短編2
  • 表示切替
  • 使い方

自由

僕は今、排水講に身を潜めている。

僕の体はまだ小さく、こんなところに身を潜めることができるのだ。

中学生のサクラダ君は体が大きくなりすぎていたため、すぐに見つかって

間引かれてしまった。

僕らのような、能力の劣る者はこの施設では用済みとなり、間引かれるのだ。

彼らにとって、能力の低いものは雑草だ。

能力が低いからと言って、決して放免してくれるわけではないのだ。

ここで行われていることが決して外部に漏れてはいけないから、間引く。

僕らは雑草だから、根絶やしにされる。

根絶やしにしないと死なないからだ。

髪の毛一本足りともこの世には残らない。

最強の雑草を育てている。それがこの施設だ。

僕らは不死身の能力を持つ者。

不死の研究をしているこの施設にとって、一度でも脱走を試みた者は

不穏分子として処分されるのだ。

僕は耐えられなかった。

不死身の体とは言え、訪れるはずの無い死に恐怖したのだ。

この研究所では、恐怖の感情のコントロールの研究も行われている。

何度も何度も殺される。これでは無間地獄ではないか。

完全に恐怖の感情が消えない者は、失敗作として処分される。

僕は失敗作として、処分が決まった今夜、施設から抜け出そうとしている。

もう少しだ。もう少しで僕は自由になれる。

暗い排水溝を、音を立てないように腹ばいになって這いずり回った。

すごい臭いに吐き気を催しながらも、僕は進んだ。

暗い排水溝に光が差し込んできた。

出口だ。

やった!僕は自由を手に入れた。

間引かれるのを免れたのだ。

そして、僕は今、こうして誰も居なくなった星に永遠に住み続けている。

これが僕が手に入れた自由だ。

Concrete
コメント怖い
3
10
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

例え自分が死んでも地球の最後は見たいですよね

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信