中編6
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人肉館

友人のスティーブンの訃報を聞いたのは、あの日から、たった三日目のことだった…

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「人肉館って知ってんだろ…?じゃあさ、肝試しに行こうぜ?一家心中した四人の霊が出るんだとよ…」

俺はたいして乗り気ではなかったが、友人のスティーブンはこういう事については何としても行ってみないと気が済まない性格の持ち主で…

下手をすれば一人でも行きかねない奴だった…

「構わねぇが、…お前と2人じゃ俺は嫌だぜ?」

むさ苦しい男2人で何がおもしろくて心霊スポットなど行くのか…

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2人で手分けして集めた仲間は男子3人女子1人の計四人…

スティーブン、俺(RJ)、ボボ、ジェニファーで決まった。

「何だよ…?結局、女子は1人だけか…」

…一人も誘えなかったやつがよく言うものだ…

メンバーの紹介を簡単にしようか…

ボボ…彼はアフリカ系アメリカ人でハイスクールのアメフト部に所属する体格のいい男、見た目の割に優しい良い奴だ。

ジェニファー…彼女は俺の恋人、去年のダンスパーティの時から付き合ってる…少し気が強いのが玉に瑕だが愛している…へへ。

スティーブン…あほ。それしか例えようが無い…

この四人で郊外にある恐怖の心霊スポット『人肉館』に行くわけだが、「暗くなってからじゃなきゃ迫力が無い!」などと、あほスティーブンが抜かすため仕方なくボボのウチに集まり計画を決める事にした…

カメラは俺が持つ事に、と、同時に一番後ろを歩く羽目になった…

「RJ…あたしのそばに居てよ」

「あぁ、俺の前を歩けよ…」

だいたいの並びが決まったが、1人だけ納得のいかないツラをしている奴がいる…

「何だって俺が一番前なんだよ!ファック!!」

自分で今回、この企画を言い出したくせに、何を言うかアホンダラ…

すると、優しいボボが

「スティーブン…僕が前を行こうか?」

などと甘やかすからこの馬鹿野郎はつけあがる!

スティーブンは……無言だったが明らかにそうしてくれ!という顔をしているのがわかった…

7時を過ぎると辺りは真っ暗になるし、田舎町ってのもあって、人などほとんど町を歩かない。

しん…と静まり返った町はある意味ゴーストタウンと化す…

その郊外なのだから、相当のモノだ…。

この州は16歳で車の免許が取れるのだが、俺たちのあいだで免許を持っているのは俺だけってのもあって、俺がダッディから借りた車を出す羽目になった…

なんだか俺ばかり損をしてる気がするのは気のせいか…?

カーステからジェニファーの持ってきたヒップホップが流れる…

ノリノリのテンションの割にボボの様子がおかしいのに気づいたのは俺だけか…?

