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中編5
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峠道

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幽霊やUFO、その他実際にいるかどうかわからないものを完全に否定している友人Yがいた。

自分が十代の頃によくテレビに出ていた、超常現象は全てプラズマで証明できる!と豪語していた○○教授のように

幽霊は目の錯覚だ!UFOは合成写真だ!

などと、もはや聞く耳もなかった。

しかしそれはそれで頼もしいもので

夜中に心霊スポット巡りをしていて いざ現場にたどり着くと、なかなか先に進む一歩が踏み出せないものだが

そのYはスタスターッと現場に入り込み、適当にしゃがんでタバコをふかしながら

「幽霊なんていないのに何を怖がる必要があるの?」

なんてのたまうのである。

だがそれが心強いのも事実で、心霊スポットを廻る時はいつもその友人を連れていた。

ある晩、Yを入れた2人の友人と車2台でとある心霊スポットを目指すことになった。

まずなぜ車2台なのかというと

Yが新しい車を買いたてで、とにかく車を運転したいとのこと、しかしその車が運転席と助手席の2席しかないタイプのため3人は乗れない

それが理由である。

当然?だがもう一人の友人は自分の車に乗り込んだ。

早速心霊スポットがある峠道を走っていたのだが

その峠道には灯りというものがなにも無く

おまけに気候によっては深い霧が立ち込めて

車の光でも数メートル先までしか見えなくなってしまうような地帯でもあった。

以前はいわゆる走り屋がこの峠道でテクニックを競っていたらしいが

あまりにも事故が多かったらしく

今ではそういった連中も出没しなくなったそうだ。

さて今回の目的である心霊スポットは

この峠道の中間地点に廃れたドライブインがあり

そこに悠然と建つ一軒の大きなレストランの廃墟である。

しかしそのレストランでは なにか心霊現象が起きたという事例はなく、ただただ不気味な廃墟という理由だけで心霊スポットにされた場所だった。

それでも

暗く木々に覆われた峠道をひたすら車で走る、

ただそれだけでも寒々とした恐怖が掻き立てられていた。

15分ほど車を走らせていると

さっきまで付かず離れず後ろを走っていたYの車がいつのまにか見当たらなくなっていた。

速度を落としバックミラー越しに後ろを見ても一向に追い付いてくる気配がない。

助手席に座る友人と停まって待つか、それとも引き返すか相談していると突然友人の携帯が鳴り響いた。

Yである。

「もしもし、なにやってるの?」

Y「おまえら薄情だな!なに素通りしてんだよ!」

「はぁ?なんのこと?」

Y「いいから引き返してこいって!」

「あーわかったわかった!」

ツーッツーッツーッ…

「なんか戻ってこいってさ」

なんなんだよ…

自分は首を傾げながら車をUターンさせYが待つであろう来た道を戻っていった。

しばらくしてライトをを点けたままのYの車が道路端に停車しているのが見えた。

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同じように車をYの車の前方に停めて車を降りてYの車へと向かったのだが

車の中にはYの姿がない。

? どこにいるんだ?

友人とキョロキョロと辺りを見渡すが、暗がりでは何の意味も成さない。

しばらくして少し離れたところから

「おーい、早くこっち来いって!」

という少し苛立ったようなYの呼び声が聞こえた。

わけがわからず戸惑う自分と友人であったが、とりあえず呼び声があった方へと足を進めていった。

ほどなくすると

背を向けたYの姿が見え始めた。

そして何やら道脇に生えた大木を両手で抑え

何かブツブツと呟いている。

背中ごしに

「お前何やってんだよ」そう問いかけると

Y「見てわかるだろ!これをどけるんだよ!」

…?

Yの目の前にある大木は人の手でどうなるものではない。

「…いや、なに言ってんの…?」

Y「だから~っ! …あぁ、すいません、俺の友達がこんな奴で…」

そう言ってYは急に何もない暗闇に顔を向けて喋り始めた。

Y「あぁ、大丈夫ですよ、俺けっこう力あるんで」

Y「えぇ、こいつらはダメですよ、薄情だし」

Y「そうですね、、

寂しいですよね、、

わかりました、、 俺もいきます 」

その瞬間、電撃のように悪寒が走り

ヤバいヤバいヤバい!このままじゃヤバい!

ただそれだけの感情が頭の中を駆け巡り

気づいた時にはYの両肩を友人と掴み

引きずるように自分の車へと必死で引っ張っていた。

その間のYは凄まじかった、

最初は、オイ離せよ!ぐらいだったのだが

自分の車に押し込もうとする寸前

オ"ォー!!オ"ォー!!行ぐな"ーーー!!

オ"ォー!!あ"づい"い"い"ィーーー!!!!

泣きながら叫び散らしていた。

友人が素早くYの車の鍵を取りだし自分の車に乗り込むと

しばらくの間 泣き叫びあばれるYを

羽交い締めしてくれていた。

当初の目的であった心霊スポットには目もくれず

峠道をひたすら走り続け

ようやく街の灯りが見え始めた頃には

友人の隣で憔悴しきったYが

小刻みに震える手でタバコに火を点けていた。

最寄りのファミレスに立ち寄り

深夜とはいえ数人のお客がくつろぐ店内に入って

ようやく大きなため息と共に背中にかいた冷や汗が引いていくような感じがした。

軽く注文し

口数は少ないながらも

Yの車はどうする…?…明け方にでも回収しに行こうか…

友人とそんな話をしていると

Yがゆっくりとテーブルの上に何かを置いた。

黒ずんだ、イビツな形をした何かの破片だった。

「…なんだ、それ」

Y「いつの間にか持ってた…多分、車の部品…」

「なんでそんなもの…」

聞いたことがある、

あの峠道で無茶な運転をした一台の走り屋が

運悪く電柱に激突し

倒れた電柱に挟まれて

燃え上がった車内から出れなくなり

そのまま亡くなってしまったという事故を。

Yが持ってた車の部品は

原型を留められず、溶けてしまった車の一部だった。

朝方

いくつかのお供え物を買い込むと

再び峠道へと車を走らせた。

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