佐藤渉シリーズ番外編「雪女の守る山」

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佐藤渉シリーズ番外編「雪女の守る山」

理子「ねぇ、佐藤君って中学生の頃はどうだったの?」佐藤「えっ?」部室で理子が何気なく佐藤に質問する。勤「そうそう、俺も気になってたんだよね!佐藤って中学生の頃から霊能者やってたのか?」理子「それなら中学生の時は皆知ってたの?それが気になるから聞きたいな!」

佐藤は少し考えた後、二人に中学生の時の事を話始めた。あれは佐藤が中学二年の時。

佐藤はバスに揺られながら外の景色を眺めていた。川田「佐藤!お前滑った事あるか?」唐突に佐藤の友人・川田正之(かわだまさゆき)が話しかけてきた。彼は佐藤のクラスメイトで中一の頃からの友人だ。

佐藤「いや、今日が初めてだよ。」川田「そっか、実は俺も初めてでよ。昨夜なんか楽しみで寝らねなかったんだぜ!」二人が話しているともう一人の友人・池田が話しかけてきた。彼も川田同様、佐藤の中一の頃からの友人だ。池田「しかも滑るだけなのに三泊も出来るなんていいよな!」佐藤「そうだな。」

ここまで読めば分かる人はいると思うが、今日は佐藤達が待ちに待ったスキー教室の日だ。場所は新潟県の雪山であり、予定は三泊四日だ。ちなみにスキー教室の内容は主にスキーを学んで滑る練習をする事である。

やがて佐藤達が泊まる宿舎が見えてきたので川田も池田もすでにワクワクしている。もちろん佐藤も。だが佐藤はまだ知らなかった。これから体験する事を微塵も。

宿舎のスキーホテルに到着した佐藤達は軽いオリエンテーションをやってからスキー講習を始めた。スキー講習は主に二つのコースに分かれている。一つが初心者コースでもう一つが上級者コースだ。佐藤達は三人とも今日が初めてなので当然初心者コースである。

佐藤は初めてのスキーを楽しみながらやっていた。池田と川田は佐藤の様にうまく滑れずに何度も転んでいた。池田「イテテ…。あーあ、うまく出来ねぇや。」池田がうまく滑れないのでイジケていると、林の方に誰かが居るのを見つけた。

池田「あれ、誰だろ?何であんな所に一人で居るんだ?」池田は疑問に思いながら見ていた。その人は後ろ姿だったが、髪型や髪の長さから女性だと言う事は池田にも分かった。しかし、こっちを振り返る事はせずにただ向こうを向いたまま俯いていた。

池田は不思議に思ってその女性の所に行こうとしたが、先生に呼び止められる。先生「池田!何やってる!」池田「あそこに人がいたからどうしたのかと思って。」そう言いながら池田は先程見ていた林の方を振り返るが、そこには誰もいなかった。不思議に思った池田だが、先生に注意されたので

あれは気のせいか幻覚だと思いながらスキーの練習に取り組んだ。それからしばらくして夕食の時間になった為に佐藤達は食堂に集まって夕食を食べていた。そこで池田は一緒に夕食を食べていた班員の佐藤と川田に先程の事を話していた。

二人とも半信半疑だったが、池田は「どう考えてもあれは夢じゃないし、幻覚でもない!」と主張していた。するとそこに三人の男女がやって来た。「あのー、その話を詳しく話していただけますか?」佐藤達「えっ?」その後男女達は突然声を掛けた事を謝りながら自己紹介を始めた。

平井健二(ひらいけんじ):25才、職業・会社員。

高橋一樹(たかはしかずき):25才、職業・カメラマン。

山村志保(やまむらしほ):25才、職業・OL。

この三人は大学時代の友人であり、今日は久しぶりに集まったとの事だ。そこまで説明し終えると、早速池田に話をする様に促してきた。池田が先程の話を詳しくすると、三人は顔を見合わせていた。気になった佐藤が質問すると、三人は池田に話をする様に催促してきた理由を話始めた。

平井「実は、その女性が亜美だと思いまして。」佐藤「亜美さんと言うと?」高橋「俺たちの大学時代の友人だった女です。」川田……だった…?」志保「亜美…三年前に亡くなったんです。」佐藤「どういう事か差し支えなければ。」佐藤がそう聞くと、平井が当時の事を話し出した。

