「アレは、多分・・の後日談」

短編2
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「アレは、多分・・の後日談」

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実は、あの後、少し奥まった山道を走る度に、あの看板『巨頭ォ』をよく見かけるようになった。

あの時のように鬱蒼とした草木が生い茂る険しい山道ではなく、近場の農道や近隣の村や町に出かける時ですら、あのおかしな看板『巨頭ォ』が、待ち構えたように、ふっと目の前に現れた。

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見かけるのは看板だけで、「異形のモノ」たちとは、あの日以来、一度も遭遇してはいない。

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草むらの方を見ないように窓にカーテンをし、余計な音を聞かないように、カーステレオのボリュームは、常にマックスにしていたからかもしれない。

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あれからすぐに、車を買い替えた。

新車には、ナビが標準装備されていたが、夫は、頑ななまでにナビを使おうとはしなかった。

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夫は何も語らなかったが、私が見なかったもの、知り得なかったことを知っていたように思う。

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ある日、息子の通う幼稚園のバスで、隣町にある里山まで親子遠足に行くことになった。

車窓から、新緑に彩られた初夏の景色をぼんやりと眺めていたその時、

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shake

あ!

目の前に、

『巨頭ォ』

と書かれた、あの忌まわしい看板が現れた。

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shake

私は、息ができないほど激しい動悸と吐き気に襲われ、思わずかがみ込み、胸を掻きむしった。

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「大丈夫ですか。」

「車に酔ったのかしら。」

「窓を開けて、空気入れますね。」

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「ダメダメ。窓は開けないで。お願いだから。」

私は、泣き叫びながら懇願した。

車内は騒然とし始めた。

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その時、主任のN先生がやってきて、私の手を取り脈拍を確認した。

少しこわばった顔をしていたが、息子と私を交互に見つめながら、安心したかのようにニッコリと微笑んだ。

「大丈夫。心配いりません。ほら、標識には、あと1キロって書いてありますよ。」

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恐る恐る目を開けて見る。

確かに、N先生の仰るとおり、そこには、「〇〇山登山口まであと1キロ」と書かれた標識(だけ)があった。

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「良く見てください。標識でしょ。他に何か書いてありました?」

有無を言わせぬ迫力で睨みつけるN先生の瞳の奥に、底しれぬ悪意と憎悪を感じ、私は思わず身を震わせた。

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