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行きは怖いし帰りも怖い 〜帰路編・トンネル〜

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行きは怖いし帰りも怖い 〜帰路編・トンネル〜

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先輩が家に入っていくのを見届けたあと

帰り道のことを考えた。

既にとても憂鬱な気分になっていたが

後部座席で寝ている同僚(以下:A)を無事に送り届けなければならない。

途中から使えなくなっていた

携帯のナビは

いつの間にか正常に起動していた。

通りたくないのはダムと霊園とトンネル。

それらから外れているルートをナビで設定した。

トンネルだけには入りたくなかった。

事故が多い場所で、何かしら"でる"と親しい人から聞いていた場所だったから。

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出発してから少し不安だったものの

先輩から借りた数珠のおかげもあってか

思いのほか順調に進み

途中から少し余裕も出てきて

好きな音楽をかけたりしていた

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違和感を覚えたのは右カーブに入った時。

お地蔵さまと電信柱と右カーブになっている道…

さっきも通らなかったか?

と思いながら道なりに車を走らせる。

右カーブを進むと

お地蔵様が見えてくる。

その横に電信柱。

右カーブ。

この繰り返し。

気付けば、圏外表示は出ていないのに

ナビはフリーズしていた。

道路の脇に車を止め

親しい先輩(以下:Kさん)に電話をかけた。

すでに時刻は0時を過ぎていたが

Kさんは電話に出てくれた

事情を説明し

電話で国道まで誘導してもらうことになった

携帯で電話しながら運転するのは違反だということは百も承知だったが、背に腹は変えられない。

大体の場所を説明し

kさんに携帯のナビで調べてもらうと

今いる場所から国道まででるのには

通りたくなかったルートを通るのが

1番早く国道に抜けられるとKさんに言われ

いい加減、早く帰りたかった私は

もう、そのルートで誘導してもらうことにした。

疲れていて思考もかなり鈍っていたと思う。

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出発してすぐ

なぜか右カーブのループから抜け出せた

ある程度進むと

霧がようやく晴れ

視界が良くなったと思ったら

外灯に照らされた

霊園の入り口が見えて

車内の空気が低くなった

あとから考えてみても

車のエアコンのせいではなかったように思う

霊園を過ぎ

カーブを進むと

トンネルが視界に入った

途端に

あぁ、トンネルに入りたくない

できればこのまま引き返して

遅くなっても構わないから

違うルートで帰りたい

と思ったが

今更引き返せない。

スピードを上げて早くトンネルから出ようと思い

アクセルを踏みこんだが速度は上がらなかった。

どんなに踏み込んでも50キロ以上はでず、

後ろから車が来たら煽られるかもしれないと

いらぬ心配をしてバックミラーを見ると

センターライン上に黒いのがいた。

最初、大型犬だと思った。

でも、明らかに動物の動きとは違うし

異常に速い。

50キロで走っている車にどんどん近づいてくる

目が離せなくなり

じっとバックミラーを見ていると

ソレが人であることに気づいた

shake

毛が長いと思ったのは真っ黒い髪の毛で

さっきの落ち武者がついてきたのかと思ったが

違った

白い服を着た細身の女が4本足?で犬のように

車の方へ走ってくる。

追いつかれてしまうことに恐怖を覚え

アクセルを思いっきり踏んだが

速度は上がらなかった

ヤバイ、これはヤバイ。

怖い。どうしたらいい?

現状を確認するため

再びバックミラーを見ると

ソレはいなかった。

いない、けど、

存在が見えないだけでいるかもしれない。

油断はできない

運転に集中しなければ

事故る。

そんなに長いトンネルではないはずなのに

速度が上がらないせいで長く感じ

気だけが焦る

あともう少しでトンネルから出られると言う時に

やはり

ソレは出てきた。

視力が良い自分を初めて恨めしく思った

だってトンネルの壁の側面に張り付いて

首をありえない角度に曲げて目を大きく見開き

長い舌を出してこっちを見ながら

出口の方に移動してるんだ

速度は車とほぼ同じ。

というか

わざと車に合わせているように思えた。

車が出口を通過するタイミングで

ソレが天井から落下してきたら確実に事故る。

今から引き返しても意味はない

Kさんに伝えると

大丈夫だからアクセル踏み続けろ、と言われた。

何を根拠にそんなことを言うのか

と思ったが

とりあえず踏み続け

出口に差し掛かる瞬間

一気にスピードがあがり

通り抜けた

トンネルをでると直線が続くので助かった。

カーブだったら曲がりきれなかったと思う。

トンネルの出口付近で

車の天井からドン!!!

と明らかに落ちてきた音がしたが

とにかくトンネルから距離を起きたい一心で

制限速度お構いなしに運転を続けた。

その後は無事に国道に出れたので

Kさんにお礼を言って電話を切った。

切り際に

「おつかれ。気をつけて帰れよー」と言ってくれて嬉しかった。

後部座席のAは最後までぐっすり寝ており、

A の自宅についた後

心霊好きなAになぜ起こしてくれなかったのか問われたが

それどころではなかったし寝ていて正解だったと懇懇と説明してとても疲れた。

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後日、お礼も兼ねてKさんと食事に行った。

事情を説明した時点で察してくれたKさんには感謝しかない。

Kさん曰く

トンネルで見たソレは

「トンネルから出られないようだ」

とのこと。

1度、Kさんは友人達と肝試しに行ったときボンネットに落ちてきたことがあったが、トンネルの外にはついてこなかったと言われた。

(ちなみに、帰ってからボンネットを確認したらヘコミも傷もなかったそうだが、私の車の天井にはうっすらと丸いヘコミがあった。)

それともう一つ、

Aの自宅に着いた時に気づいたのだが

先輩から借りていた数珠は糸が切れてバラバラになってしまっていた。

弁償すると伝えたが

「別にいいよ。事故らず、無事に帰れて良かった」と言ってくれた。

その後、

あの場所を通った事はない。

でも、きっといまだにソレはいると思う。

あの時、Uターンしていたら

事故っていたかもしれない。

入ってきた方はカーブになっていたから

曲がりきれなかったと思う。

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