中編5
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鈴木さん

やった。ついに俺も今日から、スマホ人だ。

以前の携帯会社の3年縛りの契約を更新、これを機にガラケーを卒業だ。

ぶっちゃけ携帯など、あまり使わない。

あのどこでも捕まってしまう、煩わしさ。

やめてしまっても良かったのだ。携帯電話など。

ところが、同僚がアプリなるもので遊んでいるのを見ると、羨ましくなった。

ちょっとした玩具として興味があるのだ。

早速、俺はアプリをいろいろダウンロードした。

検索していると「鈴木さん」というアプリに目が留まった。

「鈴木さん?なんだそれ。」

俺はアプリの説明を読んだ。

「鈴木さん」の特徴として、同時にアプリケーションを起動させている者同士を無作為に繋いで テレビ電話ができるというのだ。もちろん映像をオフにしておくこともできる。

しかも、ボイスチェンジャー機能もついていて、女性にもなることができる。

一度繋がった相手とは、ほとんど繋がらないので匿名性は高い。

イタズラ電話などにも使われるので、社会的に問題になっているようだが

いやならアプリを削除してしまえばよい。

へえ、言えば音声チャットみたいなものか。しかも通話自体は無料だし。

俺は興味本位でダウンロードした。

俺はその夜、ちょっとそのアプリを試してみた。

「鈴木さん」で電話をかけてみる。俺は画像をオフにして音声のみで。

お、繋がった!俺はイタズラ心が起きて、女性の声で話しかけた。

「こんばんは。」

「こんばんは。はじめまして。」

お、相手は男か。

「今、何してるんですか?」

「今?ゴロゴロしてる。」

「そうなんだ。」

「君、何歳?」

何歳にしとくか。16とでも言っとくか。

「16歳。」

「そっかぁ、女子高生だ。」

「うん。」

「名前は?」

「あや。」

「あやちゃんか、可愛い名前だね。」

俺は笑いそうになった。

「あやちゃん、俺ちょっとさ、エッチな夢見ちゃって。眠れなくなったんだ。」

来た来た、このエロ野郎。展開が強引だな。

「そうなの?どんな夢みたの?」

「俺と君がエッチする夢だよ。」

うわー、キモイ。男とも知らずに。

「やだー。」

「俺、今びんびんになっちゃってさ。俺の、見てくれる?」

おいおい、カンベンしてくれ。そんな物は見たくねえよ。

俺はそこで通話をやめた。

俺は、しばらくは、他のアプリで暇をつぶした。

まぁ、どのアプリも最初は楽しいのだけど、だいたいはすぐに飽きてしまう。

しばらくして、またあの「鈴木さん」を起動させてみた。

「もしもし?」

また男か。男率、高えな。

「こんばんはぁ。」

「こんばんは。あやちゃん。」

俺は名前を呼ばれてぎょっとした。

おいおい、一度繋がった相手とは繋がらないんじゃなかったのか?

まあいいや、からかってやるか。

「えー、声だけでわかっちゃった?びっくり。」

「そりゃそうだよ。俺はあやちゃんが気に入ってあやちゃんにかけてるんだから。」

「えー、そんなことできるわけないじゃーん、偶然だよー。」

「そうかな?少なくとも俺はあやちゃんに繋がるように念じた。」

「もう、冗談ばっかり。」

ホント、お前はキモいなw

「ホントだよ。それよりさ、この間の続き。ちょうど俺、君の事思いながら

シコってたところなんだ。ほら、最後まで、見ててね。」

わわ、ホントに下半身出してやがる。

うわー男のシコるところなんて見たかねえよ。

俺が電話を切ろうとした瞬間、画面にいっぱい白いものが飛び散った。

うわ、最低。

なんだか、俺のスマホまで汚れたような気分になっていやになった。

俺はしばらくそのアプリを起動しなかった。

数日後、着信音が鳴った。

あのアプリの着信だ。

今度こそ、かわいい女の子でありますように。

「もしもし、俺だよ。鈴木。」

俺はぞっとした。

何で?三回ともお前なんだよ。

俺は速攻で切ろうとした。

「切らないで。この前は悪かったよ。ごめんね。いきなりあんなもの見せて。

あやちゃんのこと考えると、もう我慢できなくて。俺、あやちゃんのこと

好きなんだ。大切にする。だから、俺と結婚してくれ。」

何で、そうなるんだよ、気持ち悪い。

俺はボイスチェンジャーを切った。

「ばーか、俺は男だよ。騙されやがってw」

「・・・・・・。」

しばらく男は無言だった。

「何で?そんなボイスチェンジャーなんて使って俺を避けるの?

ごめんって言ってるジャン。もう二度としない。だから、俺と結婚・・・。」

「だからあ、本当に男だってば。信じろよバカ。もう二度とかけてくんな。」

俺は通信を切断した。

もうこのアプリは削除しよう。

俺はアプリを削除した。

「あばよ、変態の鈴木。」

俺はベッドに寝そべった。

何か音がする。

携帯からだ。

見知らぬ番号からの着信。

まさか。。。。。。

俺は出なければいいのに、出てしまった。

「もしもし?」

「あやちゃん、酷いよ。アプリ削除しただろ。」

俺は携帯の電源を切った。

何だよ、なんで俺の番号がバレてんの?

俺は気持ち悪くなった。

寒気がしてきたので、ベッドに潜り込んだ。

なんで?おかしい。いくら考えてもわからない。

すると、また携帯の振動音が聞こえた。

嘘だ、携帯は電源を切ったはず!

俺は耳を済ませて音の元を辿った。

ベッドの中?

俺は布団を跳ね上げた。

布団の中には何も無かった。

まだ着信を告げる音は鳴っている。

なんなんだよ。よく耳をすませば、下のほうから聞こえる。

下の住人の携帯の音まで聞こえるだろうか?俺、おかしくなったのかな。

ベッドの上から音のする床の方を見た。

突然、ベッドの下から、手が出てきた。

「うわぁあ!」

俺は驚いて逃げようとしたが、その手に掴まれてしまった。

「あやちゃん、どうして電話の電源、切っちゃったの?」

えっ?ナニこれ。俺じゃん。

「俺だよ、鈴木だよ。」

そいつはニヤリと微笑んで、俺を力いっぱいベッドの下に引っ張りこんだのだ。

テーブルの上のスマホが振動している。

落としたはずの電源が入っている。

そして、削除したはずのアプリが起動する。

「もしもしぃ?」

その男は、スマホを手にして、その女の声を聞く。

「はい、鈴木です。」

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