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私の父は元社会科の教師で、九州の炭鉱で働いていた鉱夫から実際に聞いた話
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炭鉱に採掘に入る時は男性組、女性組に別れて交代で入って作業をし
男女が一緒に働くことはなかった
片方の作業が終わると交代で片方の組が列を組んで入って行き
細く薄暗い坑道の中で2つの列がすれ違った
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そんな中でも若い男女はすれ違う一瞬で目を交わし合い
そのうち外で逢瀬を重ねるようになった
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男の方は本気で結婚を考えて、女の両親に挨拶に行きたいといった
女も喜び日取りを決めた
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その日男が約束した場所に訪ねて行くと
貧しい家から初老の老人が出てきて
男は意味が分からなく事情を話した
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すると老人は
「その娘は確かに私達の娘です
ですが娘は数年前の落盤で亡くなりました
よほどあなたを思っていたのでしょう
ありがとうございます」と言った
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男は妻にする女を失ったのだが
貧しいその家を見て妻がいなくても婿に入り
一生懸命働き息子としてその両親を支えたそうだ
終
作者尾白