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仕事を終え、疲れた体を無理矢理押しながら家に帰っていると、小さな街灯の下に見慣れない格好をした人が椅子に腰かけていた。フードをかぶっていたので、顔はよく見えなかったが、絨毯のような布の上に水晶やタロットカードなどの占いの道具がいくつか置いてあったので、きっと占い師だろうと思い、
声をかけた。
「すいません、占い師ですか?」
「ええ、そうですよ。」
「ちょっと占ってほしいんですけど。」
「何を占いましょうか?」
「最近、あまり楽しいことがなくて、このままで本当にいいのかなって不安なんです。
なので、この先、私がどのような人生を送ったらいいのかを占ってほしいです。」
「わかりました。では、水晶を見てみましょう。」
「・・・どうですか?何か見えましたか?」
「ええ、見えましたよ。あなたには、明るい未来が待っています。」
「本当ですか!」
「ええ。何も難しいことをしなくてよいのです。ただただまっすぐ己の人生を歩みなさい。」
「ありがとうございます!おかげですっきりしました!」
「それはよかったです。あと、これを差し上げます。」
そう言うと、占い師は小さな巾着袋を渡した。
「明るい未来に行きついたら、その中身を開けてください。」
「わかりました。あの、お代は?」
「いりません。さあ、明るい未来へ進みなさい。」
「はい!」
ーー翌日ーー
「次のニュースです。○○市○○町の道路で、会社員の男性が走行中のトラックに轢かれ、死亡しました。トラックの運転手はそのまま逃走しており、警察が行方を追っています。」
作者Rito-imikowa
「明るい未来」=天国
「小さな巾着袋」=六文銭(三途の川の渡し船に使う)