話は今から三年前、三人が大学四年の丁度今ぐらいの時期に遡る。先程言っていた彼女・高山亜美(たかやまあみ)さんも平井達と同じ大学の友人であり、四人はアウトドア部の仲間だったと言う。その日はこの雪山を訪れて四人でスキーを楽しんでいた。しかし、滑っている最中に猛吹雪に遭ってしまって四人ははぐれてしまう。

その後平井と志保と高橋の三人は何とかこのホテルまで帰って来れたが、亜美だけは戻って来なかった。一晩明けて吹雪が収まってから警察が捜索した所、亜美は雪山の林の中で冷たくなった状態で発見された。状況からスキー中に遭遇した吹雪による事故だと警察は判断したらしい。

その後雪山で謎の女性を見た人が続発したので、地元の人間は三年前に死亡した女性の霊が女になったんだではないかと噂しているらしい。そして三人はその事件以降疎遠になっていたが、久しぶりに会ったので彼女の命日に墓参りを兼ねてここに今日集まったらしい。

そこまで話した後、平井は「だから君が見たと言うその女性も亜美なんじゃないかと思って聞いてみたんだ。 」と言った。その後佐藤達は部屋に戻る時間になったのでその場を離れる事にした。

部屋は三人部屋であり、佐藤達は同じ班だから三人とも同室だった。就寝の時間になったので三人は床に就くが、三人とも先程の話が気になって中々眠れなかった。池田「なあ、佐藤。」佐藤「ん?」池田「お前、霊能者なんだよな?」佐藤「…まあな。」

池田「じゃあ、さっきの話聞いて何か分からなかったか?」佐藤「何かって言うと?」池田「だからぁ、俺が見た女がさっきの人達が言ってた亜美って人の霊なのかって事だよ!」佐藤「さあな、俺にもよく分からねぇよ。俺が直接見た訳じゃないし。」池田「じゃあ、俺を視ろよ!」

佐藤「は?」池田「俺に何か憑いてないか視てくれって言ってんだよ!」佐藤「ヤだよ、面倒いから。」池田「頼むよ!さっきの話聞いて、なんか気になるし。」川田「佐藤視てやれよ。うるさくて眠れやしないから。」佐藤はやれやれと思いながら仕方なく池田を霊視する事にした。

池田に意識を集中してみたが、特に何も憑いていなかった。佐藤「何も憑いてないから大丈夫だよ。じゃあな。」池田「ありがとう、じゃあな!」そう言って三人とも眠りについた。その後佐藤は夢を見る。気付くと佐藤は雪山の林の中にいた。

佐藤「どこだ、ここ?」佐藤は自分が今どこに居るのかも分からないまま歩いていた。佐藤「ん?あれは…」佐藤が見つけたのは一人の女性だった。佐藤はその女性に近づき、ここがどこなのかを聞いてみる事にした。佐藤「あの…」女性「……誰ですか?」女性は後ろを向いたまま佐藤に尋ねる。

佐藤「あっ、突然声を掛けてすみません。僕は佐藤渉と言います。」女性「……そうですか…。私は高山亜美と言います。」佐藤「亜美さん!?」

亜美「私は、あの人を許さない。」佐藤「あの人?誰ですか?」亜美「私をここで殺した人よ。」佐藤「えっ!?だって、あなたは事故死のハズ…」亜美「違うわ!私は殺されたのよ、あの男に!!」そう叫ぶと亜美はゆっくり佐藤の方を向こうとしてきた。

佐藤「落ち着いてください、聞いた話によればあなたは吹雪に遭って遭難したそうですが。」亜美「違うわ!アイツが私を……」そう言いながら亜美は顔をこっちに向けて「吹雪による事故に見せ掛けて殺したのよ!!」 と佐藤に叫んだ。その顔はとても恐ろしい鬼の形相だった。

佐藤「ウワッ!!」すると突然猛吹雪が佐藤を襲う。亜美「アイツのせいで私はここで死んで、雪女になってしまったのよ!」佐藤「えっ?」(雪女に?)亜美「これほどまで言っても分からないなら仕方ないわね!私がこの手であの男を殺してやるわ!!」佐藤「あの男って…まさか、高橋さんか平井さんのどちらかがあなたを!?」

亜美「その通りよ!アイツが…平井が私を殺したのよ!!」そう叫ぶと更に吹雪が強くなり、佐藤は「気が…遠くなる」と感じながら段々意識が遠退いていった。そこで佐藤は目を覚ます。

