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中編4
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八月の月光

この猛暑な今よりもまだマシな暑さの夏の頃でした。

中学生の頃からの同級生の女の子と高校生の時に付き合う事になり、それはもう私は大喜びしたものです、初めての彼女ですから浮かれてしまうのも無理はないですよね。

彼女は物静かな人で読書が趣味で本屋さんや図書館に行ったりしそれから2人でご飯を食べに行ったりしました。

「ここの料理おいしいね。」

「だね、この後どうしよっか」

「まかせるよ」

そういった他愛のない会話をよくしたりしました。

高校を卒業する頃には私は家庭の都合もあり働きに社会に出て、彼女は進学する事になってしまいお互いあまり時間が取れないようになったり会うことも少なくなりましたがお互い恋愛は続けました。

なかでも二人で毎年ある八月の地元の花火は良く見に行って手を繋いで眺めたのは今でも彼女と見たあの打ち上げ花火の光は瞼の裏に脳裏に焼きついたように覚えています。

数年後の事ですが、彼女は失踪しました。理由は未だよく分かっていません。

私や彼女の家族も探したり警察に行方不明届を出して捜索もしてもらいましたが見つからず。

やがて捜索は打ち切られました。

それから何年も何年も…。

何年も経ちましたが彼女は帰ってきませんでした。

生きているのかもういないのかわかりませんが生きてるなら連絡ぐらいはせめてほしいと願い続けましたが叶わずで、それからの自分の人生灰色のようなセピアのような世界になっていました。

ある八月の日のことです。

私は仕事が休みだったので木々が生い茂り、地面は舗装された道ではなく、離れた県の山の中を歩いていました。

なぜここにきたかは改めて考えてみてもわかりませんがスマホの画面で時間をみようとすると夕方になっていました。

気がつくと、日が落ちて夜が空を覆い満月の光だけが差すこの街灯もない道をただあるいてました。

仕事でよく夜遅くに帰ったりしていたせいか幸いにもライトを常備していたので道を照らしながら歩いていると少し離れたところに女性でしょうか?それらしいのが見えました。しかも、こっちを見ているような。

私は何かあったのかと近づいて声をかけようとして違和感を感じました。

話かけても後ろ姿のままなのです。

何度か話かけましたがその女性は返事をしてくれませんでした。

何度かそうしているうちに私は苛立ちを覚えたのもあり諦めて帰る事にしました。

知らないところだったのですが、なんとかスマホのナビを使い帰れました。

その日は、家に着くと疲れもありそのままぐっすり眠ってしまいました。

翌日、仕事から帰るとビールとおつまみを楽しんだ後、いつもよりすぐに布団に入ってしまいました。

しばらくうとうとしていると夢でしょうか?あの山にいた顔を合わせない後ろ姿の彼女が夢に現れました。

後ろ姿で何か言っているのですがよくわからずで問いかけるも反応はなく気がつくと夢から覚めて朝になっていました。

二、三日でしょうか、それが続きましたがそのあとは見なくなり普段の日常に戻りました。

さらに何日かしてふと気がついたのですが、あの女性の着ていた服どこかで見たような既視感があるような、と私は考えこみました。

次の休日に私は再びあの山のあの場所に行き周辺も探しましたが彼女はいませんでした。

一度降りてはまた夕日が沈む頃にも行きましたがいませんでした。

それから一年後の八月頭のことです。

夢に彼女がまた現れました。

相変わらず何を言っているかわかりませんでしたが何かを伝えたいのかと思いました。

その週の休日に私はあの山に行きましたが彼女はおらず。

そういえば、夜だったなと私は時間を潰したあと夜まで待ちました。

街灯もない舗装されてない道でしたが今日は満月で月だったのか月の光が山道を照らしていて歩けはしました。

どれくらい歩いたでしょうか、膝に手を置きため息を出して前を見たら彼女はいました。

月の光が彼女を照らしていてどこか美しくて私は見入ってしまいました。

しばらくして私は後ろ姿の彼女に近づき抱きしめていました。

その身体は冷たくも暖かいようなそんなかんじに思えました。

…私はいつのまにか気づいていたようです、彼女が何年も前にいなくなったあの子だという事に。

彼女の身体に回した片腕に水があたるような感触がして私はもっと抱きしめました。

目が熱い感触に気づき私自身も涙を溢していたようです。

私は彼女にいっぱい話かけました。

いままでのこと、君がいなくなって辛かったこと、再び会えて嬉しかったことを。

すると彼女はとある方角を指差しました。

その先はすぐわかりました。谷でした。

月の光で下が見えるくらいの深さでライトも使い目を凝らしてみると人の頭や身体の骨が2人分ありました。

片方は服も当時のままの彼女でした。

もうひとつは男のようでした。

振り返ると彼女はいなくなっていました。

私は警察に連絡し事情聴取を受け現れた彼女の事をぼかして説明して問題ないと思われたのかすぐに解放されました。

後日分かったのですが、彼女は何のゆかりもない男に拉致され女性としての尊厳を汚されそうになり揉み合いになり2人とも谷に落ちたようです。

私は泣きました。

寂しさと怒りと悔しさとで頭がおかしくなりそうです。

ええ、そうですとも。私は彼女に未だ未練があるのでしょう。

でも、やっと再会したのに彼女は亡くなっていて悲しみに暮れる日々が続きました。

それでも、それでも嬉しいこともありました。

満月の夜には彼女が私のそばにいてくれるのです。

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