中編5
  • 表示切替
  • 使い方

押入れから

押し入れから

この話しは、賃貸不動産板で最低と書かれている不動産E社で働いていた、友人Sから聞いた話しです。

高卒で不動産屋に就職したSが、入社から半年を過ぎた11月頃に、

Sの友人Tに、賃料が安く駅から近い物件を紹介してくれと頼まれ、

築15年の古いアパートだが、和6 洋4.5 風呂トイレ別ユニットバスの木造アパートを紹介しました。

Tは物件の下見後即契約し、そのアパートへ引っ越しました。

翌年3月にTの友人M(Sの友人でもあります)が上京して来て、

Tのアパートで新居が決まるまで同居する事に成りました。

Tは洋間にパイプベッドを置いて寝て、Mはその横に自分の布団をひいて寝ていたそうです。

数日たって、MがTに自分は和室で寝たいと言い出しました。

TがMに理由を尋ねると、Mは申し訳なさそうにこう話しました。

「居候している身で、Tを脅かすようなことを言うのに気がひけて、今まで黙っていたけど、もうだめだ。

 壁が薄くて、隣の部屋の人のTVの音や声が聞こえるのはまだ我慢出来るが、押入から人が毎晩出て来るんだよ。

 夢か幻覚かもしれないが、あの顔を毎晩見るのは耐えられ無い。

 押入の無い和室で寝れば、あんな夢は見なくて済むんじゃないかと思って、和室で寝たいと言ったんだ」

Tは引っ越してから、そんなおかしな体験を一度もしていなかったし、

まして、Sにはお化けが出るとこ紹介したら殺すからなと、何度も念を押していたので、

笑ってMの話しを聞き流したそうです。

それから毎晩03:00頃に、MがTを起すようになったそうです。

「マジで今出たんだって」

Mは毎回真顔で、Tにこう言ったそうです。

Tは半信半疑ながら、そこまで言うならオレがそっちで寝てやるから、お前はベッドで寝ろと言って、

翌日はTとMで寝る場所を交換しました。

今日はMに起されないだろうと思って熟睡していたTは、その日もMに起されました。

「お前の上を素通りして、ベッドで寝ているオレんとこに来やがった」

Tは、てめえいい加減にしろ!と言って、Mと取っ組み合いの喧嘩をしました。

お互い疲れたところで、Mが真剣な顔で、

「隣室で誰か死んでいるのかも知れない。

 それで、その幽霊がこっちの部屋に出てきているのかもしれない。

 Sに一度確認してみた方がいい」

と言い出しました。

その日のうちに、会社に出勤していたSを呼び出して、3人でMの話しを詳しく聞いたところ、次の事が判りました

wallpaper:57

毎晩03:00頃に出てくるお化けは、押入から音も無く、すべるようにMの寝ている場所まで来ていた事。

そのお化けには手も足も無く、黒く長い寝袋の様な形で、

寝袋の様な胴体から出ている頭は、長い白髪頭で、顔は判らない事。

恨み言など何も言わず、ただ老婆のような泣き声だけ聞かされる事。

昼間でも、押入か隣室から、老婆の押し殺すような泣き声や唸り声が、たまに聞こえて来る事。

(Tは入居してから、そんなものは全く聞いた事が無い)

Tが居ない時に、押入の天井と床板を外してみたが、何も無かったこと。

Sは押入側の隣室の入居者へ、分別ごみの出し方で注意する事があったので、

3人で飯を食いに行った後、隣室の中年男性を訪ねました。

用件を伝えた後、Sはさりげなく中年男性に、隣室の騒音などについて聞いてみました。

その中年男性は、Mが話したお化けを見たといったような話しはしませんでしたが、

Tの部屋側から、お婆さんの押し殺すような泣き声や唸り声が、たまに聞こえて来る事、

隣室の嫁さんを見かけないが、お婆さんを置いて引っ越したのか?

などといった話しをしました。

そこでSが、隣室の住人は昨年引っ越しており、今は学生(T)が住んでいると伝えたところ、

その男性は驚いた様子で、

「今も嫁にいびられているお婆さんの声が、自分の部屋にたまに聞こえてくる。あの声は何だ?」

と、Sに詰め寄ったそうです。

Tの部屋にもどったSは、隣室の人もMと同じ様に、泣き声が聞こえると言っていた、と2人に話したところ、

TはSに、業者に頼んで押入近辺を調べてくれと頼みました。

そこでSが、その前にオレがちょっと見てみると言って、押入の壁板をトントン叩いて調べ出しました。

Sは調べているうちに、

床板や他の壁板がコンコンという軽い音を返すのに、

押入と風呂を挟んだ壁板だけボンボンといった、何か詰まっている様な音を返し、

また、その壁板が少し膨らんでいるのに気付きました。

Sがそこで板を外すと、黄色い袋のようなものが見えました。

Sはこれはヤバイと思い、会社の先輩と大家さんを呼んで、壁板全部を外し、

後から来た警察官が、その袋を引っ張り出しました。

取り出された袋は黄色い寝袋で、中に何か詰まっている様に、ズルッといった感じで出したそうです。

寝袋を押入から出した後、警察官が寝袋のチャックを開けようとしたところ、

Tが突然「オレの部屋で開けるな!」と興奮して、警察官に怒鳴りました。

その場にいた全員が、これはもう事件がらみだと確信していたため、

寝袋は部屋から持ち出され、警のワゴン車で開けた所、やはり仏さんが入ってました。

これは結構有名な事件なので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、

事件が起きた十数年前は、今騒がれている子供の虐待死事件のように、

ボケ老人問題で、介護疲れの親殺しや、無理心中事件が多発していました。

そんな中で起きたのが、この姑塩漬け殺人です。

事件の概要はこういったものでした。

Tが入居する前に、嫁と姑がその部屋に入居していた。(契約は10月まで有ったそうですが嫁は8月に退去)

姑は嫁の実母でなく、旦那の母親。

旦那が女をつくって失踪、嫁と姑がこの部屋へ引っ越してきた。

姑は旦那以外に身寄りが無く、旦那の失踪後は嫁が面倒をみていた。

嫁は自分を裏切った旦那への復讐を、姑に虐待と言う形で毎日繰り返した。

食事を満足に与えず、頭から熱湯をかけたり、アイロンを押しつけたり、かなり惨い事をしていた。

(ご遺体の腕などから、折れた針が何本も出てきたそうです)

姑は老後の面倒をみてもらっているという負い目から、痛い痛いというだけで逃げ出さなかった。

ある日、嫁が姑が布団から出てこないので、様子を見ると死んでいた。

嫁は怖くなって、姑をゴミ袋で何重にも包み、中に漬物用の塩を大量に入れ、更に寝袋に入れて、

押入の板を外し、そこに押し込んで隠した。

嫁の退去後に、別の入居者が偶然死体を発見し、警察が捜索し嫁は逮捕。

Normal
閲覧数コメント怖い
8110
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