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吸血鬼と食人鬼(アラカルト)

中編3
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吸血鬼と食人鬼(アラカルト)

 世間一般には、吸血鬼っていうのはお化けやゾンビみたいに思われている。

 ヨーロッパの寒い地方では、埋葬し死体がなかなか腐らなかったり。それで迷信深い村人たちが、「吸血鬼(お化け)だ」と早合点する。

 「血」が命だというのは、たぶん原始人の時代から、漠然と知られていただろう。一部の古い遺骨で埋葬に赤い顔料を使ったのも、死後の生命力を与える呪術だったのかもしれない。

 だから「血を吸う」とは「命を吸う」ことで、腐らない死体は「夜中に生き血を飲んでいる」などと、空想されただろう。

 昔の人間だって、昆虫の蚊(か)やアブが血を吸うことは知っていただろうし、人間もアラビアやアフリカでラクダや家畜の血を飲んだり、ドイツで「血のソーセージ」を作っていた。

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 けれども、本当に「それだけ」だろうか?

 たとえば、ゾンビは「生きかえった死体の化け物」と思われている。

 しかし、元は呪術で蘇生・使役される死者・奴隷のことだと聞く。

 無知な原住民なら「お前は死んだ。生きかえらせた奴隷だ」と、呪術師が信じ込ませるのは容易いだろう。科学的に生きていても、社会的地位として死者・奴隷(ゾンビ)なのである。

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 それに、吸血鬼と似ていて、食人鬼(グール)というのがある。

 しかし、食人(カニバリズム)は中国や西アジアや南米などの風習では、割と普通にある。

 中国の古い歴史書や(中国の人肉食文化は有名である)、スペイン人の南米探検の本を見てみたら良いだろう(原住民の肉籠を奪って食べていたら、底から人間の手足が出てきたそうだ)。

 西アジアでも、古代の一部の部族は埋葬目的で故人の遺体を食べたそうだ。

 肉食文化のヨーロッパでも、非常時には食人もあっただろう。ドイツの「ニーベルンゲン」の後半の籠城で、火攻めされて、敵の死体の血で乾きを満たすシーンがある。

 古いミイラを「薬」にしたり。

 日本でも飢饉などで稀にあったろうが、魚食と仏教文化のせいで馴染みが薄いだけ。生き肝を薬にすることもあったとか?

 さらには犬肉なども、現在はともかく、昔は普通に世界中で食用であった。チンパンジーが「共食い」することはよく知られているが、(恐ろしい話だが)人肉食も、人類史では必ずしも絶対の禁忌とは言えない。

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 だから、人間は潜在的に吸血鬼や食人鬼である。

 物理的に可能なだけでなくて、憎悪や飢餓など何かの理由、強迫観念やノイローゼでもそうなる。後天的な不幸な運命で、自分や身近な人間が気が狂わないと、誰が断言出来る?

 また最近の漫画(東京喰種)であったように、最悪は遺伝子障害・突然変異などで、特定栄養を人間の血肉からしか得られない種族がいてもおかしくない。混血で隔世遺伝しないとも限らない。

 それに、人間の脂肪の色は黄色くて、山羊に似ているそうだ。スーパーやレストランで、挽き肉に混ざっていても、まず気がつかないだろう。

 もしかしたら、自分たちでも知らないうちに食べさせられているかもしれない。ある日に突然に、残酷な真実を知らされるのかもしれない。

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