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中編3
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515を見てしまった

皆さんは515を知っているだろうか。

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知らない方が"恐らく"幸せだ。知らなければそのままブラウザバッグ等でこのコンテンツに触れない事を推奨する。

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高校1年生の夏だっただろうか。

片田舎に住む僕は、土曜日の午前授業を終えて自転車を漕いでいた。

学校から家までチャリで20分ほどだ。日差しが肌をじっくりと焦がすように照りつける。空気抵抗を受け、自分の肌に熱風が纏わりつく。

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田んぼの中にポツンとある僕の家が数百メートル先からでもよく見える。土曜日の昼ご飯は決まって焼きそばだったから、しないはずの焼きそばのソースの香りが脳内で再生される。

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家の裏にチャリを置くと、裏口から部屋にはいる。

「ただいまー」

「・・・」

「ただいまー」

「・・・」

おかしい。ばあちゃんと母さんの声がしない。

田舎というのは音がない。

1人で家に居ると、世界に取り残されたような感覚に陥る。

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急に不安になった僕は、裏口から出て正門に回る。

遠くで自動車が走っているのを見つけて、少しだけ安堵した。

その時だった

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玄関に515はいた。

玄関にインクのボールを投げつけたように

大きい目玉が1つだけついた黒い物体がドアに張り付いている。その目玉は、死んだ魚のような、大きな目をしている。

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515を見てしまった。

それを悟った瞬間、太陽を直視した時のように目の前が強くひかり、僕が目を覆うと515は消えていた。

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家の正面玄関を避け、裏口に行くと焼きそばの匂いがした。おかしい。

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恐る恐る扉を開き、声をかける。

「ただいま...?」

「お帰りなさい、ちょうど出来たわよ。」

母が焼きそばを盛り付ける所だった。

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僕は今起きた事を言おうとして、口を開いたがやめた。

そのまま手を洗い、席に着いた。焼きそばはいつも通り美味しかった。

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僕がまだ小学生に上がる前、お爺ちゃんに515について教えて貰った記憶が蘇る。

呪いの類ではなかったはずだ。読み方も教わったが、忘れてしまった。確か「ういひつう」とか「うひつう」とかそんな名前だったと思う。

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515は、常に誰かを見ている。

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そして、"僕も常に515を見ている"

視界の端に映る黒い物体から、僕は逃げる事ができない。右を向いても、左を向いても上下左右に視線を動かしても、常に視界の端に存在する。

ただ、根本的に逃れる方法が一つだけある。それは誰かに515の存在を伝え、他の誰かが515を見る事だ。

515は誰かに認識される事でその姿を表すという。

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僕はじいちゃんからこの話を聞いた時、じいちゃんを恨んだ。何故僕に語ったのかはもうわからない。ただ、515は不幸を齎す神ではないのかもしれない。僕のじいちゃんは515を見たものの、長生きしたし、最後は家族の前で安らかに息を引き取った。

よく、天使は悪魔を萎縮させるために奇妙な姿をし、悪魔は人間に好かれるために妖美な姿をすると言う。

その理論だと、515は天使に分類されるだろう。

ただ一つ、僕が母にその出来事を語らなかったのは、僕の直感が母はダメだと反発したからである。

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515を見てしまった。

僕はこうやって大衆に広める事で、この視界に映る"何か"から逃れようとしている。

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・黒

・中心に大きな目玉

・手、足、口無し

・直径約2m

貴方が強くイメージすればするほど、僕としては都合が良い。

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貴方の元に515が現れる事を切に願う。

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