「ヘイ!ボボ?どうかしたのか?」

浮かない顔ってのは、こんなにもテンションを下げるのか…などと感じながら聞くと…

「僕…お腹痛くて…」

さっき食った消費期限切れのチョコバーはやはりヤバかったらしい…

ボボを下ろし道の端に車を寄せる…

「ヘイ!ハハハ…ボボ!野糞とは地球に優しいな!ハッヒヒッハハ!」

スティーブンの悪いところが出る…

「よせよ…クッ…」

俺も少し笑いながらボボを待つ…

人肉館まで後、数百メートルの場所まで来ていた。

辺りは真っ暗で虫の音だけが鳴っている…

ボボが戻り車に乗る…

「さあ!行こうぜ!」

ボボの顔色はまだ悪いが、スティーブンのテンションはMAXまで急上昇している…

人肉館の前にくると、異様な臭いが辺りに立ち込めていた。

「ボボ!お前のクソは何て臭いだ!最悪だぜ!ハハハ!」

スティーブンのアホ…

この臭いはボボの糞の臭いなんかじゃない…何かが腐ったような臭いだ…

スティーブンのジョークにボボの顔色は一層悪くなり、歩けないほどになってしまっていた…

「おい!まさか…俺が前を歩くってのか?」

当然だろと言う表情をスティーブンに向ける…

仕方ないと先を歩くスティーブン…

「ゴメンよ」と車に残るボボを横目に俺たちも建物に向かう…

手入れのされてない庭は酷く荒れ草が生い茂っていてなかなか前に進めない、ジェニファーの機嫌が悪くなるのも時間の問題だ…

「ねぇ!この草、何とかならないの?虫がよるじゃないのさ!?」

ほらきた…

「仕方ないだろ?直ぐ入口さ、我慢しろよ…」

……………

やっとの思いで人肉館の玄関まで来た…が…

鍵がかかっている…

当然と言っちゃ当然だろ、と入れる入口を探す…

「あったぜ…」

思いのほか早く見つかりそこから皆、中へ…

朧月夜(おぼろづきよ)のせいで、内部は真っ暗…懐中電灯の明かりだけが頼りだ…

ガラスの破片…

子供が抱いていたと思われる気味の悪いぬいぐるみ…

傷だらけの姿見鏡…

生活そのままの状態に、まず驚きながら噂の一家心中したと言われる部屋へ…

扉をスティーブンがゆっくり開ける…俺もカメラを緊張の面持ちで向ける…

……………

がらん、とした室内…

本当に何一つ無い…しかし…

ジェニファーが何かを見つけたのか指を差す…

俺たちの目に飛び込んだのは有る筈の無いモノだった…

『ギチ…ギシ…』

何かが揺れる音…

ロープを天井の鍼(はり)に結び、先端を輪にし、首に掛ける…

これにより頸動脈及び、喉を圧迫して死に至る…

教科書には載らない最悪な死に方…

……………

そこに吊るされていたのはボボだった…

「きゃあああああ!!」

ジェニファーが悲鳴を上げる…

叫びたいのは俺もスティーブンも同じだった…

しかし、あまりの事で気が動転して何が何やらさっぱり分からず、身動きすらできない…

「な、何やってんだよボボ…か、帰ろうぜ…」

スティーブンがようやく口を開くが的外れのコメント…

死んでいる事はあきらかで、やっと正気を取り戻した俺が

「ここヤバイ!逃げるぞ!!」

と言い、恐怖でしゃがみこんでいたジェニファーを抱えスティーブンを呼ぶ「行くぞ⁉スティーブン!」

なのに奴ときたらちっとも動こうとしない…

「おい?スティーブン!」

ボボを眺めたままボウっと立ち尽くしている…

ジェニファーを抱えながらスティーブンの元に行く…

「ひっ!」

ジェニファーが声を上げる…

何処を見ているのか定まらない視線…

ヨダレを垂らし、グッタリと脱力した立ち方をしているスティーブン…

「おい?!アホスティーブン!!気味の悪い事してないで行くぞ!!」

と無理やり手を引き先ほど入った入口から表に這い出る…

車まで必死に走る走る走る…

やっとの思いで草をかき分けたどり着き、スティーブンを後部座席に放り込み、ジェニファーを助手席に座らせ乗り込む…

「ふう…」と息を整えエンジンを掛ける…

掛ける…

掛ける!

掛ける⁉

掛からない…

人肉館の方を見る…

誰かが立っている…ニヤニヤと笑っている…

「ボボ?ボボじゃないか!?死んでなかったのか!?この野郎!まさか…?

…ドッキリしかけやがったな?馬鹿野郎!やられたぜ…参ったよ…乗れよ、帰るぞ!」

ホッと一安心し、エンジンを掛けようとキーを回す、先ほどとは打つて変わって直ぐ掛かる…

『どルルん…』

よっしゃ…と、帰路につく…

バックミラーには眠りにつくスティーブンと蹲(うずくま)るように下を向くボボの姿…

ったく…何だったんだよ今夜は…

……………

……………

ボボが死んだ事にショックを隠しきれなかったのは、皆同じだった…あの帰り、レストランに寄り食事をしようと車を止め後ろに目をやるとボボの姿は無かった…

俺が見たのは幻、はたまた幽霊…

後でビデオカメラに収められた映像を観ると、確かにボボはそこに吊り下り死んでいるのがはっきりと、映っていた…

今も人肉館のあの部屋にボボは吊る下がっているのかもしれない…

確認に行きたいが、怖くて行く勇気が無い…

様子がおかしかったスティーブンもそれから3日後に息を引き取った…

その上…

ジェニファーの行方が分からなくなっている…

探しても探しても…見つかる兆しが見えない。

更に言えば…

最近俺は…ロープを見ると無性に首を掛けたくなる…

でもこれは、ママには内緒だ…

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本来は、日本に存在する場所なんですが…色んな都市伝説が上がっています。

過去、営業していた頃に本当に人肉を売っていたとか…

肝試しに入った若者が帰ってこなかったとか…

火事にあいその場所は焼失してしまっているのですが、その焼け跡から十数人の遺体が上がったとか…etc.