

いや、働いてない。

監視する係?

書類を持って、ウロウロしてる係?

そうして、

派遣で掃除に来ている、

70代後半くらいの爺さんに、恐ろしく怒鳴る。

「ここ、

10分で、掃除して下さいっ!!」

「掃除が、遅いんで、す、よ?

もっと早く、出来ないのっ!?」

掃除の爺さんは、

働き口が無くなると、生活していけないので、

いつも、いつも、謝る。

「ごめんねぇ、ごめんなさい、、

一生懸命してるんだけど、、、」

更には、

私にも絡んでくる。

「Kさんもさー、

こんな仕事、適当で良いんだから、

もっと、早くしてもらえます?」

「それ、

だ、れ、の、指示な訳??

つーか、あなたは、、仕事しなくて良いの?」

私が、そう言うと、

次の人に絡みに行く。

まぁ、、Bには、大変に申し訳無いのだが、

私は、仕事が出来る方だ。

それが悔しいのか、知らんけど。

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ある日、次のプレゼンの事で、

どうしても、Bと、

話さなきゃいけない事があった。

私は、オフィスで、Bを探す。

いない。

廊下に出てみると、給湯室の方から音がした。

覗いてみる。

Bが、くわえタバコをしながら、

手を洗っていた。

「Bさん?

今度のプレゼンの資料なんだけど、

T会社の資料、出来てる?」

「え? D会社ですか?」

「いや、T会社、」

「あぁ、それなら済んでますよー」

彼は、始終、

禁煙の給湯室で、くわえタバコをしながら、

喋っていた。

半永久的に、手を洗いながら。

私は、言う。

「分かりましたー。

あ、ちなみに、Bさん? ここ、禁煙ですが?

まぁ、どうでも良いけど。」

一応、先輩である、私に対しての態度に、

怒り狂いそうになりつつも、その場を離れた。

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その日の昼休み、

仲の良い先輩のYさんと、昼食を取っていた。

私は、

Bの事を、腹立たしく話す。

Yさんも、言う。

「みんなさ、

同じ事、思ってるんだけどねぇ、、、

ウロウロして、

アイツ、いつも何してんの?って。

でも、、、掃除の爺さんに対しては、

ちょっと酷過ぎるよね、、、」

私は、かなり腹立たしかった。

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次の日、オフィスにいると、

廊下から、怒鳴り声が聞こえる。

Bがまた、掃除の爺さんに絡んでるんだろう。

( あーぁ、、、)

そうして、

私が、仕事をしていると、

私の向かいのデスクにいる、

新人の女の子の、涙声が聞こえてきた。

( えっ?)

見ると、女の子の隣には、Bがいた。

私はすかさず、新人の女の子に言った。

「ねぇ、Mちゃん?

ちょっと、コピー手伝ってもらえるかな?」

彼女は、ホッとしたように、

「、、はぃ、、、」

と言って、

私と、一緒にコピー室に行った。

その瞬間、彼女は大泣きした。

彼女は、

嗚咽混じりで、何か言おうとしていたが、

私は、Mちゃんの肩に手を添えて、

「何も、言わなくても良いから、、

分かってるから、、ね?」

ある意味、

周りは、自分の事しか考えて無い。

絶対、他人に干渉しない。

とばっちりを受けるのが、イヤだ。

残念ながら、

『助けてあげたい』

と言う気持ちを、持ち合わせてる人は、

居ないようだ。

見て見ぬふり、、、

こう言った、縦社会の世界では、

とても、とても、大事な事なんだろう。

まぁ、、愚痴れば、返事はしてくれるけれど。

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いつしか、私は、

Bに対して、存在の否定を望んだ。

(皆が、イヤな思いをしているのに、、)

私は、

他人を放っておけないタイプで、

暇さえあれば、

掃除の爺さんとも談笑していた。

これは、、、

私のエゴかも、知れないし、

自己満足かも、知れないし、

もしくは、、

ある意味、爺さんに対する優越感、、

と、思われても仕方無い。

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そうして、ある晩、

私は、ネットで調べていた。

『人を呪う方法』

きっと、この時点で、

私は、気が触れていたんだろう。

他人のツラさを、

勝手に背負っていたんだろう。

ま、偽善者か?