佐藤「夢か……。ふぅ。それにしても…リアルだったな。」佐藤の体は寒さで震えていた。翌朝になってから食堂で朝食を食べながら川田と池田に夢の内容を話してみた。池田「ええっ!?平井さんが!?」佐藤「シーッ!声がでけぇよ!!」

池田「あっ、悪い。」川田「でも、それが本当なら警察に言った方がいいんじゃないか?」佐藤「どう言うんだよ?霊が夢の中で言いました、とでも言うのかよ!?」川田「じゃあ、お前どうすんだよ?」佐藤「どうするもこうも、どうにも出来ねぇよ。」池田「お前が亜美さんを成仏させる事は

出来ないのか?」佐藤「無理だよ、彼女が亡くなった場所でも分からないと。とにかく下手に関わらない方が良さそうだ。」そう言って佐藤はこの話を一旦終わらせる。

その日の予定は午前中は昼までスキー講習なので佐藤達は早速講習に参加した。しかし、佐藤は滑っている最中にコースを外れて雪山の方に行ってしまう。やっと止まったが、そこはスキーホテルから大分離れた林の中だった。

「イテテ…。やれやれ、ひどい目に遭った。ん?」佐藤が向こうの方を見ると、昨夜食堂で会った平井が木に花を供えて手を合わせていた。佐藤「そうか、あそこが亜美さんの亡くなっていた場所なんだな。」佐藤がじっと見ていると、平井は涙を流しながら「ゴメンな亜美、ほんとにゴメンな。」と言っていた。

それを見た佐藤はそっとその場を離れてスキーホテルに戻って行った。着いた頃には昼を回っていて、心配していた生先達に謝ってから昼食を食べるために食堂へ向かった。池田「大丈夫かよ、佐藤?」佐藤「大丈夫だよ。」そう言いながら佐藤はラーメンを食べる。

川田「なあ、俺思ったんだけど昨夜の人達にお前が見た夢の内容を言った方がいいんじゃないか?」佐藤「何でだよ、信じるわけねぇし、不謹慎だと思われるだろ?」池田「じゃあ、せめてお前が亜美さんを成仏させてやったらどうだ?そうすればあの人達も喜ぶだろうし。」

佐藤「けどなあ、俺みたいな中坊が霊能者だから亜美さんを成仏させましょうって言ってもあの人達が信じるかは分からないし。それに例え信じたとしても断るかもしれねぇし。」

川田「でも一応言ってみたらどうだ?難なら、俺が言おうか?」川田がそう言うと佐藤はラーメンを喉につまらせかけて咳き込む。「ゴホッ、ゴホッ。何でそうなるんだよ!?それだけは絶対止めろよな!!」そう言って佐藤は席を離れる。

しかし、それでも佐藤は夢の内容や先程見た平井の言動が気になっていた。佐藤「あの人のさっきの言動からしてやっぱり彼女は事故じゃなくて平井さんに殺されたのか?それで三年経った今になって自分の罪を認めて反省していたのか?確かにそれならさっきの平井さんの言動も説明がつく…。

それとも警察の見解通り吹雪による事故か?じゃあ、彼のさっきの言動は一体?くっ…ダメだ、全く分からない。あまり関わらない方が良さそうだけど、ここまで来るとさすがに気になるしな。やっぱり彼女が亡くなった現場に行ってみるか。」

午後は吹雪が強くなるために各自部屋で待機する様に先生から指示されていたが、佐藤はこっそりホテルを抜けて現場に向かう。佐藤がホテルを出た時には弱かった吹雪も時間が経つにつれて段々強まってきた。そして佐藤が現場である林に着いた頃には視界が悪くなるほど吹雪いていた。

佐藤「さすがに吹雪いてきたな。視界も定まらないし、ゴーグル着けてきといて良かった。」何とか現場に到着した佐藤は持って来た数珠を取り出して霊査を始める。しかし、あまりの吹雪による寒さで体が震えてしまっていたために意識を集中する事ができなかった。

佐藤「くっ、ダメだ。これじゃ霊査が出来ない!!」佐藤は霊査を諦めてホテルに戻る事にしたが、吹雪で視界が遮られていて進む事ができなかった。

佐藤「まずいな、このままだと遭難だ。何とかしないと…」そこで佐藤は暖を取りながら休憩するためにやむ無く林の奥へ進む。佐藤「こうなった以上仕方がない、取り敢えずこの先にどこか暖を取りながら休憩できるところがないか探すしかない。まぁ、さすがにこんな林にそんな所無いだろうけど。」

