中編3
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濡れた100円札

私が小学校のころの話です

私が通う小学校は温泉の近くで、

道路はいつも温泉の噴出したお湯の跡で濡れてました。

しかし一箇所だけ濡れてないところがありました。

それは交通安全の為に置かれたお地蔵様のところです。

雪や雨の日を除いて、1m四方が乾いて灰色のアスファルトでした。

当時はどうして濡れてないか気が着かず6年間、通い続けました。

卒業も近くなったある日。

午後2時を過ぎたころ。

忘れ物をしたことに気が着き、先生に断り家に取りに行くことになりました。

学校から家まで走ると5分ぐらいでしたので、

先生も「とりに言っておいで」と言うことで、

校門を駆け足で出て家に戻りノートを持ち、家を出て学校に向かいました。

私はノートを持った安堵感から、駆け足を止め何時もの歩く速度で

道を歩いてました。

午後2時過ぎの日差しは暑く額にはいつの間にか汗が出てました。

その汗をぬぐいながら歩いてゆくと何時もの地蔵様の前に来てました。

何時もなら素通りしてるのですが妙に地蔵様の姿が気にかかりました。

地蔵様の丁度真正面を通りすぎようとした時です。

お地蔵様の前に何時もはないお賽銭が置かれてました。

それも「100円札」です。

子供心に悪いとは思いましたが私はお地蔵様の賽銭を盗んでしまいました。

どうして盗んだかそのときはわかりません。

いつの間にか全力疾走で、お地蔵様から逃げるように学校に向かいました。

学校では先生が私の発表を待ってました。

私は夢中でノートに書いてあることを読み上げて、

お金を取ったことを忘れてました。

それから1週間。

私はポケットの中に盗んだ100円札を入れたまま忘れていました。

母さんが洗濯物を干す時に始めて

ポケットに丸められた100札を見つけました。

「どうして100円札が入っていたか誰から貰ったのか私に詰め寄りました。」

しかし私は父や母に怒られるのが怖くて

「拾った」と言って、嘘をつきました。

その日の夜AM1時を過ぎたころです。

私は寝苦しさと体全体が重いことで目が覚めました。

私の胸から腹に掛けて濡れた100円札を持ったお地蔵様が座ってました。

怖さと罪悪感でお地蔵様を見ることも出来ず、

じっと目を背けてました。そうして、30分もたったころです。

お地蔵様は消えました。

私は怖くておばあさんの居る部屋に行き

起こったことすべてと、私が盗んだ事を正直に話しました。

夜中の3時に父と母が寝ている部屋におばあさんと行き

頭を下げて本当のことを話しました。

父はものすごく怒りました。母はどうしてそんなことをしたか泣きました。

「お金が無いわけでもない。小遣いは毎月500円以上上げている」

どうして事もあろうにお地蔵様から取ったのか?

問い詰められました。

しかし私には答えることが出来ませんでした。

100円札は廊下のものほしさおにぶら下げられてありました。

不思議なことに100円札は濡れたままでした。

もう他の洗濯物取り込んで、

3日も過ぎたというのに濡れた100円札だけが残されてました。

おばあさんは「お地蔵様が泣いた涙が着いている。」と言ってました。

私も罪悪感とお地蔵様が私の上に出てきたことで、

申し訳ない事をしたと反省してました。

世来る朝。

おばあさんと地蔵様のところに行き「濡れた100円札」

とお花それに団子や饅頭を沿え15分ほど拝んで誤りました。

その時気が着きました。何時もは濡れてない

お地蔵様の地面が他の道路と同じように塗れてました。

私には「お地蔵様が泣いた涙のように見えました。」

それから毎日お地蔵様の前を通るたび回向をして学校に向かいました。

濡れた100円札は何時しか乾いて、

お地蔵様の手からどこかへ無くなってました。

何日かするとお地蔵様の周りが乾いた状態に戻りました。

私のように盗んだ人が居るのか?それとも風でとばされたのか?

あの盗んだときにお地蔵様が私にのしかかった恐怖を思い出すたびに

反省して、2度と盗みはしなくなりました。

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海外からでもAmazon等で購入は可能かとは思うのですが。
最終選考に残られたのであれば、一冊ほど贈呈してくれてもいいのに。
と思う私です。

解りました。
立ち読みではなく、ちゃんと購入いたしたいと存じます。
大賞を受賞した作品等一部入賞作も掲載されていることでしょうし、選考結果に至った経緯や内容も詳しく書かれていると思いますので、私自身の今後の研鑽のためにも。

『幽』怪談実話コンテストは、ひとりで5編も応募できるのですね。
それもびっくりです。
おそらく、光道様が厳選して送った作品ばかりでしょうから、紙一重だったのだと思います。
そうなると、どうしても選者の好みになってしまいますのでね。他にも角川では、日本ホラー大賞も続いておりますし、公募はたくさんしているようですので、めげずにトライし続けてくださいね。

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あんみつ姫様
私、飢餓トラックの他に’保険の意味で
5つばかり載せましたが、そのうちのひとつがこの話でした。
後は鉈きり峠、等でした。
最終的に飢餓トラックが選考会に残った次第です。
まだ、どうして、10人のうちの私一人が落ちたのか不満が残りますが
現因がわかりません。
以下
光道 進 様

この度は第7回『幽』怪談実話コンテストにご応募いただきまして、誠にありがとうございました。
11月5日(金)に開催されました、選考委員による最終選考会において、第7回『幽』怪談実話コンテストの入賞作が決定いたしました。

選考結果は以下のようになります。

------------------------------
《大賞》
「古墳の石」「八幡様の踏切」笠原修(かさはら・おさむ)

《優秀賞》
「soul pool」石動さや加(いするぎ・さやか)
「工場に棲むもの」黒咲典(くろさき・つかさ)
「友は還りて夜をゆく」夜馬裕(やまゆう)

《佳作》
「さんどばた忌憚」阿丸まり(あまる・まり)
「家守」九条紀偉(くじょう・きい)
「守護する者」並木由紀(なみき・ゆき)
「帰還」春南灯(はるな・あかり)

《特別賞》
「憑依の人」井川一太郎(いがわ・いちたろう)
------------------------------

選考会の詳しい内容につきましては、2015年12月末刊行予定の『幽』24号に選考会レポートを掲載したしますので、こちらをご覧いただけましたら幸いです。
残念な結果になりましたが、次回以降もチャレンジしていただけますようよろしくお願いいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。

ということです。
あんみつ姫様
厚かましいお願いですが、出来れば、立ち読みして、この選考会リポートを報告してくれませんか?
外国なので買うこと出来ません。
お願いします。

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トドさん
これが、泣ける怪談です。
どこか人の心に伝わる怖い話。
小泉八雲です。山形の作家 浜田廣介です。泣いた赤鬼です。
これが私の心に根強く残ってますね。
実際、幽霊や妖怪は悲しい過去を背負ってますよね。
ホラーと違うところです。
こまでも、怖さを追求する。グロテスクな物でも受け入れる。
それが、一番怖いと思ってしまう。
外国の怪談と日本の怪談はここが違うのです。
私はここを追求してます。まねて書くことは出来ます。
でも心が無いじゃないですか?
もう少しお待ちください。
心の怪談を投稿します。

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珍味さん
昔はなしの世界です。
おどろ、おどろしく書いたり、殺りくを描いたり、怖く無いとダメに
なっていると思います。昔はこうだったと思います。ま、一人ぐらいこういうの載せても
良いと思います。

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