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チャールズ・オルブライト

中編3
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チャールズ・オルブライト

1990年12月13日、テキサス州ダラス郊外の道端で白人女性の遺体が発見された。44口径の銃で後頭部を撃たれていた。

「8800, Beckley View Avenue, Dallas, TX」

 第一発見者の子供たちは、当初はマネキン人形かと思ったという。遺体は仰向けで、Tシャツしか身につけていなかった。

 間もなく遺体の身元が割れた。メアリー・ルー・プラット(33)。テキサス・シアター付近の路上で営業する売春婦だった。ちなみに、テキサス・シアターはケネディ大統領の暗殺犯とされているリー・ハーヴェイ・オズワルドが逮捕された場所である。

「231 West Jefferson Boulevard, Dallas, TX」

 夜ともなればポン引きやらヤクの売人やら如何わしい連中がたむろする地域である。そうした連中とのいざこざに巻き込まれて彼女は殺されたのだろう。当初はそのように思われていた。

 ところが、検視の結果、驚くべきことが判明した。なんと、彼女の眼球が両方とも抉り取られていたのである。しかも、瞼を傷つけることなく、恰も外科手術を施したかの如く精巧に…。

 こいつはいざこざなんかじゃない。快楽殺人だ。味を占めた犯人は、おそらく第二、第三の犯行に及ぶことだろう。捜査当局は震え上がった。

 2ケ月後の1991年2月10日、やはりダラス郊外で白人女性の遺体が発見された。このたびは3発も撃たれていた。左胸に1発、頭頂に1発、そして後頭部に1発である。

 遺体の状況は前回とほぼ同じだ。仰向けで、Tシャツしか身につけていない(但し、Tシャツは捲られて乳房が露出されていた)。そして、眼球が丁寧に抉り取られていた。凶器の銃は別のものだったが、同一犯の犯行と見て間違いない。眼球の摘出は、当時はまだ公表されていなかったからである。

 間もなく遺体の身元が割れた。スーザン・パターソン(27)。彼女もまた売春婦で、しかも最初の犠牲者たるメアリー・ルー・プラットの友人だった。

 実は彼女は殺される2日前、聞き込みをしていた捜査官に犯人の心当たりがある旨を明かしていた。しかし、その時はそれが誰だかを特定しなかった。その2日後に自分が殺されてしまったのだから、運命とは皮肉なものである。

 1ケ月後の1991年3月18日、今度は黒人女性の遺体がダラス郊外の学校脇で発見された。これは意外だった。犯人は白人の売春婦を狙う白人男性だと思われていたからだ。おそらく白人のガードが固くなったのでターゲットを変えたのだろう。彼女は頭頂と顔面を撃たれていた。その銃は第一の犯行のものと同じだった。

 やはり眼球が摘出されていたが、このたびはかなり荒々しい。顔面が傷だらけで、前回とは雲泥の差である。時間がなかったのだろうか? それとも、既に銃撃で顔面を崩してしまっているので、慎重になれなかったのだろうか?

 間もなく遺体の身元が割れた。シャーリー・ウィリアムス(41)。やはり売春婦だった。

 犯人が売春婦を専門にターゲットにしていることがこれで判った。そして、捜査当局はこれまでに「殺されそうになった」との売春婦の証言をいくつも得ていた。加害者は「白髪混じりの白人男性」ということで一致していた。これに該当する前科者の写真を彼女たちに見せたところ、全員が躊躇することなく一人の男を指差した。チャールズ・オルブライト(57)だった。

 1991年3月22日、オルブライトの自宅を捜索した捜査当局は数々の証拠を押収した。

 まず、赤い包装のコンドーム。それはシャーリー・ウィリアムスの遺体発見現場に残されていたものと同じ銘柄だった。

 スミス&ウェッソンの44口径リヴォルバーも発見された。それは犯行に用いられたものに間違いなかった。

 精密な工作に用いられるX-ACTOナイフも発見された。彼はこれで眼球を摘出したのだろう。

 また、眼を失われた数々の人形が押収された。彼は眼に対して異常なまでの強迫観念を抱いていたようだ。

 かくして逮捕されたオルブライトは、3件の殺人で有罪となり、終身刑を云い渡された。現在もなお、塀の中で暮らしている。

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