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中編3
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異界駅

これは私が幼い頃に体験した話。

小学校に上がる前の話なので、記憶違いだったのか、夢だったのか、色々と考えたこともあったが、40歳になった今でも現実だったと思う。

私の地元に走る路線。

1両編成のワンマン電車。

上り下り合わせて1日10本あるだろうか。

始発駅と終点駅以外は全て無人駅の路線。

私の家の最寄駅も無人駅だった。

家の最寄駅から親戚の家の最寄駅まで向かう。

何度か電車で行ったことがあったので、片道の時間や途中の景色はなんとなく覚えている。

ただ、今回いつもと違うのは私1人だということ。

社会経験を積ませるためなのか親から「1人で行ってみな」と言われたのだ。

目的地である駅で親戚のおばさんが待っていてくれるとのことだ。

電車が来た。乗り込んで窓の外を見ていた。

その時、私は逆方面行の電車に乗ってしまった事に気付いていなかった。

しばらく電車は走る、途中で駅にも停車する。

電車が橋を渡って川を通り過ぎた時に気付く。

「あ、これ見たことない景色だ」と。

怖くなって次の駅で慌てて降りた。

木造の小屋のような小さな無人駅だった。

もちろん周りに人はおらず、静かな駅に切符の回収箱があるだけ。

昼間だったが、妙に薄暗く空が灰色のような色に見えたのを覚えている。

とにかく逆方面の電車に乗って戻らないと。

そう思って、その無人駅で電車を待つ。

しばらくすると、中学生くらいの女の子2人組が駅にやってきた。

今思い出せば双子かと間違うほど容姿が似ている2人だった。

その女の子が私に「何歳?」「どこ行くの?」と声を掛けてきた。

年齢と行き先を間違えて電車に乗ってしまったことを伝えると、女の子は「お腹すいてない?」とお菓子を鞄から出してくれた。

しかし、親から「知らない人から物をもらってはいけない」と言われていたのでお菓子は受け取らなかった。

駅の小屋内での沈黙が嫌で、少し外へ出てみた。

そこには《ひょうたん型の池》《S字に曲がった大きな木》《3体並んだお地蔵さん》があったことを覚えている。

すると逆方面行の電車がやってきた。

慌てて乗ったのだが、さっきの女子学生2人はホームまでは来たが電車には乗ろうとしない。

不思議そうに見ていたら、2人は声を揃えたかのように「気をつけてね」「もう来ちゃダメだよ」と真顔で言っていた。

その時、ホームにあった看板を見てこの駅の名前が【ゆりかわ】ということを知った。

ひらがなで書いてあったので読めたし、見間違いでもないと思う。

気付いたら電車で眠りこけており、目を覚ますと親戚の家の最寄駅にいた。

社内で爆睡していた私に親戚のおばさんが気付いて起こしてくれたのだ。

おばさんや親へ、ゆりかわ駅の話をしたが誰一人として信じてはくれず、更にその路線には【ゆりかわ駅】という駅は無かったのだ。

私が降りたゆりかわ駅、ひょうたん型の池、S字に曲がった大きな木、3体並んだお地蔵さん、出会った女子中学生2人組、あれは一体何だったんだろう。

夢でもなく、記憶違いでもないのは確か。

あのまま駅を離れてしまっていたら、私はどうなっていたのか。

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