その五 「天井裏」
nextpage
wallpaper:2584
もうかれこれ一年以上前になる。
wallpaper:5789
電気代の節約、省エネ対策等を考慮し、家の照明器具の全てをLEDに替えることに決めた。
nextpage
wallpaper:5789
依頼して二週間後、20代後半と思しき若者と50代半ばのベテラン作業員のふたりがやって来て、早速工事に取り掛かった。
nextpage
wallpaper:5791
工事が半ばに差し掛かった頃、
「うわぁぁぁぁ。」
と50代半ばの作業員が大声を上げた。
天井が大きく歪み、ぐらりと撓(たわ)んだというのである。
nextpage
wallpaper:5790
この家は、築60年以上になる。
どこか傷んでいるのかもしれない。
私は、南東に位置する六畳間の半ドンから、天井裏に上がり、その原因を調べてきてほしいと促した。
nextpage
wallpaper:5053
ふたりは、真っ青になり、揃って首を横に振ると、
「その必要はないです。大丈夫。すぐに作業終わらせます。」と上ずった声で答えた。
nextpage
wallpaper:5792
それまで、和やかに談笑しながら作業をしていたのが嘘のように、その後は、咳(しわぶ)き 一つも発することなく、工事は、予定より30分以上も早く終了した。
nextpage
必要事項を記入し、私の押印を確認すると、ふたりは、挨拶もそこそこに逃げるように去っていった。
nextpage
separator
wallpaper:5790
後日、地元の業者から、「古い家屋の天井裏や屋根裏には、決してあがってはならない。」
という古くからの言い伝えが在ることを聞いた。
nextpage
wallpaper:3717
「そりゃまずいわ。奥さん、それ、我々にとって、『お前ら死ね。』と言われているようなもんだからね。」
nextpage
wallpaper:5794
「まぁ、彼らが逃げ出したのは、それだけじゃぁなかったんだろうけど。」
nextpage
wallpaper:2480
「天井裏には、なにがいたのでしょう。あのふたりは、何を見たのでしょう。」
との私の問いかけに、地元の業者は、こう答えた。
nextpage
wallpaper:3732
「奥さん、よくあの家に住んでいられるね。俺なら、3日と持たないな。」
作者あんみつ姫
天井裏 過去に、父と次兄があがって、すぐに降りて来ました。
真っ青な顔をして。
もう、二度と上がらないと言いながら。
世の中には、触れてはならないものが ごく身近なところにも たくさんあるものなのですね。
家鳴りがするのは、家が古いからだと思っていましたが、古い家って、逆に家鳴りしないらしいです。