そんなの、どうでも良い。

私が、ヤツの存在を、消し去りたいのだから。

パソコンを見る。

『呪いの代行』

やけに、検索に引っかかる。

( いやいや、自分でしたいし。

1番、やりやすいのは、、

しかも、強力な呪いは、、、)

そうして、いくつか、ピックアップする。

その中から、

1つ、

呪い方を決めた。

ネットには、方法が、書かれている。

『1. 白い紙、はさみ、マジックペンを、

用意する。

2. 白い紙を、人の形に切る。

3. 紙人形に、「死」と、

「呪いたい人の名前」を書く。

4. 呪いたい人の髪の毛を、紙人形の中心に、

貼り付ける。

5. 次の満月の夜、その紙人形を、

歩道橋の上から落とす。

6. 車が、紙人形を轢いたのを確認する。

7. 黒魔術完了。』

、、、、、

(これなら、やれそうだよねぇ?

ウフフフ、、、

これで、皆が、幸せになるんだから!!

私って、偉いよね?ね?

クククッ、、、

満月かぁ〜 。

何だか、ステキじゃない?

じゃあ、、、

会社帰りに、あの歩道橋から落とそっかなっ?

それが良いと、思わない?

キヒヒっ、、)

調べると、満月は、9日後。

「う〜ん、、、

9日後かぁ、、、

待ち遠しいなぁ〜、、、ねぇ?

早く呪い殺したいと、思うよね?ね?

クククッ、、、キャハハハッ!!」

私は、誰かに話し掛けながら、

笑っていた。

1人暮らしのアパートで、声を上げて。

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「何だか、最近楽しそうね?」

Yさんが、私に言う。

「そうですかぁ?」

「まさか、、、彼氏が出来たとか!?」

「そんな!!違いますよー!

そのうち、欲しいですけどねー、

でも、今は、、、」

更には、

Bにまで、優しくなる。

「B君、そのネクタイ、可愛いわね?」

Bが、かなり、変な顔をして言う。

「あ、ありがとうござー、す、、、」

当たり前。

だって、

あんたと、もうじき会えなくなるんだから、

最後の慈悲? つーの? 笑。

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待ちに待った、満月の日。

カレンダーに、印までつけていた。

Bの髪の毛を、入手するなんて、

かなり簡単だったし。

帰り道、遠回りをして歩道橋を渡る。

そうして、満面の笑みで、

歩道橋の上から、白い紙を落とす。

白い紙は、

木の葉が舞い散る様に、

左右に揺れ動く様に、

時間をかけて、落ちて行った。

すると、

白い紙が、地面に着いた瞬間、

1台の車が来た。

私は、車が走り去るまで、

目を剥いて、ジッと見ていた。

「轢けっ!轢けっ!」

車が走り去った後、私は、苛立った。

紙が、轢かれていない。

次の車は?

次の車は?

紙切れなせいか、

車の走る風で、フワフワ動くのだ。

私は苛立つ。

そうして、トラックが来た。

( 今度こそはっ!!)

私に、希望が見える。

そうして、

トラックが走り去った後、私は大声で騒いだ。

やっと、やっと、、、

あの白い紙が、車に轢かれたのだ。

地面に潰されている。

(やっ、たぁー!!

アイツが、死ぬ、、、っ!!

ウフフフ、、、

早く、居なくなってね? B、く、ん?)

「キャキャキャッ!!

イヒヒヒ、、、キーッキッキッ、、、」

私は、歩道橋の上で喜び勇んだ。

separator

次の日、

私はワクワクしながら、会社へ行く。

Bの訃報を、聞くために。

しかし、、

相変わらず、廊下からの怒鳴り声。

(え、、、?

あの呪い、、効果、無いの、、、?)

それから、暫くの間、

私は、苛立ちながら過ごした。

( 何で、アイツ、死なねーの!?

あの呪いって、インチキ!?)

すると、

それは、突然にやって来た。

朝、会社に行くと、

課長が、皆を集めた。

そうして、

言いにくそうに、話し出した。

「、、えー、あのー、

動揺しないで、聞いてもらいたいんだが、

この課で、一緒に働いてくれていた、

B君が、、

昨晩、事故に遭って、、、

その後、病院に搬送されたんだが、、

残念ながら、、、亡くなって、、ね。

まぁ、、

葬儀などは、身内でされるそうだから。

これからは、

B君の分まで、皆、頑張って欲しい。

以上だ。」

私は、ほくそ笑み、

しかし、笑ってしまうから、

ダッシュで、トイレへ行く。

個室に入り、思いっきり腹を抱えて笑う。

「キャハハハッ!! キーッヒヒヒ、、、!!

ざまぁみろ、

やっと、消し去ってあげたのよぉ〜?

あ、な、た、を、、。

クスクスッ、、、

あー、愉快!愉快!!

私ってさー、救世主、、だよ、ね?

