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「あいうえお怪談」 第1章 「あ行・あ&い」    第5話「アパートにまつわる怖い話」

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「あいうえお怪談」 第1章 「あ行・あ&い」    第5話「アパートにまつわる怖い話」

「あいうえお怪談」

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第1章 「あ行・あ&い」

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第5話「アパートにまつわる怖い話」

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「一番怖いのは誰?」

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昨日、投稿した第4話とは趣が異なるが、以前、行きつけのコインランドリーで出会った若い男性から聞いた話が、興味深かったのでアップしたい。

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アパートにまつわる怖い話は、枚挙にいとまがないが、どう解釈していいのか理解に苦しむ、奇妙奇天烈な不思議な話としてお読みいただけたら嬉しい。

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では、あいうえお怪談「あ&い」をお楽しみください。

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第5話

「一番怖いのは誰」

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新入社員のNさんは、社外研修の一環として、同系列のS社◯△支店に配属となった。

研修期間は、3ヶ月。会社借り上げのアパートに住むことになったNさんは、初めての土地、慣れない営業の仕事に翻弄され、アパートに帰る時刻は、深夜0時過ぎてしまう。

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シャワーで汗を流し、缶ビールを飲み干すと、その場で寝落ちするような日々が続いていた。

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Nさんの部屋は、築5年に満たない1LKの単身者用アパートの2階の3号室。

隣室にどんな人が住んでいるのか知る由もないが、ある日を境に、妙に気になるようになったのだという。

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苦手な顧客廻りを翌日に控え、なかなか寝付けなかったNさんの耳に、

カチャ

隣室のドアが開く音が聞こえてきた。

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スマホで時間を確認すると、深夜2時を少し回っている。

バタン 

とドアがしまり、足音は、Nさんの部屋の前を通り過ぎ、階段へと向かう。

トン タン トン タン

やがて、階段を降り、遠ざかる足音が辺りに響く。

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今から仕事?それとも、腹が減って近くのコンビニに食い物でも買いに行ったのかな。

深夜勤務なら、警備員か。

ご苦労さまだな。

俺なんか、恵まれている方なのかもしれない。

そう言い聞かせ、目を瞑った。

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程なく、眠りについたNさんの耳に、

トン タン トン タン

階段を上がり、Nさんの部屋の前を通り過ぎる小さな足音が聞こえてきた。

薄目を開けて、手にしたスマホは、4時4分と表示されていた。

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カチャ

キ~ィィ

バタン

ドアが閉まる音とともに、隣室は、静かになった。

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出かけていったのが、午前2時過ぎ。

帰宅は、4時4分。約2時間余の間、隣人は、何をしていたのだろう。

コンビニに買い出しに行くには、長すぎる。

かといって、深夜勤の仕事にしては、パート勤務だとしても短すぎやしないか。

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トン タン トン タン

という独特の足音や、丑三つ時にアパートを出入りする隣室の住人の事が気になって頭から離れなくなったらしい。

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それから、眠りに就くことなく朝を迎えてしまったNさんは、引っ越しの挨拶回りしていなかったことに気づく。

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引っ越しの挨拶がてら、隣室にどんな人が住んでいるのか確かめてみようと思い立ったNさんは、早速、翌週の日曜日。地元の有名菓子店から、手頃な菓子折りを購入し、いさんで同アパートに挨拶廻りをした。

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ところが、最も会いたい隣室の4号室だけが、ドアのチャイムを何度か押してみても、時間を置いて数回訪れてみても、不在なのか、寝ているのか一向に出る気配がない。

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仕方なく、Nさんは、先程訪問したばかりの2号室の住人に、聞いてみることにした。

2号室に住んでいるのは、小太りの風采の上がらない40代前半くらいの男性だった。

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自分は、単身赴任でここに引っ越してから約1年になるが、4号室の住人とは、一度も会ったことがない。ずっと、空き室だと思っていた。とのことだった。

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あぁ、そういえば。

2号室の男は、帰ろうとするNさんを引き止めるかのような口ぶりで、ニヤニヤしながら話しかけてきたという。

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「まぁ、戯言だと聞いてくれて構わないのですが。」

と切り出した話に、Nさんは、鳥肌が立ったという。

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「赴任してきてすぐ、妻が息子を連れてここを訪ねてきたことがあったんですが。深夜、この階を歩き回る足音が明け方まで聞こえて眠れなかったというんですよ。」

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「妻の話ではね。ドアが開く音がしたかと思うと、

トン タン トン タン

と遠ざかる足音が階下まで響いて、小一時間もしないうちに、また、

トン タン トン タン

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と遠くから足音が近づいて来て・・・部屋の前を通り過ぎたかと思うと、パタン

とドアが閉まる音がして・・・を数回繰り返したって言うんです。」

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「息子は息子で、窓の外を『男の人が歩いている』って言うし。」

「おまえ、ここは、2階だぞ、人が歩いているわけないだろうって言って叱りつけてやったんですが。」

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困惑し、先日の出来事を思い起こし、立ちすくむNさんを前に、

「まぁ、俺には、全く聞こえないし。そもそも、一度床についたら朝までぐっすりなんでね。別に、実害はないんで。」

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男は、ニッコリと微笑むと、わざと、ゆっくりとドアを閉めた。

Nさんは、すぐにその場を立ち去りたかったが、なぜか、金縛りにあったように動けなかったらしい。

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すぅううう

風に押し戻されるかのように、ゆっくりと閉まるドアから ゴミ屋敷同然の男の部屋が垣間見えた。

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うず高く積まれたゴミの山の先に、大きな家具のようなものがあった。

それが、仏壇だと気づいたNさんは、思わず叫び声をあげてしまった。

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「それがですね・・・」

仏壇の上には、大小の位牌がふたつ 寄り添うように置かれていたという。

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「翌日、本社に頼み込んで、早々に別のアパートに引っ越しましたよ。」

Nさんは、乾燥機から山盛りになった洗濯物を取り出すと、大きな紙袋に、ほうり投げるように突っ込んだ。

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「おばさん、この話・・・やばくないないですか。聞いてしまったからには、呪われないように気をつけてくださいね。」

Nさんは、そう言い残し、大きな袋を手に、黄昏の街へと消えていった。

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すみません。
相変わらず、誤字脱字、変換ミスが多く、若干手直しさせていただき、再アップいたしました。
それでも、軽微なミスや、表現技法の誤り等、気づかずにいるところがあるかと存じますが、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。

明日は、次回作に向けての諸準備及び本企画とは別に執筆途中の作品完成のために、お休みとさせていただきたく存じます。
って、誰も気にしてませんよね。(^_^;)

2012年12月12日が、私の初作品の投稿日でした。
丸10周年を記念して、12日は、久しぶりに長編作品をアップいたしますので、ご笑覧いただけましたら幸に存じます。
ではでは、この辺で。失礼いたします。

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