これは今から20年以上前の話
僕はまだ高校生で、バイクの免許を取りたてで、嬉しいあまり仲間5人で、峠の山道にツーリングに行く事になった。
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5人が揃ったのは既に夜だった。
まあ皆それぞれ受験前とか忙しかったので仕方なかったのだが、、、
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夜中の山道を進む
ゴールは峠の茶屋で、当然そんな時間に店は開いてはいないが。
店の前に自動販売機が並び、ある種のオアシス的な場所となっていた。
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程なくして、自販機に到着した。
皆、バイクを降りて缶コーヒーを飲みながら、将来についてなど、あれこれ話した。
しばらくして、仲間の1人が、自販機の横に獣道がある事に気づいた。
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人ひとりが歩ける幅の狭い獣道で、砂利道を歩く音だけが聞こえる、ジャリ、ジャリ。
そのまましばらく5人でつらなって歩いた。
先頭は僕だった。
20分ぐらい歩いただろうか、、、
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すると、すぐ後ろのA君が、
「これ以上行っても何も無いし引き返そう」
そう言い出した。
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確かにそうだな、僕も皆もそう思ったのか、
反対意見は無く、そのまま回れ右で引き返すことになった。
僕は、行きは先頭だったから、帰りは最後尾って事になる。
夜中の獣道で、後ろには誰も居ない。
その状況に背筋がゾクゾクする。
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その時だった
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確かに女の声で
「何してるの?」
と聞こえたのだ、間違いない、それも耳元で
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shake
う、嘘だろ、マジか、怖え〜
そう思ったが、すぐに冷静になる
最後尾だ、、、
今騒いだら、前に歩いてるコイツら絶対走って逃げるだろう、何か追いかけてきたら、最後尾の自分が1番やばい、そう思った。
今にも、声を出しそうなぐらい怖い、間違いなく後ろに気配を感じる。
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はぁはぁ
心臓がドクドクし、息が上がる
気が遠くなりそうだ、今にも走りたい気持ちを必死で抑えて冷静を装って歩いた。
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何とか自販機まで戻って来た。
それからは、ほとんど話さず、急いで下山した。
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山のふもと、町まで降りて来た頃には、もう朝になっていた。
仲間との別れ際、あの山での、あの女の声について話そうと思った。
僕が話そうと口を開いたその時、ほとんど同時にA君も何か言いたげなそぶりを見せた。
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僕達は2人顔を合わせて、どちらからでもなく「聞いたよな」とそう言い合った。
で、何て聞いた?
2人同時に声を発した。
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「なにしてるの?」
だよな!
聞いていたんだ!
そう、あの時A君もあの女の同じ声を聞いていたのだった!
なぜ言わなかったのか、それはA君もマジで怖かったらしく、それでも皆が普通なんで、その場がパニックになるのを避けて、言わなかったとの事だった。
しかし
これで、聞き間違いでは無かった事になる。
その後、僕もA君も、他の仲間も、特に何も変わった事は無い。
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真冬の夜中3時の獣道、誰かが居るわけもなく、人間以外の何かが居たのは間違い無かったのだと思う。
あれは一体何だったのか、A君とは今でもその話をするのです。
END
作者家川徳康
本当の話しです
あまり信じない僕ですが、あれだけは、あの声だけは、20年経った今でも、あの声の感じは記憶にあるのです。
何してるの?
透き通った、乾いた声だったな