行きは怖いし帰りも怖い 〜往路編・赤い顔〜

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行きは怖いし帰りも怖い 〜往路編・赤い顔〜

当時の職場の飲み会終わり。

「ねぇ、誰か送っていくならついでに俺も送ってくんない?」

と先輩に話しかけられた。

酒が呑めない私は送迎を頼まれることが多く

その日も事前に仲の良い同僚(以下・A)から

送迎を頼まれていた。

先輩の家はAの家と同じ方向だったし

日頃お世話になっていた為

送っていくことにした。

ただ、

同じ方向とわかっているだけで

私もAも先輩の家の場所を知らなかったので

先輩に道案内を頼んで助手席に座ってもらった。 

(Aはいつも後部座席で寝落ち)

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先輩の家は山を切り崩してできた住宅地で

住宅地に行くまでのルートがいつくかあった。

一番通りたくないルートはダム近くを通るルート

その地域の人たちは霊が出ると知っている場所である。

絶対に避けたい道だったので

先輩にも出発前にそのルートだけは避けてほしいと伝えたが

「うんうん。わかったよー」

と携帯を見ながら適当に返事をされ

この時点で少し不安になった。

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雨と霧のせいで視界が悪かったが

順調に先輩の家に近づいていた。

しかし

ある所から行き詰まり始める。

先輩が道を間違えることが多くなったのだ。

「あ、ここ曲がって」

「ごめん間違た。戻ってー」

「え、まって。こっちじゃなかったかも」

「ねぇやっぱさっきの道の方に戻って」

と、ありえないくらいに道を間違える

当時乗っていたスズキの軽にナビは無かったし

出発前に保険のために起動させていたガラ携のナビは、いつの間にか同じ場所で動いておらず、使い物にならなかった。

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何回目かの「今の道戻ってー」の指示が入り

さすがにイライラしながら

方向転換しようと

ブレーキを踏みギアをバックに入れ

後方を確認しようとした際

ソレは見えた。

一瞬視界に入っただけだったが

ソレが顔で髪が長い事はわかった。

運転席側の窓端にはりついる感じ。

ブワッと全身に鳥肌が立ち

直感的に

これは二度見しちゃいけないやつだ

と即座に切り替えして指示された道を進んだ

顔が見えたあと

さっきまでご機嫌で歌をうたったり

ペラペラと他愛のない話をしていた先輩が

いきなり無言になって

じっと助手席側の窓の方を見ていた

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道案内以外の会話はなくなり

みょうな沈黙が流れる中

車を走らせ

ようやく先輩の自宅に到着した。

一安心してタバコに火をつけた私に

すっかり酔いが覚めた様子の先輩が

「ねぇ、さっきの見た?」

と同じくタバコに火をつけながら

話しかけてきた

その質問が怖かったから

私は怖さを振り切るように明るく

「あーあの髪の長い女の人ですか?」

「なんかブレーキランプのせいで赤かったですね」

とかいろいろ答えたら

落ち着いた声で

「俺も一瞬、女の人かと思ったけど

アレは血だらけの落ち武者だったよ。運転席の方をジッと見てた」

と言われ

「迷い始めたあたりからオーヴもめっちゃ飛んでたし。ダムの道じゃない方に誘導してたのにいつの間にかそっちの道に進むようになっててヤバイなって途中から思ってた」

とのこと。

なるほど

なんか白いの見えるなと思ってたのはオーヴで

髪が長く見えたから女の人だと思ったけど

落ち武者だったから髷(まげ)がとれたせいで髪が長かったんだ。

赤く見えたのはブレーキランプのせいじゃなくて血だらけだったからか。

と納得したが再び鳥肌がやばかった。

「最初は運転席側だったけど、さっきまで俺の方の窓にいたんだ。坂の下まではついてきてたけど、今は坂の下にもいない。どっか行った。気をつけて帰って。あとこれは全宗派に使える数珠だから大丈夫。」と

タバコを吸い終えた先輩は

カバンから数珠を取り出し私の腕にかけ

しっかり清め塩をしてから自宅に入っていった。

残された私は無事に帰れるのか不安だったが

先輩に感謝しつつ

幸い、携帯のナビは使えるようになっていたので目的地を設定し帰路についた。

後部座席のAは相変わらず規則正しい寝息を立てぐっすりと寝ていた。

〜帰路編に続く〜

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