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中編5
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卒業旅行の記念写真

大学の卒業旅行でA子・B菜・C美・私の4人は自然豊かなS県へと行くことにした。

自然が好きな私たち4人は数ヶ月前から行くスポットを話し合ったりスイーツの話で盛り上がっていた。

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そして当日。

唯一免許を取っていた私は3人を乗せて車を走らせていた。

待ちに待った卒業旅行ということで会話も盛り上がり片道3時間の運転は全く苦にならなかった。

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現地に到着すると私たち4人は事前に決めていた観光スポットを順番に回ったり地元の郷土料理に舌鼓を打ちながら旅行を楽しんでいた。

その日はそのまま宿に1泊して、撮った写真を見ながら話に花を咲かせた。

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翌朝、朝食を済ませたあと私たちは本命である山の展望台へと行くことにした。

地元でも有名なその山は冬はスキー場になるということでロープウェイで頂上まで登る仕組みだ。

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頂上に着くと目の前に広がる壮大な景色に4人共目を輝かせた。

大学での日々の勉強や卒論に明け暮れていた私たちはその景色に心が洗われて行くのを感じた。

A子「みんなで写真撮ろ!」

満面の笑みでA子が3人に声をかける。

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近くにいた観光客のおじさんに写真をお願いすると、私たちは景色を背景に仲良く並んだ。

おじさんの掛け声を合図に4人でピースをする。

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その後景色を存分に楽しんだあと私たちはロープウェイを使って下山した。

1泊2日と短い旅行であったが目当ての景色も見れたことで4人共満足しながら帰路へとついた。

3人を順番に送り届けたあと、私は写真屋に寄って撮った写真の現像を依頼した。

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後日、できあがった写真を受け取りに写真屋へと向かった。

店主「お客さん。1枚だけ撮るの失敗してたよ。」

苦笑いをしながら店主が言う。

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私「え?ほんとですか?どの写真だろ」

私は首を傾げる。

店主「これだよ。4人で並んで写ってる写真。」

店主が1枚の写真を差し出した。

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その写真を見た瞬間、私は目を見開いた。

私「え、なんで…?」

本命である展望台での写真。

4人でピースをしながら撮っている写真だ。

間違いない。

しかし目の前の写真は明らかに違和感があった。

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A子、B菜、C美、私の順番で並んでいるその写真。

C美以外の3人がピースをしたままC美に向かって顔を横に向けていた。

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おかしい。

たまたまC美の方を向いてしまったのだろうか?

いや、確かにあのときおじさんの掛け声と一緒に全員カメラを見て撮ったはずだ。

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4人で撮った他の写真も見てみたがそれ以外はちゃんと正面を向いている。

私はお会計を済ますと写真を持って家に帰った。

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家に帰って見直したがやはり3人共C美に顔を向けている。

1番の違和感はその表情だ。

C美の笑顔に対して他3人は皆無表情だった。

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携帯が鳴る。A子からだ。

私「もしもし?」

A子「○○?どうしよう…。」

A子は涙声だった。

私「A子?どうしたの?」

私は戸惑いながら問いかける。

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電話先から聞こえるA子の嗚咽。

しばらくして落ち着いたのかA子がゆっくりと話す。

A子「C美が亡くなったの…」

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私「嘘…。」

突然のことに目の前が揺れる。

こないだまで一緒に旅行に行っていたC美が亡くなった。

初めて経験する友人の死に頭が追いつかなかった。

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事故だった。

ハンドルを誤ったトラックと電柱に挟まれて即死だったそうだ。

C美の遺体は損傷が激しく、最後に見送ってあげることもできなかった。

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葬儀が終わり、A子、B菜、私の3人は寄り添って泣いていた。

特にC美と仲が良かったB菜は過呼吸になり救急車を呼ぶ事態となった。

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A子「どうしてC美だけこんなことに…」

顔を手で覆いながらA子が呟く。

もう二度とC美に会えない。

どうしてC美だけ…。

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私「C美だけ…?」

そのとき私はあの写真のことを思い出した。

C美だけが正面を向いていたあの写真。

私「まさか…?」

私の背中に冷たいものが流れる。

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その後、A子を家まで送り届けると私は家に入り自室へと向かった。

あの写真を確認するために。

写真をしまっている引き出しを開けて手に取ったとき。母が部屋に入ってきた。

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母「○○。落ち着いて聞いて。」

険しい顔で母が言う。

母「B菜ちゃん。搬送中に亡くなったそうよ。」

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意識が遠のきそうだった。

母はその後も何か言っていたがよく聞き取れない。

ドアを閉めて母が下へ降りた後、ぼんやりとしながら手元の写真へと目を移らせた。

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絶句した。

C美が消えていた。

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それだけではない。

今度はB菜以外のA子と私がB菜に向けて顔を横に向けていた。

ピースを作ったまま、笑顔のB菜とは反対の無表情で。

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B菜の葬儀が終わった。

短期間で親友を2人亡くした私とA子は震えていた。

A子「ねぇ…もしかしてだけどさ…」

怯えた表情でA子が呟いた

A子「次はどっちかの番…?」

思い当たる節がある私は何も言えずにいた。

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駐車場までの道のりを歩きながら私はあの写真の話をするか迷っていた。

私は写真を取り出すためにバッグに手を入れた。

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横断歩道を渡ろうとしたときだった。

数歩先を歩いてたA子が突然消えた。

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目の前を横切る轟音と風に思わず目を閉じる。

突然の出来事に理解が追いつかないまま目を開けると、数十メートル先にA子が倒れていた。

信号無視の車にはねられたのだ。

私「A子!!!」

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血溜まりに横たわるA子に私は駆け寄った。

A子を抱き上げるもめちゃくちゃに曲がった手足に力なく垂れ下がる首はもう助からないことを意味していた。

私は救急車を呼ぼうとバッグに手を入れ、携帯を取り出そうとした。

それと同時に1枚の写真が地面へと落ちた。

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あの写真だ。

嫌な予感がして、拾い上げて写真を見る。

B菜とC美が消えていた。

そして笑顔のA子に私が無表情で顔を横に向けている。

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その後は良く覚えていない。気づいたら家に帰っていた。

A子は病院へ搬送されるも亡くなったそうだ。

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やはりあの写真が原因だったんだ。

私だけが生き残ってしまった。

しかし何故だろうか。死ぬのが自分じゃなくてよかったと安心している自分がいる。

そんなことを考えていると死んでしまった3人に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

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A子の葬儀が終わり、家へと帰る。

きっとあの写真は呪われている。

私はお祓いをしてもらおうと写真を持って近くの神社へと車を走らせた。

信号で止まり写真に目を向ける。

変わらず笑顔のA子を私が無表情で見ている。

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信号が変わったのを見てアクセルを踏んだ。

何気なくもう一度写真に目を向けた。

私は凍りついた。

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笑顔の私に向かって消えたはずのB菜とC美、そしてA子が無表情で顔を向けていた。

目の前からクラクションが聞こえた。

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