以前、夜中にランニングをしていた時期がありました。
家の近くには1周3kmぐらいの大きな池があったので、よくその池の周りを走っていました。昼間はランナーや歩行者も多い場所なのですが、夜の22時半を過ぎると池の周りのライトが消灯されて真っ暗になります。なので22時過ぎぐらいからはほとんど人がいなくなります。
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私は恥ずかしい話なのですがワキガ気味なところがあり、汗をかくと体臭がキツくなるのでランニング中や後に知り合いと遭遇してしまうのが嫌で、いつも人が少なくなる21時半頃に池に向かい軽くウォーミングアップ、22時ぐらいに池を1周走って消灯までには帰るというルーティーンがありました。
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そして年末年始シーズンの出来事です。
飲食店で働いていたこともあり、この時期は繁忙期なので中々定時で帰れず、残業で23時ぐらいに退社することが多くなりました。当然その時間にはランニングしている池は消灯され真っ暗になりますが、それでも日課のランニングを止めることに抵抗があり、ケータイのライトをつけて足下に注意して走ることにしました。
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ライトをつけないと足下もろくに見えないような暗さなので、さすがにこの時間になると歩行者一人いません。
ちょっと怖いなと思いながら走っていましたが、むしろ人が誰もいないこの時間の方が知り合いに絶対会わないので心置きなく走れるな、等と呑気なことを考えていると、前方から人の気配を感じました。
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どうやら前方から別のランナーが走ってきているようです。走り慣れていないのか、ドタッドタッと重たい足音が聞こえます。
(こんな時間にストイックな人がいるな…)と思っていましたが、少し言葉にはできない違和感を感じていました。
ちょっと気味が悪かったので、すれ違いざまになるべくそのランナーの方を見ないように、足下ばかり見ていました。
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不安とは裏腹に、何事もなくすれ違ったのでホッとしました。しかし、そこから2~3分ほど走ったところでまた前方からランナーが走ってくることに気が付きました。かなり近付いた時に、聞き覚えのあるドタドタとした足音が…。しかし一本道で一周3000m。さっきすれ違った人が2~3分で私の前から走ってくるなど不可能なはずです。
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別の人だろう…と思い込もうとしましたが特徴的な足音だったので内心ではさっきの人だとほぼ確信していました。しかし、特にこちらに何かをするわけでもなく普通にすれ違いました。
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が、ここで一つ違和感に気付き途端に鳥肌が立ってきました。なぜならすれ違ったあとに、後ろから聞こえるはずの足音が全く聞こえないのです。もしかしてすれ違った瞬間に走るのを止めてその場に止まっている…!?
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どうしても気になって、勇気をだして後ろを振り返ってみましたが、真っ暗で何も見えません。
まさか、いるわけないよな…と思いながらランニングに戻ろうとした時、一台の車が近くを通り、そのライトが僅かに辺りを照らしました。
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驚いたことに、立ち止まってこちらを向いている人影が一瞬見えました。
(これやばいやつや…)
幽霊だったとしても生きてる人間だったとしてもまともでないことは確かです。
そこからはもう無我夢中で最寄りのコンビニまで走りました。
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コンビニまで無事にたどり着き、一安心しました。安心した途端に、今まで忘れていましたが喉が乾いていることに気付きスポーツドリンクを買ってコンビニの前で飲んでいました。今日は一人で寝るのが怖かったので、迷惑を承知で友達数人に泊めてくれないか電話をかけてみましたが、みんなもう寝てるのか出てくれません(泣)
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そのあとコンビニでねぎとろを買って食べたり、時間を潰しなんやかんやで時間は夜1時を回っていました。そろそろ帰るか、とコンビニの明かりから離れるのは名残惜しかったのですが帰路につきました。
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なるべく池に密接してる道を通らないルートで帰宅しました。
が、そもそも自宅自体が池から200~300mぐらいの場所にあるので家の前に着いてからも、なんとなく池の方から嫌な気配を感じます。
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(さっき怖い体験をしたせいで敏感になってるだけだ…)
そう自分に言い聞かせながら家に入りドアを閉めたその瞬間
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shake
ピンポーン
shake
ピンポーン
とインターホンが鳴りました。
インターホンは玄関ドアの前にあるので、ドア1枚を挟んで誰かが目の前にいるわけです。
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私は固まりました。時間にして言えば数秒~数十秒程度ですがその時の私にとっては永遠とも思える時間硬直していました。
再びインターホンが鳴りました。
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shake
ピンポーン
shake
ピンポーン
なぜか物音を立ててはいけないような気がしてじっとしていました。
そのあとは再びインターホンが鳴ることもなく、少し冷静になった私はとりあえず玄関の電気をつけ、恐る恐る覗き穴を覗いてみました。
誰もいません。
そして玄関ドアの鍵をまだ閉めていないことを思い出し、鍵を閉めました。ガチャリ。音を出したのがまずかったのか、次の瞬間
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shake
ドンドンドンドンドンドン!!!!!!!!
何者かがドアを激しく叩き始めました。
怖くなってすぐにリビングまで逃げて、インターホンのモニターで外を見てみました。
外には誰もいません。
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その日は、そのままお風呂にも入らず布団にくるまって朝まで眠りました。次の日の朝、冷静になった私は警察にも相談しようかと思いましたが、あれは恐らく生きている人間ではないのでしょう。
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不審者だったのなら目的が何かは分かりませんがインターホンを鳴らさずにドアを開けて家に入ることもできたはずです。そもそもドアを閉めた瞬間にインターホンが鳴るのも不自然です。玄関回りは見通しも良いのでそんなに近くに人がいたのであればさすがに気が付きます。
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霊感などなく、そういう知識もない私の考察ですが、多分池ですれ違ったあの人が私に付いて来ていたのだと思います。そしてあの人は恐らくこの世のものではなかったのでしょう。後になって違和感の正体に気が付いたのですが、普通の人間が一寸先の道も見えないような暗闇の中で明かりも持たずにランニングしてるわけないですから…。
作者もぐお