短編2
  • 表示切替
  • 使い方

雛人形

 小学校低学年のM君は非常に悪戯好きで、お母さんの靴を隠してしまうなど、事あるごとに悪戯を繰り返していたそうです。

 そんなM君はある日、お母さんと小学4年生だったお姉さんと一緒におばあちゃんのお家に行きました。その時期はちょうど雛祭りの頃で、立派な7段飾りの雛人形を飾ってあったです。

 M君はついて早速、雛人形の位置を変えるという悪戯を始めました。

 手始めに、人形を1体ずつ変えてみたところで、トイレに行きたくなりました。トイレに切って戻ってから悪戯の続きをやろうとしました。

 しかし、変えたはずの雛人形が元の位置に戻っています。

 「誰かが悪戯に気づいて元に戻してしまったんだ」と思いお母さん、お姉さん、おばあちゃんに尋ねましたがみんな「私は知らない」と言います。

 M君は絶対誰かが変えたはずに違いないと思い、もう一度人形の位置を変えてみました。今度は2体ずつ変えてみました。しばらくして部屋に戻って人形の様子を見ると、またも位置が変わっていました。今度こそ誰かが変えたに違いないと思い、家族に尋ねましたが、皆「知らない」の一点張りです。

 何度も悪戯を邪魔されたことに、M君は苛つき出し、誰が人形を元に戻しているのか見つけ出してやろうと思いました。雛人形の位置を彼が動かせるものを全て動かし、めちゃくちゃな配置にし、ひな壇がある部屋の前で待ち伏せすることにしました。

 M君は、誰が部屋に入るかをじっと待っていました。20分くらい経ったところで眠くなってしまい、うつらうつらとしてしまいました。「犯人を見つけるまでは絶対寝ない」と思い、必死に睡魔と戦いながら、目を開けるよう頑張っていましたが、ほぼほぼ意識を失いかけていました。

 すると突然、部屋の中から「ごとごとごとごとっ」ととても大きな音が聞こえてきました。眠気が完全に吹き飛んだM君は、すぐに部屋の中に飛び込んでいきました。部屋の中には誰もおらず、雛人形たちは、皆元の位置に戻っていました。

 眠気に負けそうになっていたとはいえ、部屋の中に誰かが入った気配など全く感じていなかったし、音がなってすぐ部屋に入ったのに誰もいないという事態に、M君はすっかり怖くなってしまい、もう位置を変える悪戯はやめたそうです。

Normal
コメント怖い
2
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

@尾白 確かにトコトコ歩いてたと考えると、面白いし可愛いですね笑

返信

雛人形さんたち自体が歩いて戻っていた?想像すると面白くもあります

返信