佐藤は洞窟がある事を期待しながら林の奥へ進んでいった。その頃ホテルにいた川田と池田は佐藤が戻ってこないのを心配してホテル内を探し回っていた。池田「いたか?」川田「いや、ダメだ!そっちは?」池田「いや、こっちもいなかった。」川田「佐藤の奴、一体何処に行っちまったんだ?」

池田は窓の外を見ながら「まさかアイツ、外に行ったんじゃ。」と言った。川田「ええっ!?そんなまさか…。」川田は冗談だろと言いたかったが、川田自身もそうではないかと思っていた為に言えなかった。池田「おい、外を探しに行くぞ!」

川田「えっ!?行くって…お前分かってるのか!?外は猛吹雪で視界も定まらないんだぞ!?なのに外に行ったら、下手すりゃ俺たちが遭難するかも知れないんだぞ!?」池田「でも、だからってこのまま佐藤が戻って来るのを待ってる訳にもいかないだろ!?もしも本当に佐藤が外に出ていたら…」

川田は外に行くのを渋っていたが、池田の強い説得に負けてこう叫んだ。

川田「よし、分かった。佐藤を見つける為だ!お前が行くなら俺も行くぜ!」池田「おう!そう来ねぇとな!」それからすぐに二人は荷物を持って外へ出た。

一方の佐藤は吹雪で視界が悪い中、ひたすら前へ進んでいた。しかし佐藤の体力は限界を迎えていた。足もふらついていて、前に進むどころか歩くことすら困難になっていた。

佐藤「くっ、ここまでか…。」佐藤が諦め掛けたその時、目の前に洞窟が見えた。

佐藤「!助かった!」佐藤は最後の力を振り絞って洞窟の中へ入る。佐藤「ふぅ。助かった。取り敢えず吹雪が止むまでの間だけここにいるか。」

佐藤は疲れたので腰を下ろす。しばらくすると池田達の声が聞こえてきた。池田「おーい!佐藤!!」川田「どこだー!?」そこで佐藤は大声で叫ぶ。佐藤「おーい!ここだー!」

すると二人は佐藤のいる洞窟にやって来た。池田・川田「佐藤!!」佐藤「池田、川田!!」寒かったので暖を取る為に川田は持って来たライターの火をつける。佐藤「ふぅーっ、生き返るぅーっ。」それから一時間程で吹雪が止んだので佐藤達は洞窟を出て、ホテルに戻る事にした。

そしてようやくホテルに帰れたが、三人とも無断で外出した為に先生に怒られて一時間立たされることになってしまった。佐藤「悪いな、俺のせいで二人まで巻き込んじまって。」池田「気にするな、お前が無事で良かったよ。」

川田「そうそう!それに俺たちは友達だ。だからお前が立たされるんなら俺たちも立たされて当然だよ!」池田「その通り!!」佐藤「池田、川田…ありがとう。助けに来てくれてありがとう!!」そう言って三人とも笑い合っていた。

それから一時間経って夕食の時間になり、三人は食堂の方へ向かった。夕食のカレーライスを食べていると佐藤の視界に高橋と志保が入ってきた。二人とも心配そうな顔をしながら周りを見渡していた。気になった佐藤は声を掛けてみた。佐藤「あの…どうかされたんですか?」

高橋「それが連れの平井が夕食の時間になっても来ないんだ。部屋に行っても居ないし、携帯も出ないし。

志保「だからこのホテルの中を二人で隈無く探したんだけど何処にもいなくて。」高橋「何処に行ったんだ、アイツ。」

佐藤はもしかしたらと思い、二人に亜美が亡くなった場所に行ってみて欲しいと言った。二人は外を探す予定だったので、すぐにそこへ向かう事にした。そしてしばらくしてから二人は平井を連れて戻って来た。どうやら佐藤が言った所で倒れていたらしい。

平井は凍傷が出ている上に外の寒さで体がかなり冷えていたが発見が早かったので命に別状はないと医者は診断した。二人は佐藤に礼を述べた。そこで佐藤は思い切って自分は霊能者である事や、昼間に平井が亜美の亡くなった現場で取っていた言動を話した。

二人は亜美の死が自分達にも責任があると言う事から佐藤の話を信じた。しばらくして意識が戻った平井を含めた三人に佐藤は夢の内容を話してみた。すると平井は詳しく教えてくれた。三年前のあの日、平井ははぐれる間際に亜美の手を掴んでいたらしい。

