Google Mapには実際のその場所を写真で確認することができるストリートビューという機能がありますよね。
あれは実際にカメラを積んだ車が道を走りながら写真を撮っていてそれがアップロードされているようです。
昨年ロードバイクを購入して近場はかなり走ったので最近は輪行と言って自転車をバッグに入れて電車移動して遠方のエリアでサイクリングするのにハマっています。
ただやはり遠方のエリアだと道の様子がわからず不安なのでGoogle Mapのこの機能は大変便利でよく使っています。
しかし山間などの道を調べているとたまに変なものがストリートビューに写っているのを見つけることがありこれがなんなのか謎なのです。
初めてそれに気づいたのはK県の海沿いの道のトンネルのそばでした。
道路の脇に人のものとしか思えない本人不在の影だけがあるのです。
影のような黒いものが立っているわけではなく、まるでPhotoshopで元々いた人物だけを消したかのように影だけが地面に伸びているのです。
また影の伸びている方向は他の普通の影と一致していました。
あまりに不思議なのでアップにして良く観察しましたが影なので性別や年齢など細かいことまではわかりません。
ですが手足の位置から人が歩いている瞬間を切り取った影であるように思えました。
さらに視点をその道から数m先に進んだり戻したりしてその位置から影のあった場所を振り返ってもその影は確認できませんでした。
この時はGoogle側で不適切な人物(半裸で歩き回ってる人とか?)を自動的に削除しているのかなと思いましたが検索してもそのような事実は見当たりませんでした。
その時は不思議なこともあるものだと思う程度でしたがその後も稀に本人不在の影をストリートビュー上で見かけることがありました。
現れる場所に規則性などは見つけることはできませんでしたが影はどれも一様に歩いているように見えます。
一体こいつらはどこに向かって歩いているのかと想像が掻き立てられますが特に面白い仮説も思いつきません。
ある休日に輪行でK県の山道をいつものように走っていました。
その日はヒルクライムと言って比較的斜度の急な登り坂を攻略するコースを楽しんでいました。
山道のカーブを曲がり終えると視界が一気に開けます。しかし妙にその景色になんとなく見覚えがあります。
走りながら少考したところ今回のサイクリングの準備のために道を調べているときにあの影がいた場所の付近だと気づきました。
もしかしたら何かわかるかもしれないぞと思い記憶を頼りに影があった場所で自転車を止めます。
影があったと思われる周囲を丁寧に見渡してみますがそこに影は文字通り影も形もありません。
よくオカルト界隈では霊的な場所では冷気を感じると聞きますが初夏のサイクリング中ですのでむしろひたすら暑い。
まあそりゃそうだよなと一人呟きながら早々にその場を後にしました。
帰宅後ふと影のあった場所について記憶違いがあったのではと思い件の場所を再度ストリートビューで見てみました。
しかしつい先日ははっきりと写っていたはずのあの影はまったく見つかりません。
もちろん記憶頼りなので全然違う場所を探している可能性もあるのですが記憶力にはそこそこ自信があります。
景色や生えている樹木、道路標識など記憶と一致しているはずです。なのに影はどこにもありません。
おかしいなと思いましたが数週間前の記憶であることを考えるとやはり単に記憶違いなのかと自分を納得させるしかありませんでした。
その後も相変わらず下調べでストリートビューをよく使いますがやはり影はたまに現れます。
しかし慣れのせいかすでにそのことに疑問を持たないようになっていました。
ある日今回は東北地方でも攻めてみるかーと思いながらストリートビューを調べていると、クリック操作を誤ってしまい表示場所がいきなり現在地、つまり私の自宅付近に飛んでしまいました。
その時魔が差したというかほぼ無意識で自宅周辺をストリートビューモードで見てみました。
まずは自宅から500mほど離れたスーパーの前の通りに視点を持っていきます。
誰か近隣の知り合いでも写ってないかなといたずら心で覗き見してしまいました。
スーパーの脇の道路からスーパーの方を見てみます。
しかし特に面白いものは見つかりませんでした。仕方なしに視線を90度ずらして自宅の方に進んでみようとしたところ道の脇にあの影がいました。
人がいるような場所であの影を見たのは初めてでした。
お、こんな近くにも出るのかと思ったのも束の間、数m先にももう1体の影がいました。
こんな近距離に複数体の影が現れたのも初めてです。
興奮と恐怖がないまぜになった感じで少し心臓が速くなります。
クリックを続けて自宅へと進んでいきます。
途中無数の影が嫌でも目に入ります。
そしてとうとう自宅まであと数10m、この角を曲がれば自宅が見えるというところまで来ました。
あと少し指を押し込めば自宅前が見えます。
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逡巡し私は無言でページを閉じました。
きっと見なければよかったと思うことになるに違いない。それは推測よりも確信に近いものです。
その日以来ストリートビューを使うことはなくなりました。
確かに不便ですか見てはいけないものをわざわざ見る必要はありません。
私はギリギリで踏み止まりました。
これを読んでくれた方の中にはストリートビューで影を探そうとする方もいらっしゃるかもしれませんが正直おすすめはしません。
あいつらは歩いてどこにでも来れる可能性があるのですから。
作者礎吽亭雁鵜