中編4
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公園の兄ちゃん

私の地元には、あまり大きくない公園がある。

放課後にこの公園で友達と遊びたいってずっと思ってたけど

母が私を児童保育に預けたもんで

小学三年生の頃まではその公園を使ったことがなかった。

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小学四年生になって

「やっと放課後遊べるから!」と近所の友達を誘った。

その日の放課後は、早速双子の友達と遊んだ。

私と双子、3人でボール遊びをしていた時だった。

作業服を着た男の人が公園の隅を歩いていることに気づいた。

すかさず私が「こんにちは」と挨拶をしたが、双子からは

「私ちゃん、誰に言ったの?」と言われてしまった。

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その後作業服の人はすぐ見えなくなったし

「人が通った気がしたけど!気のせいかね!」と

その時は特に気にせずすぐ遊びに戻った。

ちなみにその作業着の男性の姿は、絵心がないから

描くことは出来ないけどはっきり覚えてる。

落ち込んだ様子で、足は引きずるように歩いていた。

顔は見えないけどそんな年老いた感じではなかったのを覚えてる。

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公園での遊びが楽しかった私は、また双子の友達を誘ったのだが

この双子はバレー部であり、その日は遊べないと断られてしまった。

今日は家で過ごそうかな。と思いながら1人で学校から帰っていた。

例の公園は通学路の途中にある。

通り過ぎようとしたところだった。

「公園で遊ぶ?」

若い男性の声が聞こえたんだ。

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顔を上げると、

作業服を着た若いお兄さん(20歳前後?)が公園の階段に腰掛けている。

優しそうな人だった。

「遊びたいけど、宿題が終わらないと遊べない」

私がそう言うと

「じゃあ宿題終わったらおいでよ。俺よくここにいるんだ。仲良くしてね」

と言われた。

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普通に今思えば不審者なんだけど、当時の私は友達ができたのが嬉しくて

急いで宿題を終わらせて公園に行ったんだよね…

お兄さんは、基本的に「学校どう?」などの話が多く、

運動が苦手な私にとっては最高の友達だった。

お兄さんに会うために公園に行くことも増えたのだが、

普段から公園にいる機会が増えたおかげか

下級生とも仲良くなることが出来てた。

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そのお兄さんは毎日いる訳ではなく、

頻度的には週に3回くらいしか見なかったと思う。(土日は遊んでない)

やっぱり、大人が怖いのか、お兄さんと遊ばない、話さない人も数人いた。

お兄さんと遊ぶ子は少ししかいなかったんよね

そりゃ、公園に入り浸ってる成人男性?は怖いかもしれないけれど…

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鬼ごっこをしたり、学校であった話を聞いてくれたりしていたお兄さんだけど

5年生になるまでのうちに少しずつ会う機会が減ってきていた。

ていうか見かけなくなった。

もういなくなっちゃったのかな、会えなくなっちゃったのかなと寂しく感じた。

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小学六年生になった時。

正直そのお兄さんのことを忘れかけていた時

その頃にはバレー部双子以外の友達もできていて

公園では遊ばなくなってきてたんだけど

友達とどうしても都合がつかない日があった。

こんな日は公園にいる下級生たちと遊んでいたんだけど

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公園に行こうとしてたら

超久々に!そのお兄さんがいた。

でも公園ではなく、公園のすぐ近くにある民家の玄関だった。

「久しぶり。元気してたか?」とお兄さんが話しかけてくる。

「久しぶり!元気だよ。ここに住んでるの?」

と聞くと

「あぁ…そうだよ。」とこの日は元気なく返事をしてきた。

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この日はあまりお兄さんが元気そうではなく、ただ話すだけだったんやけど

私の元に下級生が数人走ってきていた。

「私ちゃん何してるの?」と聞いてきたので

「お兄さんと話しとるんよ。またあと公園行くね。」

と答えたが、子供たちは首を傾げたりするだけ。

「え??とりあえず早く公園行こう?」

と下級生に強引に公園に連れていかれてしまった。

その時、お兄さんが「遊びたい時、また呼んで」と笑顔で手を振ってくれた。

その日は、下級生の鬼ごっこにとりあえず付き合わされてガンガン振り回されたのを覚えてる。

鬼ごっこ苦手だし、お兄さんと話す方が楽なんやけどな…って思いつつね…

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次の日の放課後も、私は公園の下級生と遊んでいた。

ドッチボールをしたかったか、何か忘れたけど

もう1人人数が欲しくて、人数分けどうしようと話をしていたのだけど

私はお兄さんに言われた言葉を思い出した。

「お兄さん、遊びたい時呼んでって言ってたし呼んでみようかな?」

そう下級生に伝えたあと、私は下級生たちを公園においてお兄さんの家を尋ねた。

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ピンポンを押すと、優しそうなおばあちゃんが出てきた。

「あら、何か用事?」と言われたので

「名前わかんないけど、お兄さんと遊びたいんです。」って感じで答えたと思う(緊張して覚えてなかった)

「あら?うちにお兄さんは居ないんだけどね…」

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たしかに昨日お兄さんと過ごした玄関先で間違いないんだけど、そう言われたら仕方ないので

諦めて公園に戻ったんだけど

その時に言われた下級生からの言葉が忘れられない。

「私ちゃんが言ってるお兄さんってどんな人なの?

お兄さんなんて今まで居なかったじゃん。」

Concrete
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