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「てのひら怪談」第3・4話

短編2
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「てのひら怪談」第3・4話

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その三 「もうひとりのわたし」

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つい先日の出来事。

二週間ほど前、久しく会っていない友人が、珍しく我が家を訪ねてきた。

11月○日午前10時頃、私を街中で見かけたという。

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その日は、腰痛のため、終日、床に臥せっていて、トイレに行くのもやっとの有様。

街中まで出かけるなど、無理。ありえない。だから、人違いだろう。と答えた。

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そう・・・と、友人は、しばらく私を見つめていたが、やがて、気まずい顔をして視線をそらした。

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「生霊かもね。」

と、笑い飛ばす私を、友人は、首を左右に小さく降った。

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「あなたじゃない。もうひとりのあなたが、あなたの横にいるの。」

友人は、そういうと肩を小刻みに震わせ顔を覆った。

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その四 「趣味」

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趣味を聞かれ、

「怪談やホラー小説を書くのが趣味だ。」

と答えると、大部分の人が、

「それは、今すぐ辞めたほうがいい。」

と忠告してくれる。

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俺は、言われる度、反論もせず頭を垂れる。

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もう足掛け10年も続けているのに。今更辞められないよ。ねぇ。

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「そんなお話を読んだり書いたり聴いたりして、大丈夫ですか。怖くないですか。」

と、聞かれ、

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「怖くはないよ。たまに、背中がゾクゾクしたり、心がチクチク痛むことはあるけどね。」

と、答える。

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実際、俺の話は、あんまり怖くない。

怖がらない人間の書くものなんて、怖くないのは当たり前。

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霊感はない。

たぶん、ないと思う。

ないと思うから描ける。

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でも、たまに、深夜、人ならざるものの気配を感じることがある。

夜中になると、家鳴りもする。後ろから肩を叩かれたり、いきなり本棚から本が数冊落ちてきたこともある。

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その程度じゃ、辞められないのだょ。

辞めさせてくれないのだよ。

誰がって。・・・・・・俺の口から言わせるなよ。

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こいつらが 辞めさせないんだよ。

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ネタフリ スルナ ネルンジャナイ って。

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