しかし、その手を離してしまった上に亜美は吹雪で視界が悪くなっていたのも重なり、遭難してしまったとの事だ。平井はそれ以後ずっと自分を責めていたらしい。自分があの時に手を離さなければ亜美は死なずに済んだと。それを聞いた佐藤はようやく昼間に平井が取っていた言動を理解した。

佐藤「なるほど。昼間平井さんがあの様な言動を取っていたのはその自責の念に駆られていたからですね?」平井「はい…。」志保「亜美はどうしてあなたの夢の中で平井君に殺されたと訴えていたんですか?」佐藤「それはあそこに直接行かないと分かりません。」

志保「では、明日私達と一緒に来ていただけませんか?」佐藤「ええ、もちろんそのつもりです。」高橋「因みにどうして平井はあそこに倒れていたんですか?本人は気づいたらああなっていたと言っていますが。」佐藤「恐らく平井さんは亜美さんに体を乗っ取られていたんでしょう。」

平井「亜美が俺を殺そうと!?」佐藤「あなたを引っ張るつもりだったんでしょう。あなたは彼女の死が自分のせいだと自責の念に駆られていましたから。それによってあなたの心は弱くなっていたので体を乗っ取られたんでしょう。」

平井「………。」佐藤「とにかく現場に明日向かいましょう。明日は僕達一日自由時間なので時間はありますし。平井さんはそれまでご自分をあまり責めないようにしてくださいね。またあなたの心につけこんでくるかもしれませんし。」

そこで話は一旦終わる。その夜に佐藤は床に就くが、亜美さんが何故平井を怨んでいるのかを考えていた。「行って視ないと詳しくは分からないけどもしかして亜美さんは…。」何か仮説を頭の中で考えたまま、眠りに落ちる。

翌朝になってから佐藤は池田達と共に食堂に向かった。そこで彼らと待ち合わせる事になっていたからだ。食堂で彼らと会って朝食を済ませてから現場に向かう事にした。ちなみに今日は夕食までの間は自由時間となっている。

そして時間時間になってから佐藤達は現場に行った。池田「ここが現場か。」平井達は花を供えて手を合わせていた。平井「今日が亜美の命日なんです。」佐藤「そうでしたか。」佐藤は三人の合掌が終わってから数珠を出した。佐藤「では始めます。」

そう言うと佐藤は亜美の降霊を試みた。しばらくすると突然川田が倒れてしまった。ドサッ。池田「川田!?」

佐藤「しまった!」志保「一体どうしたの!?」佐藤「どうやら霊が川田の体に入ってしまったようです。」平井「亜美が!?」佐藤「ええ、恐らくは。」川田「うっ…。」川田は体を起こしてから「こ、殺してやる。」と言って平井に飛び掛かった。川田「殺してやる!!

その顔はまるで佐藤が夢で見た、亜美がしていた恐ろしい鬼の形相と瓜二つの様だった。平井「ウワッ!!」平井は転倒し、川田は平井の首を絞める。

その間川田はひたすら「殺してやる…殺してやる…。」と呟いていた。高橋と志保と池田が川田を押さえようとするが、全員突き飛ばされてしまう。佐藤はお経を唱えながら数珠で川田の背中を強く叩く。バンッ!!

すると川田は「ギャアーッ!!」と叫んで倒れる。さらに川田の体から亜美の霊が出てきた。亜美「よくも私の邪魔を!!」佐藤「目を覚ましてください!彼はあなたを殺してなんていません!あれは事故だったんです!!」

亜美「違う!私はその男に殺されたのよ!!」佐藤「それは違います。あなたは騙されているんです。」平井「騙されている?」佐藤「ええ、亜美さんは邪霊に孤独な心を支配されているんです。よって、亜美さんが言っていることは邪霊が言わせているだけなんです!」

亜美「うるさい!黙れ!!」すると突然猛吹雪が起きて佐藤たちを襲う。佐藤「くっ…。邪霊よ!亜美さんから離れろ!!」佐藤は除霊を始める。その途端に亜美の霊体から邪霊が抜け出る。佐藤「やはり邪霊だったか。」

亜美はそこで正気を取り戻す。亜美「あれ?私…一体何をしていたの?」佐藤「良かった!正気に戻ったんですね!」亜美「私、今まで何を?」佐藤「あなたは邪霊に支配されていたんですよ。」

