中編4
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AI怪談

最近AIに小説を書かせるのが流行っているじゃないですか。すでに一部のAIでは十分筋の通った物語を書き出すことができているようです。だが果たしてAIは人間の恐怖心を因数分解して恐ろしい物語を書き上げることができるのだろうかとふと気になりました。

オカルトやホラーに特化した文章AIはないかネットサーフィンすること約2時間、とうとう「恐怖創作AI」なるものを見つけました。

このサイトはどうやらいくつかのキーワードを入れることで怪談を自動生成してくれるものらしくまさに僕が探していたものでした。

早速【高校生 帰り道 足音】で入力。

すると高校生の主人公が塾の帰り道に謎の足音に追いかけ回されるというストーリーの話が生成されました。ありがちと思いきや足音がただ後ろからついてくるだけのベタなものではなく横の壁、あるいは頭上からも足音が聞こえてくるという荒唐無稽さがなんだかAIっぽい。さらにオチは家について安心しているとスマホに親からの着信、すぐに出ると大音量で足音が

「コツコツコツコツコツコツコツコツコツ」というひねりも入れられていた。

AI結構わかってるなと感心しながら画面をスクロールするとページの下の方に

「この物語でよろしいでしょうか?」

・確定

・やり直す 

のボタンが表示されていました。そこそこの出来に満足したので迷わず確定を押し、このサイトをブックマークしその日は就寝しました。

翌日学校に行くとクラス内が盛り上がっている。どうやらクラスの女子が昨日怖い目に遭ったらしい。耳を傾けていると驚いたことに昨日僕がAIで生成した話そのままの体験をしたようでした。

まさかと思いつつも検証せずにはいられません。

家に帰りすぐに例のサイトを訪れる。

【母親 台所 腕】と入力。物語はすぐに生成されたが・・・これではダメだ。万が一本当に起こったら母が大怪我をしてしまいます。

すぐにやり直しを選択し、その後も怖さと安全性のバランスが取れる話になるまで何度も繰り返し、やっと母親が冷蔵庫を開けると中に1本の緑の腕がゴソゴソ動いてキュウリを掴んでそのまま消えてしまうという比較的害のない物語が生成された。なぜ冷蔵庫に河童が?と不条理に思ったがそこはやはりAIらしい。

この話を確定させドキドキしていると階下から母の叫び声が上がった。

すぐに階段を駆け下り台所に行くと母が冷蔵庫の前でヘナヘナと腰が抜けたようになっている。

何があったかを聞くと案の定「緑色の腕が・・・中、冷蔵庫の中に・・・」と言うので開けてみるがそれらしきものは何もありません。

母には見間違いだろうと落ち着かせましたが、逆に僕はとんでもなく興奮していました。

間違いない。これは生成した話が現実化するAIなんだ。

僕はそれからこのAIに夢中になりました。

初めは些細な悪戯心で友人にちょっとした恐怖体験をプレゼントしたり、校内に七十不思議を浸透させようとしたりていましたが、次第に僕に酷い嫌がらせをするクラスの不良を恐怖のドン底に突き落とすなどこのAIを自分のために使えないか模索するようになりました。

いろいろ試しているとふと名案を思いつきました。

これさえあれば片思いしている結衣ちゃんと親密に、いや物語次第では付き合える可能性だってあるんじゃないか?

即座にAIにさまざまなキーワードを入れてAIを走らせる。

【〇〇(自分の名前) 結衣 放課後 二人】

【〇〇(自分の名前) 結衣 相談 秘密】

【〇〇(自分の名前) 結衣 自宅 プレゼント】

できるだけドラマが生まれそうなキーワードを入れてみましたが何しろ恐怖創作AIなので恋愛展開には全くつながらず、むしろトラウマや大惨事になりかねない駄作ばかりが延々と作られてきました。

そこで発想を変えて自分が結衣ちゃんのピンチを救う物語はどうかと思い

【〇〇(自分の名前) 結衣 放課後 二人 悪霊 助ける】

と入力してみた。

早速生成された物語を読んでみる。

なるほど、放課後にウィジャ盤で遊んでいた結衣ちゃんが誤って悪霊を呼び出してしまう話か。(なぜコックリさんでなくウィジャ盤?)

必死に悪霊に帰ってもらうように頼み込む結衣ちゃん。しかし悪霊は呼び出した代償に結衣ちゃんの魂を喰らおうとする。

そこで颯爽と悪霊と結衣ちゃんの間に割って入る僕。

悪霊の魔の手が僕の体に突き刺さりその場に倒れ込む僕。

悪霊は僕の魂で我慢すると言い残し霧散。

一人残される結衣ちゃんの目には涙。

・・・・・・これも失敗か。やり直しだな。

画面下にスクロールしやり直しを選択っと・・・あれ?

見慣れたやり直しボタンがそこにはなかった。

代わりに

「本日のご利用回数の上限に達しましたので自動的にこの物語で確定となります。ご利用誠にありがとうございました。」

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