偉ぁ〜い、私っ!!」

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その日の帰り、

祝杯を上げようと、家の近くのコンビニに寄る。

今日は、ずっと、ニヤニヤしっぱなし。

( 自分へのご褒美だから、、ねぇ?

ククク、、、)

私は、ビールを数本と、赤ワイン1本、

そうして、

酒の肴に、チーズを買った。

で、家に帰り、1人で盛り上がった。

また、独り言のように、誰かに喋っている。

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それから1ヶ月ほど経ち、

Bが居ないおかげで、オフィスも、

掃除の爺さんも、落ち着いて働いている。

その様子を見て、

(よし、よし、、、)

と、思うのだか、

欲が、出て来た。

" 誰かに、私の功績を讃えて欲しい "

私は、

昼休みに、Yさんに、

呪いの事を、冗談ぽく話してみた。

軽く、流してくれると思ってた。

しかし、Yさんの表情は、

驚きから否定、

否定から攻撃、攻撃から軽蔑、

軽蔑から心配、、

そうして最後に、私への拒絶。

精神科を勧められる。

( 何で??

皆が嫌がってる人を、

私が、消去してあげたのよ!?

あんたらも、ラクになったでしょ?

何で、この私が、責められる訳!?)

私は、気分が悪くなり、

何だか、体調まで悪くなり、

その日は、

会社を早退した。

帰り道、悔しい思いで、一杯だった。

私は、近くのスーパーで、

1番、度数の高い酒を買う。

歩きながらラッパ飲み。

もう、どうでも良い、、、

私が、、1番ツラかったのは、、、

Yさんの、その、、、

私へ向ける視線が、

Bへのそれと、同じだったと言う事だった。

separator

私は段々と、会社を休みがちになって行った。

そうして、

白い紙を、人の形に切る。

「ウフフフ、、、

だってさぁー、

あんたが、悪いんでしょぉー?

そう思うよねぇ?ね?」

そうして、また、

あの歩道橋から、白い紙を落とす。

私が、ニヤニヤ見ていると、

今回は、一発で轢いてくれた。

「キヒッ、、」

軽く笑うと、私は家に帰った。

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次の日から、休み無しで会社へ行く。

何故なら、愉快な話の報告を、

聞きたいから。

2、3日後、課長から嬉しい報告があった。

「えー、、

B君の事も、あったばかりなのですが、、。

実は、昨日、

Yさんが、、駅の階段から落ちたそうで、

それが、しかし、、

頭の打ち所が、悪かったみたいでして、

昨日の夜、亡くなりました。

皆は、動揺せ、、、」

今回は、

女性社員から、悲鳴が上がる。

私も、彼女達の真似をしといた。

その晩も、また、

私は、祝杯を上げる。

すこぶる気分が良い。

(この呪いって、効くんだなぁ ククク、、

ふーん、、、

じゃっ、次は、誰にしよっかなぁ〜?

あの経理のヤツも、ムカつくし、

あ、アイツも消えて欲しいかもー、、

ケケケッ、、、!!)

separator

次の日は、土曜日で仕事は休み。

出掛けようと思ったけど、何だかダルいし、

家に居た。

夕飯を作るのも、何だか面倒臭い。

私は、

近くのコンビニに行く。

お弁当と、ビール3本、

久しぶりに雑誌なんかも買って、

アパートに帰る。

途中にある、横断歩道。

ボーッと、青になるのを待つ。

すると、

道路の真ん中に、小さい猫がいる事に気付いた。

走って来る、車のライトが見える。

猫は、動かない。

「危ないっ!!」

私は咄嗟に、コンビニの袋を投げ捨てて、

猫の方へと走った。

それと同時に、

猫は、向こうへと走り去った。

道路の真ん中で、

車のヘッドライトに、映し出された私は、

(、、えっ?、、なん、で、、?)

私は、車に轢かれた。

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次の日、

会社では、課長が又もや、訃報を伝える。

ヒソヒソ、話し声がする。

(「立て続けにさ、3人も死ぬって、ヤバくない?

この会社、呪われてる、とか、、?」

「ヤダぁー、やめてよー」)

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私は、、、

「7. 黒魔術完了。」

その先を見なかった。

どうやら、

その続きが、あったようだ。

『8. 轢かれた白い紙を回収し、

白い布で包み、

黒いテープで " × " と封をする。

誰にも見付からないように、土の中に埋める。

これで、あなたへの『呪い』の跳ね返りは、

回避できる。』

separator

『人を呪わば穴二つ』

やはり、

昔から、言われてるだけの事はある。

呪いをかけた、この女性は、

『人を呪う』

と、考えた時点で、

既に、自分自身も、呪われていたんだろうな。

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