邪霊「おのれ…よくも我らの邪魔を!」佐藤「お前達は亜美さんが亡くなった直後に彼女にこう囁いて騙したんだな?お前(亜美)はあの男(平井)に殺されたんだと。」邪霊「その通りだ!そして体を支配してやったのだ!」佐藤「お前達は亜美さんを自分達の仲間に加えて自分達の為に利用しようとしたんだな!?」

邪霊「そうだ!我らはかつてこの山の守り神の化身である雪女として祀られていた。なのに最近になって人間どもは我らを祀る事も忘れた!その恩知らずの人間どもに復讐する為にこの女の体を乗っ取ったのだ!」

佐藤「確かにこの地にいた人達にも非はある。だが、彼女は関係ないぞ!」邪霊「うるさい!黙れ!!貴様らも我らの仲間に加えてやる!!」佐藤「そうはさせない!!」佐藤は数珠を握り締めて対話を始めた。佐藤「お前たちに選択権をやる。一つは二度と悪さをしないと誓うなら浄化させてやる!

もう一つはここに未来永劫封じ込められたいかだ!さあ、決めるがいい。」

邪霊「わ、分かった。それだけは勘弁してくれ。騒がせて悪かった…」佐藤「まったく。じゃあ、お前達の心に光を照らそう。」そう言うと佐藤は手を合わせる。すると邪霊は強い光に照らされてみるみる闇が浄化されていった。邪霊「ありがとうございました」

そう告げると邪霊は雪女の様な姿に変わって消えた。その途端に吹雪も止んで快晴になった。佐藤「さて、後は亜美さんだけです。あなたも成仏しますね?」亜美「はい。」佐藤「何か平井さん達に言い残す事は?」亜美「皆には自分をあまり責めないように伝えて下さい。特に平井くんは。」

佐藤「分かりました、伝えておきましょう。

亜美「ありがとうございます。」そう告げて亜美は昇天していった。佐藤「終わった。」佐藤は先程の事を平井達に言った。すると平井達は涙を流しながら合掌していた。

池田「でも亜美さんよく成仏してくれたよな。」川田「ああ、俺もここまでいくなんて思わなかったよ。」佐藤「今日が亜美さんの命日だったからだよ。だから彼女も成仏できたんだよ。」池田「なるほど。」川田「でもまさか邪霊が雪女になるなんてな。」

佐藤「それは俺も驚きさ。まぁ、これからは彼女(雪女)がこの山と登山者達を守ってくれるだろう。今度こそこの山の守り神として。」そう言いながら佐藤は晴れ渡った空を見上げる。

その後佐藤達は平井達にお礼を言われてからホテルに帰り、スキーの練習に励んだ。佐藤「さあ、滑るぞ!」池田・川田「おう!」佐藤たちは先程の事を忘れたかの様にスキーを楽しんでいた。

翌日、佐藤達は雪山に別れを告げて帰っていった。佐藤は帰る途中の車内から雪山の方を見た時、一瞬雪女の姿を見た気がしたが、池田達には黙っていた。

佐藤「以上が俺が中坊の頃に体験した心霊事件だよ。」佐藤が話をし終えた後にそう言った。勤「ヘェー、すげぇなお前!」理子「ホント!圧倒されちゃった!」話を聞いた勤と理子が興奮して感想を述べる。理子「でも佐藤君良かったね、いい友達がいて。」勤「ほんと、お前の友人すげぇよな。カッコいいぜ!」

佐藤「フッ。確かに俺もアイツらと友達で良かったと今でも思ってるよ。アイツらが来なかったら、俺はあそこで死んで、ここにはいなかっただろうからな。アイツらには感謝だよ。」佐藤は窓から晴れた青空を見上げながらそう言った。

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龍悟さん、コメントありがとうございます!番外編楽しんでいただけてよかったです!佐藤渉の幼少(小学生時代の話)時代の話も投稿予定ですので、楽しみに待っていて下さい!!
僕の投稿の早さはただ単に僕が暇人なだけです。(笑)
しかも僕の話は投稿が早い割に文章はあまり良くないので、お忙しい中時間を見つけて投稿している龍悟さんの話の方が面白くて文章力が良いのでそちらの方がすごいと思っています。
これからも龍悟さんの話を長く楽しみに待っているので、頑張って下さい!僕の方も頑張って投稿していきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。

番外編楽しく読ませていただきました。
佐藤さんの幼少時代の体験も読みたいなと思いました。
そしておにいやんさんの投稿の早さはすごいですね!