10年以上前にとある田舎町で僕が経験した実話です。
僕はこの年に傷害事件を起こし留置場に入ります。
一人用で全国的にも多分一番古くて寒くて有名な警察署の独房の留置です。
僕が留置された隣と隣の房にも、僕より先に逮捕されてた人がいました。
左隣は朝10分の運動の時間に出てきてて、当時は朝2本だけタバコが吸えたので、それだけが楽しみで平日は毎日 (土日はなし)僕も朝の運動に参加してました。
他の房の人達もタバコ吸う人は出てくるので、看守はいますが、緩いのでなんの犯罪をやったの?とか話してました。
僕の右の房にも人が居ましたが、タバコは吸わないのか、運動には一切でないし、調べも異例で普通調べは、ご飯前(16時~17時)までには終わるのに、
隣の房の男は、朝から調べで夜中に戻って来る事が多くてなんなんだろうと思っていました。
戻って来る時も顔は見えますが、夜中だしはっきり見えませんでしたが、朝、夜、の洗面、歯磨きで、三人ずつ房から出されるのが、両隣の房の三人なんで、洗面所で三人横並びの時に、僕は顔を見ました。
一言で言ったら本当にさえないイガ栗坊主で、絵にかいたような丸メガネ。ただ死相が出てると言うか、大丈夫この人って感じの雰囲気でした。
朝の運動の時に皆で、あいつ何やったんだ?どうせ窃盗とかだろ?なんて話してました。
僕が留置されて2週間弱位たった日、その日も夜中にその男は戻って来て、飯入れとくからちゃんと食えよと言われてました。
夜の2時頃、となりの房から「水下さい~、水下さい~」かすれた声が聞こえます。看守には聞こえてません。すると「ここで死ぬぁぁ」と呟きます。
そして、「ヴ~ェェェヴ~~ェェ、キュュルジュル、ヴェェェ」見たいな凄く変な不気味過ぎる音が聞こえてきました。僕は凄く怖くなり布団に潜りました。
そして「死.....ね...そ..う、オーェェェ、グギャ」と 聞こえ声が止まりました。異臭がする。そして見回りの看守が発見、応援も来て、その男を番号で呼び、「五番、おい、あー逝った、まずい、うわぁ おい、おいダメだ、あ~~」とはっきり聞こえ、隣の房から運び出され、僕は自殺したと悟りました。
その日は怖くて寝れませんでした。朝を向かえ看守に聞くと、諸事情で他の留置に行ったとの事でしたが、嘘見え見え。
僕は執行猶予で何週間後に外に出た次の日のNHKのニュースで、僕の居た留置の警察署と、見覚えのある顔。隣の房の男。留置で靴下を固く結んで、自らで首を吊って死んでいたと言うニュースでした。
その男の罪名が殺人未遂、強姦8件、強盗3件、で元裁判所の職員(25歳)だったとの事でした。判決前から死刑にはならなくても無期懲役確定の案件。先も見えず死ぬ以外なくなったのか。
僕が二回目の送致をされた時の護送車の中で、隣の房の人は何をしたのか看守に聞いた事がありました。すると「それは言えないが、今留置にいる人の中で、取り返し不能な犯罪をした人間は居る。あなたなんて可愛いものだ」と言ってたの思いだしました。
自殺する日まで、毎日、毎日、かすれた声で発狂したかと思えば、ブツブツと「重すぎる、死に急ぐ、全員殺しとくべきだった」とか言ってたのを思い出すし、耳から離れませんでした。
自殺防止の処置はどこの留置場もしてるだろうと思いますが、
逮捕され留置場で自殺ってたまにニュースで見かけます。死なれたらそこの警察署の大失態になるし、 表に出てない方が多いのだろうと思います。
孤独のまま自殺と言う選択を選んだ男の何かに取りつかれたような、生きてる時でも、本当に死んだような
表情。生気がなくなった声。
今でもその警察署の前を通る度に思い出します。
作者ペー助