この話はアワードを受賞したロビンM太郎comに贈ります。
興味のない方はスルーしてください。
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大粒の雨が窓を乱暴に叩いている。
やれやれ、この嵐じゃあ商売あがったりだな。
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俺は中華料理店の店主。
あいにくの天気に暇を持て余していた。
こんな時は、これこれ・・・ひひ・・・
俺は怖い話が大好きで、怖話というサイトに登録している。
スマホで怖話アプリを開くと、片っ端から怖話を読み始めた。
ガラガラ。その時、急に店の引き戸が開かれ、嵐と共に、女の客が訪れた。
「いらっしゃいませー。」
俺は営業スマイルで、お冷をテーブルに運んだ。
この嵐なので、バイトは来られずに、今日は俺一人でオーダーまでとらなければならない。
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その女は中肉中背で、目に覇気の無い、まるで魚の腐ったような目をした女だった。
嵐の中、訪れた所為か、髪の毛はボサボサのモジャモジャ。傘をさしていたのだろうけど、この嵐では役に立たなかったのか、赤い長いコートを着ていたが、ずぶ濡れだった。
「お客様、なんにいたしましょう。」
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その女は虚ろな目で、壁に掲げたメニューに目を走らせると、端から順に読み上げて行った。
「えーと、全部お一人で食されるのでしょうか?」
俺は戸惑いながら、その客に問うた。
すると、女は黙って頷いた。
嘘だろう?うちのメニューを全部?
俺は半信半疑ながらも、注文された料理を片っ端から作って、テーブルに並べていった。
並べる端から、その女はすべて飲み込むようにどんどん食べて行った。
ギャル曽根かよ。
ちゃんと代金、払ってくれるんだろうな?
ついに、最後のメニューをその女はたいらげた。
すると、信じられないことに、またオーダーを出してきたのだ。
メニューがループして最初に戻った。
「申し訳ありません。もう食材が底を尽きまして。」
そう手もみしながら伝えると、女は虚ろな目で、俺をじっと見てきた。
「食材なら、まだあるじゃないですか。」
そう言うと、のっそりと立ち上がった。
「いや、申し訳ありません、もう食材は・・・。」
そう言う俺を指差してきた。
え?
「ほら、ここに。」
食材、俺?
俺は冗談だと思って、自分の顔を指差して笑った。
「お客様、ご冗談を・・・w」
すると、女はコートの前をはだけて、大きな牛刀を取り出した。
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「ひっ!」
俺はびっくりして、腰を抜かしてしまった。
「さあ、最悪をはじめましょうよ。」
女はニヤリと笑った。
「・・・・よ、よもっ!」
作者よもつひらさか
〜ロビンM太郎comに捧ぐ〜
11月アワード受賞、おめでとうございます(早いのですが)
※12月1日記載